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スーパーGT ニュース

投稿日: 2023.03.09 09:32
更新日: 2024.01.09 23:41

花粉症、今年はすごく辛いですよね。ところでレーシングドライバーって大丈夫なんですか?

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スーパーGT | 花粉症、今年はすごく辛いですよね。ところでレーシングドライバーって大丈夫なんですか?

 2月頃から飛散しはじめ、3月に入ってからは急激に暖かくなってきたこともあってか毎日非常に多い飛散量となっているスギ花粉。今年は“10年に一度の多さ”だそうで、花粉症の症状がある皆さんも毎日辛いのではないでしょうか。筆者も花粉症で、対策してはいるものの、やはり今年は飛散量が多いせいか、夜になると鼻水や目のかゆみに悩まされています。ところで、レーシングドライバーって花粉症の影響はないのでしょうか? 花粉症のドライバーに聞き込みを行ってみました。

 2023年は非常に飛散量も多いそうで、報道によれば花粉症によるクシャミの影響で、公道で悲しい事故も起きてしまったとか。症状がある方にとっては、大量飛散が続く今年の3月はとても辛い日々を送ることになりそうです。

 もちろん屋内にいればまだ良いのですが、モータースポーツの場合はそうもいきません。基本的にピット内も半分屋外のようなもので、しかも山間部にあることも多く、マスクなど花粉症対策をしてもなかなか防ぎきれるものではありません。我々コースサイドで写真を撮る立場も、マスクをしているとなんだか撮りづらく、マスクを外さざるを得ない人が多いです。

 3月4日からは鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デーも始まり、いよいよ国内のモータースポーツシーズンも本格的にスタートしましたが、3月4〜5日のファン感謝デー、さらに6〜7日のスーパーフォーミュラ合同テスト、7〜8日のスーパーフォーミュラ・ライツ合同テストと多くのドライバーがコースを走っています。

 では、レーシングドライバーは花粉症にはならないのか……? という素朴な疑問を抱いた方は日本全国に5名くらい(?)はいらっしゃるかもしれません。コンマ1秒を争い、コーナリングでは繊細な操作が求められるドライバーにとって、目や鼻がムズムズしたり、クシャミでもしようものならそれこそ大変。そこで、鈴鹿にいた花粉症のドライバー20名ほどに聞き込みを行ってみました。実は筆者は2008年にオートスポーツ本誌でも同様の企画を行っており、どうなるかは知ってはいたのですが、“10年に一度の多さ”の今季、あえての再取材です。

■花粉症のレーシングドライバーにほぼ共通するコト

 結論から言ってしまうと、ほとんどのドライバーは「レーシングスピードで走っているときは花粉症の症状はピタッと出なくなる」です。ドライバーの皆さんはそれぞれ薬を飲んだりと対策はしていますが、眠気を催すものもあったり、アスリートなのでドーピング検査に引っかかってしまう可能性もあり、人によっては薬を飲まなかったり、薬の種類を慎重に選んだりしています。当然ピット等で過ごしているときは鼻水や目のかゆみに悩まされています。

 もちろんハコのレーシングカーでも市販車のような花粉フィルターなんてついてませんし、フォーミュラの場合顔を守るのはヘルメットと布のバラクラバのみ。ヘルメットの通気口からガンガン呼吸します。「フォーミュラに乗っているとき、朝イチのコースインで前のクルマのディフューザーが黄色い粉を巻き上げているのを見ただけで気を失うかと思いました(片岡龍也選手)」という花粉症には過酷な環境です。

 しかしレーシングカーに乗り、コースを走るとまったく症状が出ないそう。例外は2名ほどいましたが、これまで長年聞いてきたドライバーも含め、走っているときに症状が出なくなるのは、聞いたドライバーのうち98パーセントくらいでしょうか。

 ただ、症状が出なくなるタイミングは人によります。「ヘルメットを被ると出なくなる(堤優威選手)」「集中し始めたら気にならなくなる(佐々木大樹選手)」「完全に止まりますが、ピットに帰ってきた瞬間に急に出ます(石浦宏明選手)」「ピットレーンからコースインまではクシャミが出ますが、レーススピードになったら止まります(片岡選手)」などなど。「たまにクシャミは出ますけど、ストレートで出ますね(加藤寛規選手)」という例も。加藤選手はル・マン24時間でも出たそう。ル・マンは6月ですが、その頃のフランスはブタクサの花粉があります。

 この話をすると、ドライバーたちも「なんででしょうね」と不思議な様子。アドレナリンなのか、極限まで集中しているからなのか……!? 花粉症は逆に集中力を下げてしまうこともあると思うのですが、このあたりがプロのアスリートたる由縁でしょうか。“集中のスイッチ”が入る瞬間が人によって違うのも興味深いですね。そしてこれは、他の屋外スポーツ選手の意見も聞いてみたいところです。ちなみに一日の走行を終えて、ホテルに戻るとそれはそれはひどいとか。

3月8日のスーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの様子
3月8日のスーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの様子

■集中が切れると……

 花粉症の話題に加え、レーシングドライバーの皆さんと集中力の話をしていたときに、なかなか興味深い話も出たのでご紹介しましょう。「花粉症の症状が出なくなりますし、トイレに行きたくなるのも忘れます」というのは佐々木選手。

 これは花粉症とは関係ない話ですが、レース中にセーフティカーが出たり、ピットに戻るタイミングだったりとふと集中力が切れるのか、アドレナリンの数値が下がるのか、ふとトイレに行きたくなったりするドライバーが何名かいました。「セーフティカーが出てゆっくり走っていたり、待っているときなどはふとトイレ行きたくなります(菅波冬悟選手)」「レースのときはないのですが、テストのときにはごくたまにあります(堤選手)」などなど。

 過去にあった例を挙げてくれたのは片岡選手。「過去にレース中に行きたくなったことはないのですが、スタートの頃に『トイレ行っておけば良かった』と思って、でもスタートすれば大丈夫だと思っていたんです。ところが大雨でセーフティカースタートになって、その間ずっとトイレ行きたかったんです(笑)」

「やっと解除になったと思ったら、クラッシュがあってまたSC。『もう無理!』と思っていても、その後レースになったらまた平気になる。それくらい集中力は大事です」

 逆に「セーフティカー中はけっこう考えることが多いから集中している(大嶋和也選手)」という声も。ただセーフティカー中と言えば、タイヤの温度を下げないようにウィービングする光景が常ですが、「ウィービングは目が回ることはあります。あと、ブレーキのタテGで気持ち悪くなることも(大嶋選手)」

 これについては、佐々木選手、菅波選手も「ウィービングはクルマ酔いする」と同意。またウィービングはかなり疲れるそう。「スーパーフォーミュラでは、タイヤが温まったときに振るのと、フォーメーションラップで振るのは全然違います。かなり疲れますよ(石浦選手)」などなど。

 もちろんこのあたりはドライバーによってさまざまですが、ドライバーの集中力はアレルギーや生理現象も抑える力をあるということでしょうか(もちろんトイレの我慢はあまり良くないとは思いますが)。いつか医学的に調べてみたいものです。

3月8日のスーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの様子。この時期は写真もなんだか霞んでいます。
3月8日のスーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストの様子。この時期は写真もなんだか霞んでいます。ちなみに写真の小出峻選手も花粉症に悩まされています。


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