レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

国内レース他 ニュース [PR]

投稿日: 2023.08.22 07:49

PCCJデビューレースで優勝を果たしたポルシェジャパンジュニアドライバーの佐藤巧望に要注目

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


国内レース他 | PCCJデビューレースで優勝を果たしたポルシェジャパンジュニアドライバーの佐藤巧望に要注目

 2001年からスタートし、今年で開催23年目を迎えた『ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)』は、日本でもっとも長きに渡り継続開催されているワンメイクレースだ。そのPCCJを運営するポルシェジャパンとポルシェカレラカップジャパン委員会は、2009年から毎年、若手ドライバー育成プログラムとしてポルシェジャパンジュニアドライバーを起用している。

 ポルシェジャパンジュニアドライバー出身の代表格としては、2012年にPCCJシリーズチャンピオンを獲得した平川亮、2019年にPCCJシリーズチャンピオンを獲得した笹原右京がいる。

 平川は、2017年にSUPER GTのGT500クラスでチャンピオンを獲得し、2022年にはル・マン24時間で優勝を飾りWEC(世界耐久選手権)チャンピオンに輝き、今年はWECとスーパーフォーミュラに参戦と世界を舞台に活躍している。

 一方の笹原は、現在スーパーフォーミュラとSUPER GTのGT500クラスに参戦しており、スーパーフォーミュラでは2022年に2勝を挙げるなど活躍している。また、PCCJでチャンピオンを獲得できなかったが、その後にステップアップを果たして活躍中のポルシェジャパンジュニアドライバーは数多くいる。

 現在SUPER GTのGT300クラスで活躍中の上村優太(2017年、2018年のポルシェジャパンジュニアドライバー)、片山義章(2018年のポルシェジャパンジュニアドライバー)、大草りき(2021年のポルシェジャパンジュニアドライバー)などが、その代表といえる。

 このようにトップカテゴリーで活躍を見せているポルシェジャパンジュニアドライバー出身の先輩たちに続けと、2023年のPCCJにポルシェジャパンジュニアドライバーとして参戦中なのが佐藤巧望だ。

 小学4年生でレーシングカートデビューを果たした佐藤は、大学進学と同時に本格的にフォ-ミュラカーレースへとステップアップ。2022年にはFIA F4にスポット参戦し、初レースで3位表彰台を獲得するなど注目を集めている。

 佐藤はこれまでフォーミュラの経験しかなく、PCCJが初のGTカーでのレースとなるが、参戦に当たって「僕にとっては未知の挑戦ですが、限られた時間の中で多くのことを吸収し、チャンピオンを獲得出来るように頑張ります」と、シーズン開幕前に意気込みを語っている。

 そして迎えた今シーズンの開幕戦は、佐藤にとって初めて走る岡山国際サーキットが舞台で、雨に見舞われる難しいコンディションの下レースは開催された。ポールポジションは、PCCJで3回シリーズチャンピオンを獲得している小河諒。

 その小河に勝負を挑んだ佐藤は、マシンセッティングで苦労していた小河をレース中盤にオーバーテイクし、見事にデビューレースで優勝を飾る。ポルシェジャパンジュニアドライバーが、PCCJデビューレースで優勝を飾るのは2018年の片山義章以来で、実に5年ぶりのことであった。

今年のポルシェジャパンジュニアドライバーである佐藤巧望は開幕戦でデビューウインを果たした
今年のポルシェジャパンジュニアドライバーである佐藤巧望は開幕戦でデビューウインを果たした

 このまま勢いに乗りたかった佐藤だが、現実は甘くなく第2戦で本調子を取り戻した小河は9秒534差で優勝と実力の差を見せつける。第3-4戦の富士、第5-6戦の鈴鹿でも、佐藤は小河に勝負を挑むも実力差の壁を打ち破れないでいた。

 これについて、PCCJドライビングアドバイザーの影山正美も「第2戦目以降、ベテランと新人の本当の実力差が出ています。佐藤選手も、これまでのジュニアドライバー同様にハコならではの操る難しさを理解し、苦しんでいる時期に入っています」と分析していた。

 そこで、佐藤本人にデビューレースから第6戦までを振り返ってもらうと、まさに影山が語ったような状況に陥っていた。

「PCCJは、毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられているシリーズですし、カップカーもすぐに乗りこなせることができる程、甘くはないだろうと思っていました。実際ドライブしてみると、本当に奥が深くて針に糸を通すような感じで、些細な動きをしっかりと感じ取る必要があり、ハンドリング、ブレーキングなど、すべてが難しいですね」

「でも、影山さんからのアドバイスもあり、これまでのレース経験では考えることがなかった走り方の理論を学べているので、自分の引き出しが確実に増えていることを実感しています」

「開幕戦で勝てた時は、正直こんな感じなのかなと思いましたが、第2戦でコテンパンにやられてしまい、やはり甘くないシリーズだと考え直しました。でも、そこから小河選手には連勝を許してしまっているので、なんとか残りのレースで一矢報いたいと思っています」

