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スーパーGTニュース

投稿日: 2010.03.08 00:00
更新日: 2018.02.15 18:33

《インタビュー》ロイック・デュバル「ル・マンで“日本のレベル”を見せたい」


 今季、ル・マン24時間とLMS開幕戦ポール・リカールでオレカからプジョー908 HDI FAPをドライブすることになったロイック・デュバルは、LMS公式テストへの参加を前にル・マンへの思い、最新のディーゼルプロトタイプをドライブする意気込みを語った。デュバルは「今年のル・マンに出て、いい成績を残せたら、日本で走っているドライバーとして誇りに思える」と語る。

Q:オレカとの契約は、いつどのような形で決まりましたか?
ロイック・デュバル(以下LD):鈴鹿でGTのテストがあった後、1月の終わりにフランスに戻った時に、オレカのヒュー-ド・ショーナックから電話をもらったんだ。去年、アジアン・ル・マンに出た後も彼とは時々連絡を取っていたんだけど。電話で彼から“会いに来てくれないか?"と言われたので、彼らのファクトリーに出かけた。その時に、彼から『今年ウチのチームでル・マンに出てもらえるか?』って言われたんだ。彼らが僕をドライバーのひとりとして決定しつつあることは知っていたけど、実際にそう言われた時はハッピーだったね。しかも、彼は僕に素晴らしいサプライズを用意してくれていた。『キミにはオレカではなく、プジョーに乗ってもらうよ』って。彼はその時まで僕に一言もそんなことを言っていなかったから、本当にビックリしたよ。でも、いいニュースだった。それが2月初めのことだったんだ。

Q:今回は、初めてディーゼルエンジンのクルマに乗ることになりますが、過去一緒に走るディーゼルカーを見ていて、どういう印象を持っていますか?
LD:ものすごく速い。2年前、ル・マンで見たディーゼルのクルマには感動したよ。特にストレートではバカッ速くて、僕らは何の抵抗もすることができないからね。あと、外から見ていて、特に他のクルマと違う所はエンジンの音。音が聞こえないんだ。でも、ブノワ(トレルイエ)や他のドライバーにも聞いたけど、クルマを乗りこなすことに関してはそれほど難しくないと思う。プジョーの場合にはクローズドカーだから、少し狭さを感じるかも知れないけど、エンジンとかクルマ自体にはすぐに合わせることができるんじゃないかと思う。

Q:前から、ディーゼルのクルマに乗ってみたいと思っていた?
LD:今年、ル・マンにプジョーで出るっていう話を聞いた後は、正直言ってそのことばかり考えていたよ。早く試したいなって。外から見ても、あのクルマはとても印象的だし、すごく速いし、ドライブするのを待ちきれないよ! 今まで僕はああいうタイプのクルマを運転したことがないからとても特別だし、今年のル・マンにディーゼルカーで出るっていうのは、僕にとって全く新しい経験。だから、とても興奮しているよ。

●テストを許可してくれたダンディライアン、ホンダに感謝

Q:最初のテストはいつ?
LD:日曜日。だから、僕は土曜日に日本を経って、日曜の早朝にフランスに着いてポール・リカールに行き、そのまま深夜12時までテストがあるんだ。だから残念だけど、今回フォーミュラ・ニッポンのテストに参加できない。でも、僕は幸運だよ。チームもホンダも今回のことが僕にとっていかに重要な機会かということを理解してくれたし、素晴らしいと思う。僕にとって一番大切なキャリアは日本でのレースだけど、オレカやプジョーにとっては、僕がこのテストに参加することが大切。彼らは僕にポール・リカールのテストに出てくれって依頼してきた。だから、僕はダンディライアンやホンダとそのことを話し合わなければならなかったし、最初のフォーミュラ・ニッポンテストを欠席してもいいかどうか確かめなければならなかった。そしたら、彼らは僕に対して、『頑張っておいで』って快く送り出してくれた。だから、チームにもホンダにも心から感謝している。彼らは僕に、『キミはここで仕事をしなくちゃいけないから、NOだ』っていうこともできたはずだ。だけど、今回のことが僕にとって大切だってことを分かってくれた。でも、僕にとってオレカやプジョーが最優先ということではまったくないよ。僕にとっては、日本でのスーパーGTとフォーミュラ・ニッポンが最優先だ。ただ、ル・マンは特にフランス人ドライバーにとって、年に1度の特別なレース。しかも、今回は勝てる可能性のあるクルマに乗れるっていうチャンスなんだ。だから、僕は(テストに行くことを許してくれた)彼らに感謝している。

