2020年で創設2年目に突入するTCRオーストラリア・シリーズと、その運営団体であるARG(Australian Racing Group)は、シリーズ単独開催となる新たなeスポーツ選手権『TCR Australia SimRacing Series』を実施。その開幕戦となるメルボルン、アルバートパークでの1戦はバーチャルのプジョー308TCR、ルノー・メガーヌR.S.TCRのフレンチマシン2車種が勝利を飾っている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、仮想空間での可能性を模索してきたモータースポーツ界だが、F1開幕戦オーストラリアGPとの併催で実施される予定だった現実の開幕戦が急遽キャンセルとなった経験を持つARGはいち早く方向転換を決め、この4月から『ARG eSports Cup』と称したeスポーツ・シリーズを開催してきた。
同バーチャル選手権では、ARGがオーストラリア国内で統括する人気シリーズが一同に介し、TCRオースラリアに加えて“豪州史上最速”を謳うシングルシーター選手権のS5000やV8ツーリング、トランザムなどに参戦するドライバーを対象としていた。しかし、採用するゲーミングプラットフォームの影響でTCR車両はアウディRS3 LMSのワンメイクとなり、苦肉の策として開催ラウンドによってダラーラ製F3を使用するなど、仮想空間らしい対策で乗り切ってきた。
そこで、シリーズはTCR規定を統括するWSCグループと協力し、リージョン選手権最高峰となるTCRヨーロッパ・シリーズでも使用する世界的人気シミュレーターの『Assetto Corsa(アセットコルサ)』をプラットフォームに採用。あらゆるTCR規定ツーリングカーを再現した全7戦のバーチャル・シリーズを立ち上げることとなった。
全13台のエントリーが集ったその開幕戦は、本来ノンチャンピオンシップ戦としてTCRアジア・パシフィック・カップの開幕戦にも指定されていたアルバートパークが舞台となったが、最初の予選でポールポジションを射止めたのは父ジェイソンに変わって急遽代役参戦となったベン・バルグワナ(プジョー308TCR/Burson Auto Parts Racing)。
長年VASCで活躍し2000年にはバサースト1000も制した父に代わって、今季現実のシリーズにも参戦予定のプジョーを操ると、フロントロウにつけていた強豪Garry Rogers Motorsportのディラン・オキーフ(ルノー・メガーヌR.S.TCR)や、ジョン・マーティン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)らレギュラー勢を従えてライト・トゥ・フラッグでの勝利を獲得。栄えある『TCR Australia SimRacing Series』初代ウイナーの称号を手にした。