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コラム ニュース

投稿日: 2023.04.24 18:10
更新日: 2023.04.24 19:32

【フラガのニッポン・レース日記/第1回】ブラジルF3王者からグランツーリスモ、そしてスーパーGTへ

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コラム | 【フラガのニッポン・レース日記/第1回】ブラジルF3王者からグランツーリスモ、そしてスーパーGTへ

 2023年はANEST IWATA Racing with ArnageからスーパーGT GT300クラスに参戦するイゴール・オオムラ・フラガ。グランツーリスモ世界王者など、eモータースポーツのイメージが強いフラガですが、実はリアルレースの経験も豊富。今回は生まれ故郷である日本でのレースキャリアをスタートさせたフラガが、自身の生い立ちとレースキャリア、GT300参戦を語ります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 僕はイゴール・オオムラ・フラガ。24歳のブラジルと日本のハーフです。僕は、両親がブラジルから日本へ仕事で出稼ぎに来ているとき、日本の金沢で生まれました。ブラジル人の父はカーマニアで、僕は物心ついたときから自動車関連のオモチャを与えられて育ちました。

 父親は自分でもレースをしていた人間ですが、息子の僕にもレースをさせようと思ったようで、3歳になったときにキッズカートを買ってくれました。でも、すぐにカートに乗るのは難しいので、その当時売っていたグランツーリスモ3を買ってくれて、ハンドルの回し方やアクセル、ブレーキの使い方を練習しました。

 キッズカートは琵琶湖スポーツランドをベースに練習するようになりました。休日は一家でカートコースに行ってカートを走らせ、家に帰ってからはまだ走り足りないのでグランツーリスモでバーチャルの世界を走りました。今の僕が、バーチャルレースとリアルレースの二刀流で活動しているのは、そうやって育ったからです。

 その後、2011年ごろに我が家はブラジルに戻り、僕はブラジルやアメリカのフォーミュラカーレースに出場するようになりました。資金は限られていたので厳しい戦いが続きましたが、2017年にはブラジルでF3チャンピオンにもなりました。

 でも、やはり資金が厳しくてその先へどうしても進めず、どうしようかなと思っていたらFIAグランツーリスモ・ワールドチャンピオンシップが始まることを知り、猛練習して闘って、2018年に初代ネイションズカップワールドチャンピオンになりました。

 それをきっかけに、さまざまな道が開けてきたように思います。2019年はグランツーリスモの支援を受けてヨーロッパでフォーミュラ・リージョナル選手権に参戦し、2020年初頭にはニュージーランドのトヨタ・レーシング・シリーズに参戦しました。このカテゴリーはほぼフォーミュラ・リージョナルと同じ規格で開催されるフォーミュラカーレースシリーズで、リアム・ローソンや角田裕毅も参戦していました。このシリーズで僕はふたりに勝ち、2020年度のシリーズチャンピオンになりました。

トヨタ・レーシング・シリーズ参戦時の角田裕毅(左)、リアム・ローソン(中央)、イゴール・オオムラ・フラガ(右)
トヨタ・レーシング・シリーズ参戦時の角田裕毅(左)、リアム・ローソン(中央)、イゴール・オオムラ・フラガ(右)

 この戦果を認められてレッドブルジュニアに選抜され、2020年はFIA F3選手権に進出して、F1グランプリへの道も見えたように思っていました。ですが、ちょうど新型コロナウイルスが世界中で蔓延したことで僕のレース活動は急ブレーキがかかってしまいました。また、FIA F3で所属したチームも決して戦闘力が高くなく、まったく思いどおりの成績を収めることができないまま、事実上レース活動を休止することになってしまいました。

2020年のFIA F3に参戦したイゴール・オオムラ・フラガ
2020年のFIA F3に参戦したイゴール・オオムラ・フラガ

 なんとか活路を見出そうと思い、2022年に僕は日本に帰ってきましたが、帰ってきてすぐにリアルレースの可能性を掴めるわけでもなく、『2023年はどうしようかな』と悩みながら9月に富士スピードウェイで開催されたWEC世界耐久選手権第5戦を観戦しに行きました。そこで知り合ったのが、スーパーGT GT300での活動を本格化させようとしていたANEST IWATA Racingの関係者でした。

 嘘のような話ですけど、WECのパドックのその場で、会ったばかりなのに「来年、うちのGT300に乗るか!? ちょうどドライバーを探していたんだ」と言われて、びっくりしました。何か騙されているんじゃないか、お金だけ取られてしまうのではないかと最初は信じられませんでした。

 でも、日本でカートをしていたときの僕を知っている人がいたり、eスポーツ関連のTVに出演したときの知り合いがいたり、不思議な巡り合わせがあり、まさにトントン拍子でANEST IWATA Racingへの加入が決まり、その延長で全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権にも参戦できることが決まりました。本当に信じられない週末でした。日本に帰ってきた段階では、まったくこの先のレース生活に未来が見えていませんでしたので、夢のようです。

 4月15〜16日に岡山国際サーキットで開催された2023スーパーGT開幕戦は、僕にとってほぼ2年半ぶりのリアルレースで、しかも日本で四輪レースをするのは始めてのことだったので、とても楽しみでした。公式予選では7番手につけることができ、ポイント獲得を目指して決勝レースに臨みました。ですが、決勝レースは悪天候のため、ほとんど納得できる走りができないまま、10周程度走っただけでレースが終了してしまい、少し欲求不満です。

 ですが、素晴らしいチームとチームメイトに恵まれて、気持ちはとても高まっています。今シーズンはスーパーGTとスーパーフォーミュラ・ライツに出場しながら、みなさんに僕の日記を毎レース読んでもらおうと思っています。次のレースは5月3〜4日、富士スピードウェイで開催されるスーパーGT第2戦です。応援よろしくお願いします。

2023スーパーGT第1戦岡山 古谷悠河/イゴール・オオムラ・フラガ/小山美姫(ANEST IWATA Racing RC F GT3)
2023スーパーGT第1戦岡山 古谷悠河/イゴール・オオムラ・フラガ/小山美姫(ANEST IWATA Racing RC F GT3)

<<プロフィール>>
イゴール・オオムラ・フラガ

 1998年9月26日生まれ。レーシングカートで数々のタイトルを獲得すると、2017年にブラジルF3でチャンピオンに輝く。2020年はレッドブル・ジュニア・チームに加入しFIA F3に参戦したほか、トヨタ・レーシング・シリーズのチャンピオンを獲得。さらにeモータースポーツでも活躍をみせ、2018年にグランツーリスモ世界王者に輝き、2022年にはスーパーフォーミュラのeモータースポーツ・アンバサダーに就任した。2023年はANEST IWATA Racing with ArnageからスーパーGT GT300クラス、B-Max Racing Teamからスーパーフォーミュラ・ライツに参戦する。

2023スーパーGT第1戦岡山 イゴール・オオムラ・フラガ(ANEST IWATA Racing RC F GT3)
2023スーパーGT第1戦岡山 イゴール・オオムラ・フラガ(ANEST IWATA Racing RC F GT3)


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