MotoGPの開幕戦カタールGPを、苦戦のうちに終えたホンダとKTM。まだ初戦、されど初戦。第2戦はロサイル・インターナショナル・サーキットでの連戦であり、許されている時間は少ない。カタールGPで、彼らはなぜ、何に苦しんでいたのだろうか。
ヤマハのマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)がオーバーテイクからの独走で優勝を飾り、ドゥカティのヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング)とフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)は2位、3位表彰台に立った。スズキはもはやお家芸、とも言えそうな追い上げを見せて、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が最終的に4位フィニッシュ。終盤にはザルコ、バニャイアと表彰台争いを繰り広げた。カタールGPの決勝レースは、各ライダーやチーム、メーカーが絡み合う熱戦であった。
そうしたカタールGPのなかで、奮わないままレースを終えたのがホンダとKTMである。まずは、ホンダ。最上位はホンダに加入して初レースだったポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)の8位だった。レプソル・ホンダ・チーム1年目初戦の各ライダーの成績について振り返ると、2020年がルーキーのアレックス・マルケスの12位、2019年がホルヘ・ロレンソの13位である。ちなみにそれ以前は2013年のマルク・マルケスで3位表彰台。規格外のルーキーだったことがあらためて窺い知れる。
おおまかな比較として見れば、ポル・エスパルガロの初戦8位はまずまずの結果と言えるのかもしれない。ただ、ホンダのファクトリーライダーに求められるのは、もちろん“まずまずの結果”ではなくチャンピオン争いなのである。
土曜日には「特にレースで、1周目のフルタンク状態のときには落ち着いていかないといけない。1周目がうまくいけば、いいポジションにいられるはずだ」と語ったポル・エスパルガロ。しかし、12番グリッドからスタートした決勝レース1周目で出遅れる。その理由の一つがまさに、レース序盤のフルタンク状態の走りだった。
「今日の問題のひとつは、スタートだった。12番手からのスタートは難しい。そして次に、フルタンク状態の1周目で、フロントタイヤについて十分にわかっていなかったこと」
「フロントタイヤは重要で、もちろんこれはすべてのバイクがそうだけれど、特にこういうバイク(ホンダ)はブレーキで(アドバンテージが)得られる。フルタンクのときにはすべてがすごく難しくなるんだ。つまり、特にレース序盤だね。簡単にミスしてしまうし、ラインがワイドになってしまう。だから、レース序盤には注意しないといけなかった」
ミスをしない走り、それが1周目でポジションを上げることができなかった理由だとポル・エスパルガロは説明する。1周目を終えた時点で、トップとの差は3秒以上にまで広がっていた。
「レースを通してたくさんのことを学ぶから、ミスをしたくなかった。このレースウイークでは、持っている多くの問題をも学んだ。自分の仕事には誇りを持っているし、よくやったと思う。けれど、チャンピオン争いを目標にしたいなら、次戦もこういうポジションにいることはできない」
一方、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)はフリー走行2回目からフロントブレーキに問題を抱えた。ブレーキがスポンジのような感触になり、次の走行ではレバーを引く感触が硬くなったという。土曜日の予選を終えたあとには、その問題が「100パーセント解決していない」とも語っていた。
決勝レースで11番グリッドからスタートした中上は序盤にポジションを落とし、7周目に9コーナーでスリップダウン。さらにチームメイトのアレックス・マルケス(LCRホンダ・カストロール)も14周目に4コーナーで転倒を喫して終えている。