シリーズ恒例となりつつあるダートオーバルでの1戦、2023年NASCARカップシリーズ第8戦『フードシティ・ダート・レース』が4月8~9日にブリストル・モータースピードウェイの特設サーフェースで開催され、グラベル競技愛好家としても知られるクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、アンダーイエローでのフィニッシュにも助けられ、同陣営のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)を退け待望の今季初優勝を飾った。
一方、ポールシッターだった前戦勝者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、今季カップ復帰のライアン・プリース(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)との攻防で激しい感情に飲み込まれ、激昂から自滅という最悪のパターンを辿る結末となった。
新たな車両規定“Next-Gen”も2年目を迎えた今季は、開幕からペナルティ裁定と上訴の繰り返しという負のループに見舞われており、前戦リッチモンド後にはその“最大の標的”となっているヘンドリック・モータースポーツ(HMS)がふたたび矢面に立つことに。
第7戦終了後、さらなる検査と分解のためピックアップされたウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)とアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)の24号車と48号車は「全体の組み立て車両規則および技術変更ログの違反」を取られ、それぞれ60ポイントと5点のプレーオフポイントが剥奪、各クルーチーフに7万5000ドル(約994万円)の罰金と追加で2戦の出場停止(現在も4戦分の実行期間中)が課された。
そんな嫌な空気と沈滞したムードを振り払うかのように、ダートオーバル特有のヒートレースで気を吐いたのが2021年カップ王者のラーソンで、決勝のスターティングラインアップで優位に立つべくポイントを積算。ファイナルラップで6番手から首位浮上を果たし、見事に今季2回目、キャリア通算16回目のポールポジションを射止めた。
フロントロウにオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)を従えスタートを切ったラーソンは、75周のステージ1を制したものの、この際にプリースを壁に押しやる動きを見せたことで相手の不興を買うことに。
レディックとディロンに続いてステージ2を3番手で終えていたラーソンは、最終ステージで逆転勝利を狙う位置につけていたが、運命の175周目に“報復行動”を受け、一瞬にして我を忘れる事態を迎える。
「彼(プリース)は僕が以前したと感じたことに対して、返済したかったんだと思う」と振り返ったラーソン。
ターン4の外側でプリースのマスタングに“幅寄せ”を受けた5号車は、行き場を失いウォールと接触。すぐさまボトムに下がったスチュワート・ハース・レーシングの41号車を追いかけるかのようにインサイドへ向かい、そのまま接触スピンでレースを終えた。
「彼は僕をフェンスにぶつけてしまい、サスペンションの損傷を負って彼に衝突してしまった」と続けたラーソン。「残念だけど、その手前でスピンアウトしてその場所に戻った自分に腹を立てるべきだ。ただただ苛立たしい」