レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

海外レース他 ニュース

投稿日: 2023.04.03 14:03
更新日: 2023.04.04 08:24

チップ・ガナッシ移籍後初レースは厳しい結果となった佐藤琢磨「レース終盤にうまくハマるようなセッティングにしていたけど……」

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


海外レース他 | チップ・ガナッシ移籍後初レースは厳しい結果となった佐藤琢磨「レース終盤にうまくハマるようなセッティングにしていたけど……」

 2023年のNTTインディカー・シリーズ第2戦テキサスのレースは、日米の間でより注目の集まるレースだった。

 ワールドベースボールクラシック(WBC)の余韻も覚めやらぬ中で、佐藤琢磨がチップガナッシ・レーシングに移籍した初戦を迎えたのである。アメリカのメディアも、2度のインディ500チャンピオン琢磨のチップ・ガナッシ移籍を蔑ろにはできない。

 もちろん17戦フル出場でないのはファンにとってはやや寂しいが、名門チップ・ガナッシ・レーシングに移籍が叶い、そこからインディ500に臨めるという絶好の機会を得たシーズンなのだ。その初戦に注目が集まらない訳がない。

 琢磨もその期待を一身に浴びて、それをカラーリングで表現したかのように、日本特殊陶業の英名新ブランド、Niterraを纏いこのレースにのぞんだ。マシンにも、レーシングスーツにもNiterraのロゴが並び、日本からの期待を表している。

 事前にシミュレーターにも乗って臨んだ琢磨だったが「不安がないわけでもない」と言っていた。

「事前のチップ・ガナッシのショップに行って、シート合わせもミーティングもして来ましたが、オフにテストもしてないし、いきなりレースウイークでクルマに乗って220マイル(350Km以上)でしょ?(笑)。こんなのレース人生で初めてですよ」と言っているが、表情には不安どころか期待が一杯なのがわかる。
 

笑顔でシート合わせをする琢磨
笑顔でシート合わせをする琢磨

 
 インディカー・シーズン14年目のベテラン琢磨が、チップ・ガナッシのマシンに乗ってどのようなパフォーマンスを見せるのか、注目のテキサス初日だった。

 初日は60分のプラクティスの後に、予選を迎え、その後にバンクのハイライン対策とされる2つにグループ分けしたプラクティスが15分ずつあり、決勝に向けた最後のプラクティスが60分あった。

 最初のプラクティスで琢磨は無難に8番手で終えたが、「もう、いきなりのGフォースで気を失いそうになった」と笑った。

 時速220マイルのスピードで横のGだけでなく、バンクで大きく下に押し付けられる。今年初ドライブにしてはなかなかの洗礼だ。

 それでもチップ・ガナッシ4台の中では最速のタイムだった。スコット・ディクソンは10番手、アレックス・パロウは13番手、マーカス・エリクソンは19番手という順位。

 予選はカーナンバー11のチャンピオンシップポイントとなるために、琢磨は17番目のアテンプトに。2019年にはここでポールポジションも取っただけに期待も高まった。

 やや落ち着いた時速210マイル台のペースでウォームアップを終えると、1ラップ目を23.6004秒、2ラップ目を23.6324秒で走り、その時点で3番手のタイムをマークした。

「走り始めてすぐにアンダーだって解り、ツールを使って急いで修正しました。ちょっと残念だけど、僕の予選の様子を見て、ディクソンもパロウも、修正して良いアタックができたみたいですから、それは良かったですね」という琢磨。

 予選を終えてからミーティングをすると、予選をうまく終えられなかったマーカス・エリクソンは、ライン取りの教えを乞うてきたと言う。

 昨年デイル・コインのマシンで予選3番手のグリッドに着いていたことを思えば、6番手という順位はなんの驚きもないが、チップ・ガナッシのチームの中では、琢磨加入による化学反応は起きていたようだ。

 予選の後のプラクティスではレース仕様にマシンを変えていたが、琢磨はいくつか変更をすると総合3番手のタイムをマークしていた。トゥの影響はあるものの、マシンの仕上がりは良さそうだった。

 決勝レースはサンダーストームが来ると予想されて、スタートが20分早まってグリーンフラッグが振られた。
 

レース序盤からウィル・パワーと争う佐藤琢磨
レース序盤からウィル・パワーと争う佐藤琢磨

 
 琢磨は「ややコンサバティブなセッティングだったかもしれない」と言い、序盤はあまりペースが上がらず順位を落とした。

「レース終盤にうまくハマるようなセッティングにしていたので、序盤は少し厳しいのはわかっていた」と言い、一時は13番手まで落とした順位も慌てることなくポジションをキープ。そして30周を過ぎる頃からペースを取り戻して前のマシンを追い始めていた。
 

30周を過ぎるとペースが戻り前のマシンに追いついていたが……
30周を過ぎるとペースが戻り前のマシンに追いついていたが……

 
 47周目、琢磨は前の周から追い付き始めていたペンスキーのウィル・パワー背後にターン1の進入で迫り、パワーのやや外側からアプローチ。

 そのパワーのイン側にアンドレッティ・スタインブレナーのデブリン・フランチェスコがダイブしたために、パワーは避けるようにアウトに膨らみ、それを交わすように外に出た琢磨は、汚れた路面に足を取られて外側のウォールにヒット! マシンはイン側まで弾かれ、レースはそこで終わった。

「ウィルのペースがすごく遅いのすぐにわかったんですけど、いきなりアウトから被せていくのも危ないと思って、外側で回ってストレートでかわそうと思っていたら、ウィルのイン側にデフランチェスコが飛び込んで来て、それを避けようとしたウィルが膨らんで、僕もつられるような形でアウトに出たら、マーブルにマシンを取られてしまいました‥‥」と表情も暗い。
 

リタイア後、ピットボックスでレースを見守る琢磨
リタイア後、ピットボックスでレースを見守る琢磨

 
 ペンスキーのニューガーデンや、マクラーレンのパト・オワードらがこのレースの主導権を握っていたが、レース終盤にアレックス・パロウがトップ争いをしていたことを思えば、琢磨にも十分に可能性はあったろう。

「もう残念で仕方がありません。チップ・ガナッシで最初のレースでしたが、チームは快く迎えてくれたし、エンジニアリングも、クルーも素晴らしい仕事をしてくれました。今日のレースは最後まで走ってチェッカーを受けたかったですが、なんとかこれを乗り越えて、インディ500に向けてしっかり取り組みたいです」と言う琢磨。

 この後4月20~21日にはインディアナポリス・モータースピードウェイでテストも予定されている。そこでどこまで軌道修正し5月を迎えることができるだろうか。 


関連のニュース