今シーズンのPCCJはプロクラスの小河亮と佐藤が毎戦トップ争いを展開している
今シーズンのPCCJはプロクラスの小河亮と佐藤が毎戦トップ争いを展開している

 第2戦以降、厳しい戦いが続いていた佐藤だが、第5-6戦の富士大会から第7-8戦の鈴鹿大会まで約2カ月あったインターバルの間に、態勢を立て直す取り組みを行っていたという。

「第6戦のレースで自分なりに掴んだものがあったので、8月のレースまでのインターバルに今の自分には何が足りていないのかということを考えました。それで小河選手に勝つためには、練習走行だけでなく、イメージトレーニング、シュミレータ、体力トレーニング、レースに対する姿勢とすべてを見直して、自分に足りていないところを補填して、今回の第7-8戦の富士大会に挑みました」

 このように語る佐藤は、第7-8戦の富士大会(8月5〜6日)前日に開催された専有走行で、小河を0.042秒上回るタイムを記録してトップに立つ。5日の予選では、残念ながら0.173秒差で小河にポールポジションを奪われてしまうが、セクター1と3ではトップタイムを記録していた。

 そして第7戦決勝は、スタート直後から佐藤が小河の背後にピタリと着けてプレッシャーを掛け、レース終盤となる11周目の最終コーナーで2台は並びホームストレートを駆け抜けていく。

 ここは小河が佐藤を抑え込んでトップをキープするが、翌12周目も同様の展開になると佐藤は1コーナーの突っ込みで踏ん張りを見せて小河をオーバーテイクする。しかし、トップに立った佐藤はダンロップコーナーでブレーキングミスを犯してしまい、再び小河にトップを奪われてしまう。佐藤はラストラップの15周目まで、果敢に小河を攻めるが逆転はならず0.379秒差で2位に終わる。

第7戦で佐藤は小河に何度も勝負を挑むがあと一歩及ばず。だが、ふたりの差は確実に前戦よりも縮まっていた
第7戦で佐藤は小河に何度も勝負を挑むがあと一歩及ばず。だが、ふたりの差は確実に前戦よりも縮まっていた

 レース後、佐藤は「自分のミスで今日は優勝のチャンスを逃してしまいましたが、小河選手を捉えられるところまで来られたと自分では思っています」と語っている。続く第8戦もスタート直後から佐藤は、積極的な攻めの走りを見せて小河に仕掛けていくが、レース中盤から雨が降り出して難しい路面状況になると経験値の違いが出てしまい、最終的に小河に引き離されて2位でゴール。しかし、今回の富士で佐藤は確実に成長した姿を見せてくれた。

 この結果に対してPCCJドライビングアドバイザーの影山は、「クルマの特性を覚えつつ、セッティングをどうしなければいけないのかということも学べてきたと思います。今回の富士予選では、セクターベストが全部繋がればポールポジションが獲れていたのに獲れなかった。そして第7戦決勝も、小河選手より速いペースでアタックできていたのでマシンはいい状態に仕上がっているのに結果に繋がらなかった」

「確かに今回のレースで成長は感じましたが、ベテランの走らせ方を攻略しきれていない点が今後の課題でしょうね。僕は、できるはずなのに肝心なところでできていない、力を発揮できていないことを厳しく指導しているので、今回のレースはもっとできたはずだと思っています」と語る。

 影山も佐藤の着実な成長は認めつつも、できるはずのことが肝心なところでできていないことに厳しいアドバイスをしている。

富士大会の第7戦で先輩でありライバルの小河からゴール後に声を掛けられる佐藤
富士大会の第7戦で先輩でありライバルの小河からゴール後に声を掛けられる佐藤

 今シーズンのPCCJは残り3戦となるが、第9〜10戦は8月26〜27日、最終大会となる第11戦はF1日本GPのサポートレースとして9月22〜24日に、すべて鈴鹿サーキットで開催が予定されている。

 鈴鹿は佐藤がもっとも走行経験があるコースのため、「もう一度、自分を見つめ直すとともに、今回の富士のデータを分析して、鈴鹿での3レースに挑みたいたいと思います。ポイントやチャンピオン争いよりも、まずは小河選手に勝つことを最優先にして戦います」と意気込みを語る。

 鈴鹿サーキットはコース幅が狭いこともあり、決勝レースでオーバーテイクするのはかなり難しいといえる。そのため、予選がレース結果に直結してくるので、タイムアタック合戦でライバルの小河をまずは上回ることができるのかに注目したい。

PCCJの今シーズン残り3戦は佐藤がもっとも走行経験のある鈴鹿のため気合いが入る
PCCJの今シーズン残り3戦は佐藤がもっとも走行経験のある鈴鹿のため気合いが入る


関連のニュース