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投稿日: 2021.08.28 22:10
更新日: 2021.08.29 09:03

苦手意識があったもてぎで劇変。突き詰めたクルマ作りに手応えありの野尻&一瀬俊浩エンジニア【第5戦もてぎ予選】

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スーパーフォーミュラ | 苦手意識があったもてぎで劇変。突き詰めたクルマ作りに手応えありの野尻&一瀬俊浩エンジニア【第5戦もてぎ予選】

 2021年のスーパーフォーミュラ第5戦もてぎ。例年だとタイム差がつきにくく、予選タイムも0.001秒単位の僅差で順位が決まることが多いのだが、今回はランキングリーダーの野尻智紀(TEAM MUGEN)が、頭ひとつ抜け出すパフォーマンスをみせた。

 Q1のBグループに出走した野尻は、いきなりコースレコードに0.3秒と迫る1分31秒336をマーク。同じ組で2番手につけた松下信治(B-MAX RACING TEAM)、さらにA組トップの大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)に対し、1秒もの差をつけた。野尻はQ2、Q3でも圧巻の走りをみせ、昨年平川亮がマークしたコースレコードを0.01秒上回る1分31秒073で今季2度目のポールポジションを獲得。その速さにライバルたちもお手上げという雰囲気だった。

「(Q1のタイムは)信じられなかったです! 野尻も無線で『1分31秒台の表示が出ているけど、本当?』と聞いてきたくらいでしたからね。僕たちも何かの間違いかなと少し思いましたね。手応えはありましたけど、あそこまでタイムが出るとは思っていなかったです。今日の野尻は本当に速すぎましたね」

 そう語るのはTEAM MUGENの田中洋克監督。今までは苦手意識の方が強かったツインリンクもてぎで、速さを見せることができたと笑顔をみせていた。

「もてぎは我々もそうですけど、ホンダ全体で結果を出せていない傾向があり、正直戦える気がしないサーキットでした。でもここ2~3年で富士で戦えるようになってきて、今回もてぎでポールを獲ることができて、本当に嬉しいですね」

 今シーズンは第1戦富士、第2戦鈴鹿と連勝して勢いに乗った野尻。だが、第3戦オートポリス、第4戦SUGOでは予選で後方に沈んでしまう展開になった。その際に「何か対策をうたなければいけない」と危機感をみせてたなか、約2カ月に及ぶインターバルの間に一瀬俊浩エンジニアをはじめ、チームと徹底的にマシンやデータを調べ直したという。

「工場でセットアップをしている段階の微妙なコーナーウエイトの違いとか、その取り方の違いで、あまり感度がないと思っているところに感度があったりするんじゃないかとかと考えたりもしました。結局、そこに原因はなかったんですけど、僕は細かいことでも一度気になったらすごく気にしちゃうタイプなので……」と野尻。

「そこは普段ドライバーが気にしないところまで情報をいただきながら、自分なりに考えたり、疑問に思ったところは質問もしたりしました。だから、一瀬エンジニアとは何度も連絡をとって、話し合いをしました。それこそ、本当に細かいところまで指定して『ここをみてほしい』みたいな感じで、とことん突き詰めました。その辺の理解度を深めていきながら、より精度の高い持ち込みの状態を作りたいなと思っていました。SUGOからインターバルもあったので、そこは良い時間の使い方ができたと思います」

 一瀬エンジニアも2カ月のインターバルを使ってシーズン序盤の分析やSUGOでの反省点の洗い出しも行った。さらに野尻とともに細かな疑問点も潰していったことが、今回のパフォーマンスにつながったと語った。

「まず、なぜSUGOが遅かったのかという点については、オートポリスの決勝がすごく速かったので、それをベースにSUGOのセットアップを考えたのが、間違っていた部分があったのかと思います。ダウンフォースで走らなければいけないコースをメカニカルなクルマを作ってしまっていたというのが失敗だったと思います」

「ただ、もてぎに関しては僕自身もあまり良い印象がなくて、低荷重のサーキットでうまくいった試しがなかったです。その理由が何なのかを、この2カ月間のインターバルでしっかりと確認できました」

「結構、ミーティングをやりましたね。『こういうふうにしたら直ると思う』『いや、そのクルマは違うな』というやり取りを繰り返し……“野尻エンジニア”と“一瀬エンジニア”が作ったクルマみたいな感じでしたが、今日は野尻選手がドライバーとして頑張ってくれました」

「でも、その話し合いの中でいろいろと発見がありましたね。野尻選手の感覚からくるものとデータの裏付けができたことで、今回は失敗しなかったのかなと思います。また第1戦、第2戦が良かった原因も含めて、シーズン前半の分析と振り返りができたのも(今日のPPの)一助になりました」

 この2カ月のインターバルの間に、それこそ“重箱の隅をつつく”くらいの細かな検証を行ってきたというTEAM MUGEN。田中監督もデータとしての裏付けをしっかりできたことが大きかったと振り返った。

「他のチームもそうかもしれませんが、以前と同じセットアップにしても、同じように走らないということがよくあるじゃないですか。当然我々もそうなんですけど、“なぜそうなるのか?”というのを、細かく計測・分析してきました。その結果が数字として出てきて“やっぱり違うね”というのが、分かってきました。その辺をうまく反映していますし、どんどん速さにつながっていると思います」

「レース業界は経験値が重視もされているところありますけど、その経験値と数字を比較した時にちゃんと合っているかどうかという検証も必要だと思います。今までは『なぜ?』というクエスチョンマークがいっぱいあったのを、少しずつ消していっていく作業をして、分からないところをどんどん減らしていく最中です」

 シリーズチャンピオン獲得のためにも、今回から始まったもてぎでの2連戦をかなり重要視していた野尻とTEAM MUGEN。まずは予選驚速の走りをみせたが、チームは“通過点のひとつをクリアしただけ”と、緊張感を保とうとしている様子が印象的だった。


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