NTTインディカー・シリーズ第11戦ナッシュビルの決勝レースが8日に行われ、イエローコーション多発のレースをマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)が制した。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、今季ワーストの24番グリッドから追い上げを見せるも、マルチクラッシュに巻き込まれリタイアとなった。
新しいストリートレース、ビッグ・マシン・ミュージックシティGPがテネシー州々都のナッシュビルのダウンタウンで初めて開催された。
アメリカではCOVID-19の第4波が猛威を振るい始めているが、南部の大都市での新しいビッグイベントには大勢の観客が押し寄せ、活気が満ち溢れる中でインディカーレースは行われた。マスク着用は推奨されているものの、屋外イベントなこともあり、サーキットを訪れたファンのほとんどはノーマスクだった。
NFLのテネシー・タイタンズが本拠地とするニッサンスタジアム周辺の道路と、ダウンタウンを流れる大きな川を渡る大きな橋がレイアウトとされたコースの全長は2.17マイル。
直角コーナーが多く、コーナリングスピードは全体的に低いのだが、橋の上でインディカーは時速185mphに達する。ストリートコースはバンピーなものだが、ナシュビルの場合は大きな橋の継ぎ目部分が“暴力的にバンピー”で、マシンのフロアやサスペンション、ギヤボックスのケーシングなどにダメージが及ぶ可能性が心配された。
初走行を終えた金曜日の夜、インディカーは少しでも路面がスムーズになるよう、ブリッジの両端でコースの表面を削る作業が行われた。それでも、コース幅がタイトなことも手伝い、レースではアクシデントが多発し、出されたフルコース・コーションは13回。
残り5周で出された最後のイエローは、レースをグリーン下で終わらせるために赤旗とされ、タイヤバリアをセットし直した後にレースが再開された。
ナッシュビルでの8月開催となれば、強い日差しが照り付ける上に湿度も高く、非常に厳しい酷暑の下でのレースになることが誰の目にも明らかだった。しかし、幸いにもレースの直前になって太陽は雲に覆われ、比較的過ごし易いコンディション下でバトルは繰り広げられた。
予選でポールポジションを獲得したのはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)。プラクティス1、プラクティス2ともに最速だったハータは、予選のQ1をブラックタイヤのみ使用でクリア。Q2、Q3にレッドの新品を1セットずつ投入し、予選2番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)にコンマ5秒以上の差をつけてみせた。
レースでもハータの速さは突出していた。しかし、ピットタイミングによってトップの座を明け渡すシーンも見られた。
57周目のリスタートを6番手で迎えたハータは、フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)を次々とパス。
62周目にはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)もオーバーテイクし、トップを走行するマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の背後へと迫った。
エリクソンは序盤5周目のリスタート時にセバスチャン・ブルデー(AJフォイト・エンタープライゼス)のリヤに突っ込み、タイヤに乗り上げたために大きくジャンプ。ブルデーを飛び越えてノーズから地面に着地した。
リヤウィングなどに大きなダメージを受けてブルデーはリタイア。しかし、エリクソンはピットでノーズやタイヤを交換するとレースに復帰した。アクシデントを起こしたために科せられたペナルティによって彼は最後尾まで下がったが、多くこなしたピットストップのたびに燃料を補給するなどの作戦を駆使、徐々にポジションを上げていった。