Q:もうシート合わせとか、そういうのは終わっているの?
LD:全くやってない。今回、すべてをやらなくちゃいけないんだ。だから、最初のテストはちょっと忙しくなるかも知れないけど、その後は大丈夫だと思うよ。1回目のテストの後は、LMSの開幕戦・ポール・リカール8時間に出るし、開幕戦直後には居残って3日間のテストをする。そこでもう一度テストをすることができるんだ。今回のテストはちょっと時間的にもタイトだし忙しいけど、その後は問題ないと思う。

Q:さっきブノワにも話を聞いたと言っていましたよね? 彼は去年プジョーに乗っていますけど、どんなことを教えてもらいましたか?
LD:彼は、とても戦闘力のあるクルマだって言っていたよ。ただ、とても視界が悪いからはあまり快適にドライブできない部分もあったと言っていた。去年のブノワの場合と違うのは、今年4台のプジョーがすべて同じ2010年仕様になるっていうこと。ワークスの3台と空力パーツはすべて同じだし。プジョーが新しいパーツを作れば、4台すべてにそれが供給される。ワークスと同じ物が使えるんだ。それに1年の最初から、僕らはそのクルマを使うことができるから、クルマに慣れる時間もある。クルマの戦闘力が高いっていうことが僕にとっては重要だよ。確かにクルマの中からの視界は完璧じゃないと思うんだよね。でも、そこを何とかやり遂げなくちゃって思う。だって、屋根があることによって、僕らはよりダウンフォースを得ることができていると思うから。もしこのクルマで他のドライバーが勝てるなら、僕だってそれをできるっていうことだからね。

Q:ドライバーもクルマも含めて、オールフレンチチームになりますね?
LD:そう。これは、すごくいいことだと思う。例えば、ルノーはF1をやっているけど、まったくフランス人ドライバーのことはサポートしてくれない。日本で走っていると、日本のメーカーは日本人ドライバーをとても強力にサポートしているのが分かるし、それは素晴らしいことだと思うんだ。で、フランスにはルノーのF1と、プジョーの耐久レースという大きなプログラムがあるんだけど、プジョーはオレカのようなフランスのチームを通じて、フランス人ドライバーをサポートしてくれたからラッキーだったよ。プジョーは僕らのことを勝てるだけの実力があって、いい仕事をするっていう風に評価してくれたんだよね。その一方で、プジョーが何人か、その他の国のドライバーを雇っているのもいいことだと思う。僕らは常に、自国以外の人々から色々なことを学べるからね。とにかく僕としては、完全なフレンチチームで戦えるのが嬉しいよ。僕はもう何年も全員フランス人というチームで仕事をしていないからね。

●日本のレースのレベルを見せたいね!

Q:今年はアンドレ・ロッテラーとブノワ・トレルイエ、このふたりがアウディでル・マンに出場します。ということは、あなたのクルマとも戦うことになりますが、彼らのことは意識しますか?
LD:彼らはライバルとしてよりチームメイトとして組んだ方がいいドライバーだね(笑)。ただ、アウディ3台とプジョー4台。この7台に乗っているドライバーは、みんないいドライバーだと思うんだ。この両ワークスは、ポテンシャルがハッキリしないドライバーを乗せるというリスクは犯すことができない。だから、一方で僕は彼らを怖れているよ。だけど、その一方では、全員いいドライバーだっていう風にも思っている。それに、彼らとともにル・マンに出られるのはハッピーだ。僕らスーパーGTに出ている3人が、みんな勝てる環境で出られるのは素晴らしいと思う。

Q:アンドレとブノワは、今年のル・マンで『日本を代表して戦いたい』と言っていましたが、ロイックもそういう気持ちはある?
LD:僕もそう思うよ。それはA1グランプリに出ていた時も同じだった。向こうでは、日本の選手権や日本人ドライバー、日本で走っている外国人ドライバーについて、あまり話が出たりしないんだ。日本はヨーロッパから遠く離れているからね。でも、日本人ドライバーにせよ、外国人ドライバーにせよ、日本のレースに出ているドライバーがヨーロッパのレースに出てトップ争いをしたら、それは日本のレースのレベルが高いっていうことなんだよ。だから、僕らが今年のル・マンに出て、いい成績を残せたら、日本で走っているドライバーとして誇りに思える。例えば、ル・マンで8回も勝っているトム・クリステンセンだって日本で走っていたけど、今年僕らが活躍することで、日本にいる人間がいかにプロとしていい仕事をしているか、いかに日本のレースのレベルが高いか見せることができるからね!