よほどポルシェの930ターボSで感じた「前が浮く」感じの方が怖かったし、F50、エンツォ、そして最新のラ・フェラーリに至るスペチアーレの系譜の中でも、このF40が最も一体感があり、クルマがコンパクトに感じられるという。

「要因はなんだろう……ソリッド感とか車重。足回りで言えば、オリジナルではF50がベスト。ゼロロールでカートみたいなフィールで、一番気持ちいい。速さで言えばラ・フェラーリなんか桁違いに速く、乗りやすい。だけど、F40は手の内に置いている感というか、電子デバイスがないからなのか、クルマがひと回り小さく感じるんです。F50は、もう少しだけ大きく感じてしまう」

 入手してから12年で走った走行距離は約8000km。そのうちの5000kmを最初の2年で走破。以降は自分好みに仕上げるべく手を入れてきた。例えば足回りに関しては“しなやか”で動く足回りが好みだったため、当時の主流であるクワンタムやアラゴスタなどを筆頭としたスパルタンな味付けが主流とは逆のモディファイをした。

「オーリンズのスペシャル部門“ウプランズ”で、そうした仕様をリクエストしました。それが7〜8年前ぐらい。フェラーリもその後、全モデルがそういった方向の味付けになっていったので、自分の判断は間違った方にいってなかったな……と」

 F40にまつわる歴史や背景は「全然知らないし、興味がなかった」とキッパリ話すA氏は、数年前に市場価格が跳ね上がり、相場がバブル的様相を呈した際にも、手放そうという思いは微塵も芽生えなかった。そして今でも「最後に1台何を残すか、と言われたら間違いなくF40。2台しか持てない、と言われたらF40と国産車です(笑)」と言い切るほど、愛着を持って接している。

「フロントなんかは飛び石だらけです。それに、キレイにすると乗らなくなっちゃうんですよ。それだけ走った証拠ですし、今は当時と100パーセント同じ運転はできないですから、運転した証なので……と、勝手に思ってます」

 道具として使い込んで、どれだけ“踏んできたか”を物語るその姿は、F40に真の意味での凄みを与えている。

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