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ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2020.01.29 14:24

WRC:オジエのトヨタ初戦は総合2位。移籍で生まれた“未知なるエリア”

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ラリー/WRC | WRC:オジエのトヨタ初戦は総合2位。移籍で生まれた“未知なるエリア”

「2020年の目標はもちろん、失ったタイトルを取り戻すことだ。しかし、自分にとってはモンテカルロの優勝も重要な意味を持つ。どうしても勝ちたい1戦だが、そう簡単には行かないだろう。ライバルも速く、連覇へのプレッシャーは年々高まっている」

 シトロエンからトヨタに移籍し、新たな気持ちで2020シーズンの開幕を迎えたセバスチャン・オジエは、ラリー・モンテカルロのスタートを前に激戦を予期していた。

 そのとき、彼の脳裏にはヒュンダイのティエリー・ヌービルと繰り広げた、2019年モンテの大接戦が浮かんだのかもしれない。最終日を迎え、首位オジエと2番手ヌービルの差は4.3秒。ヌービルの猛追により差は一時0.4秒まで縮まったが何とかしのぎ、2.2秒差で辛勝した。

 目下6連勝中のラリー・モンテカルロはオジエにとって真のホームイベントである。サービスパークが置かれるフランス南部のギャップは、オジエの生まれ故郷であるフォレスト・サン・ジュリアンから15kmほどしか離れていない。

 スキーのインストラクターをしながら、周辺の峠道を走り回っていたオジエにとって、まさに地元開催のラリー。地の利は少なからずあるが、過去何度も同じエリアでSSが行なわれているため、WRCレベルの戦いでは大きなアドバンテージとは言えない。

 今シーズンをもってWRCからの引退を宣言しているオジエにとっては、最後のモンテとなる可能性が高い。仮にもう1年、引退を延ばしたとしても、2021年のモンテはギャップを離れ、モナコ中心のステージとなる。だからこそ、オジエは最後のホームラリーで、どうしても勝ちたかったのだ。

 過去6年間、オジエは3台の異なるマシンでモンテを勝ってきた。前年と違うマシンに乗り換えても、すぐに乗りこなしてしまうのが彼の卓越した才能であり、2019年もシトロエンC3 WRCで移籍後の初戦を苦労しながらも制した。それだけに、ヤリスWRCで臨む今年も優勝が期待されていた。

 昨年からオジエと仕事を開始した、とあるトヨタのエンジニアは、「元6年連続世界王者を迎え、絶対にチャンピオンに返り咲かせなければいけないという、いい意味での緊張感がチーム内に漂っている。オジエも、まわりのスタッフをやる気にさせるのがうまく、タイトル獲得に向けてチームの雰囲気はとてもいい」と話す。

 オジエは2019年12月からヤリスWRCのテストを開始し、モンテの直前にもフランス山中でプレイベントテストを実施した。クルマこそ変わったが、例年と同等かそれ以上の準備ができていた。

 また、テストでは昨年までのセッティングを大きく変えるようなことはせず、ファインチューニングに終始したという。彼はターマック用のベースセットに満足しており、「非常に俊敏でコントロールしやすい」と、ヤリスのハンドリングを高く評価していた。

 しかし、どのドライバーもそうだが、新しいクルマを完全に理解するまでには数戦を要する。とくに、路面コンディションがトリッキーなモンテでは限界の見極めが非常に難しく、それを少しでも超えた瞬間にすべてを失う。

「毎年、このラリーでは自分が快適に感じられる範囲を絶対に超えないように戦ってきた。そのアプローチを今年も変えるつもりはない」とスタート前のオジエ。実際、その言葉どおりにステージを重ねていった。

 モンテカルロでは無敵を誇ってきた彼だが、改めて過去の戦いを振り返れば、意外にも慎重なラリー運びが見えてくる。ここ数年は、ベストタイムを連発して独走するような展開はない。ベストタイムの回数はMスポーツ・フォード移籍初年度の2017年が3回、2018年が4回、そしてシトロエンに移籍した2019年が2回と、優勝ドライバーとしてはかなり少ない。

「もっと速く走ろうと思えば走れる。でも、このラリーでは絶対に一線を超えてはならないんだ」と、自分のスタイルを今回も貫いたオジエは、オープニングのナイトステージでいきなりベストタイムを刻んだ。

 SS1は完全にドライで、雪や凍結を気にする必要はない。そういったリスクが少ないSSでは攻め切り、続くトリッキーなコンディションのSS2では抑えて、2番手のタイム。2日目金曜日の「罠だらけ」のステージ群でも抑え気味の走りを続け、総合2、3番手を行き来していた。


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