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海外レース他 ニュース

投稿日: 2021.10.01 17:14
更新日: 2021.10.01 17:15

「SFで戦ったことにはとても大きな意味があった」インディカー王者に輝いたパロウの勝因と強み

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海外レース他 | 「SFで戦ったことにはとても大きな意味があった」インディカー王者に輝いたパロウの勝因と強み

 2021年のインディカーは最終戦ロングビーチを迎え、タイトル獲得の現実的な可能性はふたりだけに残されていた。ポイントランキング首位のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング=CGR)と、35点差で同2位パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)。決勝レース前の段階での条件は、オワードの結果にかかわらず、パロウが決勝レースにおいて12位以上でフィニッシュすればタイトル獲得というもの。パロウが明らかに優位な状況となっていた。

 オワードは8番グリッドからのスタート。パロウは10番グリッドから。オワードは優勝がマストというなかでレースがスタート。オワードはオープニングラップのターン1でジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)をパスして7番手に上がり、すぐ前のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)を射程圏内で追っていた。

 ところが、1周目を終えるヘアピンで、オワードのふたつ後ろを走っていたエド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサーサリヴァン)がヒンチクリフのインへと強引にダイブし、コーナーを立ち上がろうとしていたオワードに追突。これでオワードはスピンして最後尾近くまで落ちてしまう。この後、さらにドライブシャフト破損のトラブルに見舞われ、リタイア。逆転のシナリオは完成しなかった。

「ロングビーチでは自分たちの望んでいた結果にはならなかった。しかし、我々は素晴らしいシーズンを送ることができた。チームにとって念願だった初勝利を挙げ、さらに1勝を積み重ねた。ポールポジションも複数回獲得した。チーム全体がそれらを誇りと感じていいと思う。来年の我々はとてもレベルの高い位置からスタートを切ることができる。再びタイトルを争うための準備を整えていく」とレースとシーズンを締め括った。

 アロウ・マクラーレンSPは若いふたりを起用。2シーズン目にしてタイトル争いへと食い込み、その進歩の大きさとスピードには目を見張るものがあった。シボレー勢のランキングトップの座はニューガーデンとチーム・ペンスキーに持っていかれたが、4台体制のペンスキーを上回るパフォーマンスを見せ続け、タイトルにより近いところにいたことは間違いない。

パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)
パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)

 オワードのリタイア以降、パロウの相手はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)となった。ニューガーデンはパロウから48点ビハインドで最終戦を迎え、わずかに可能性を残していた。それはほとんど実現不可能と言っていい条件だったが、そのひとつであるポールポジション獲得を果たす。

 最多リードラップを記録しての優勝&パロウが25位以下でゴールという可能性に向けて、レースをスタートからリードしていた。だが、パロウのレースには危なげがなく、突然のメカニカルトラブルにでも見舞われない限り、そこまで順位を落とすことは考えにくかった。優勝したコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)の圧倒的なパフォーマンスの前にその可能性は掻き消され、レース中にパロウのチャンピオンが決まった。

 パロウがインディカー2年目にしてタイトルを獲得できた理由のひとつに、とにかく精神面がタフであることが挙げられる。チャンピオンの懸かったレースでは重圧も大きなものが圧し掛かっているはずだが、冷静さを失う場面はロングビーチでいっさい見られなかった。

「僕らはたいてい、スタートよりも順位を上げてゴールしているから、レースでもそうできると思う」と予選後にサラッと話していたとおりに4位でゴール。また、そのポジティブさにも強みがある。インディカーのレース、そしてアメリカが好きでたまらない彼は、そこで活躍できる環境を手にできていることを喜び、深く感謝している。優勝する、チャンピオンになるという目標のために全力を注ぎ込む生活、時間を体全体で楽しんでもいる。夢の実現を信じ、物事が良い方向に進むことだけを考えているようだ。

 ドライビング面では、日本の全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)で戦った経験を挙げていた。

「SFで戦ったことにはとても大きな意味があった。インディカーを除けば、シングルシーターでレース中に給油があるのは世界でもSFくらい。あのシリーズでは燃費が非常に重要なんだ。それがインディカーでの自分のパフォーマンスに役立っている。競争の激しい選手権で、マシンはインディカーにとても似ているんだ」

 チップ・ガナッシは、加入初年度にチャンピオンとなったパロウがスコット・ディクソンの若いころに似ていると感じている。ダリオ・フランキッティがディクソンのチームメイトだったときのように、CGRがシリーズを支配する時代が再び来るのかもしれない。

※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1561(2021年10月1日発売号)からの転載です。

アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)
アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)
2021年のインディカーを制したチップ・ガナッシ・レーシング
2021年のインディカーを制したチップ・ガナッシ・レーシング
2019年スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿
2019年スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿のアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
auto sport No.1561の詳細はこちら
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