踏み間違い事故のニュースを見ていて、特定車種が多いことが話題となっていますが、地方にあふれている軽トラックでの事故は、あまりみたことはありません。軽トラックの多くはMT車です。MTだとクルマが今どのような状態にあるか体感で理解できます。発進時に操作を誤ればエンストしてくれます。無意識に自分の手足の延長線で機械が動いてくれる安心感があります。
話題の特定車種の場合その対極です。シフト操作が機械操作というよりスイッチなので、慣れるまでインジケーターで確認しないと自分がDに入れたかRに入れたか自信が持てません。それに加えてブレーキ踏力も軽く設定されているので、自分がアクセルを踏んでいるのか、ブレーキを踏んでいるのかにも自信が持てません。モーター駆動時には音にも頼れません。心理的な緊張を乗り始めに強いられます。
やってしまった者の経験からすると、操作に自信が持てないベースの構造をそのままにして、さらに電子的な安全装置をつけた場合、安全は確保できたしても、運転している時の安心“感”は得られないのではないか思います。多くのユーザーが持つ、電気仕掛けでなく機械の安心感に戻りたいという深層心理から新型ジムニーが人気なのでないか、という仮説は乱暴過ぎでしょうか。少なくとも自分の場合には、そういう気持ちもあってジムニーに憧れております。
これから先、クルマの電動化が不可避だとすると、なおさら操作系や操作方法の問題は、電気的な解決策だけでなく、機械的構造や人間の認知や身体の構造まで含めて検討していただきたいと思った次第です。話はそれますが、このことはクルマの運転を楽しく感じるかどうかにも大きく関係しそうです。常に緊張してクルマのご機嫌を伺いながら走らなければいけないのだとしたら、その作業は苦痛でしかありません。クルマを運転したくなくなるでしょうし、クルマ自体の魅力も失われるように思います。
身体が喜ぶ道具として正しいクルマがどうあるべきかについては、新型ジムニー発売前の2017年4月に発売した書籍「営業バンが高速道路をぶっ飛ばせる理由2」(小社刊)に詳しく書かれておりますので、興味のある方はぜひご購読ください。新型ジムニー発売前とあえて書くのは、ブーム到来前に道具の好例としてジムニーの構造的利点を説明しているからです。著者の國政久郎氏の慧眼、恐るべし……です。話を強引に本の宣伝に導き申し訳ございません。