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クルマ ニュース

投稿日: 2020.02.13 13:03
更新日: 2020.03.03 16:14

日本中で旋風を吹かせたラグビーW杯から考察する、モータースポーツの長所と弱点 前編【大谷達也のモータースポーツ時評】

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クルマ | 日本中で旋風を吹かせたラグビーW杯から考察する、モータースポーツの長所と弱点 前編【大谷達也のモータースポーツ時評】

 モータースポーツだけでなく、クルマの最新技術から環境問題までワールドワイドに取材を重ねる自動車ジャーナリスト、大谷達也氏。本コラムでは、さまざまな現場をその目で見てきたからこそ語れる大谷氏の本音トークで、日本のモータースポーツ界の課題を浮き彫りにしていきます。

 第3回は『さまざまなスポーツと対比させてみえてくる、モータースポーツの魅力と弱点(前編)』がテーマです。

 2019年に日本中で類を見ない旋風を巻き起こした『ラグビー』を例に出しながら、掘り下げて行きます。

* * * * * * * * 

 今回は少し趣向を変えて、さまざまなスポーツと対比しながらモータースポーツの魅力と弱点について語ってみたいと思います。

 2020年を迎えて、スポーツファンの関心は東京オリンピック・パラリンピックへと向かっていますが、忘れていませんか? つい3カ月ほど前まで日本中でラグビーが熱く盛り上がっていたことを……。

 私は運よくラグビー・ワールドカップの一戦を生で観戦しましたが、迫力があってスピーディで感動的で、人気の秘密が少しだけわかったような気がしました。でも、ラグビーがこんなに日本でブームになると私には予想できなかったのも事実。なぜなら、ラグビーは私が考える“理想のスポーツ”とは、ほど遠い存在だからです。

 私が考える理想のスポーツとはなにか? それはより多くの人々がファンになるポテンシャルを秘めた競技のことです。その条件を私なりに考えてみたところ、実に明快な答えに辿り着いたのでここで紹介しましょう。

 まず、ルールがシンプルで、誰でもひと目見ただけで試合の状況が掴めることがもっとも大切。サッカーやバスケットボールはその代表です。なぜなら、いずれも競技の目的が『ゴールにボールを入れること』と極めてシンプル。

 したがって各選手がどんな目的で動いているのかがわかりやすい。反則の種類が少ないことも試合の流れを理解するうえでは有利です。

 この点、野球やラグビーは不利。長年親しんでいる私たちには、なんの問題もない野球ですが、あの攻守を入れ替えるシステムは世界中のスポーツを見渡しても極めて少数派。ラグビーもルールが難解で、とりわけ反則の種類が多い点は不利です。

 私が考える理想のスポーツで、もうひとつ重要なのは、全般的には「強い者が勝つ」という原則が貫かれていながらも、適度な偶然性が織り込まれていてときに大きな番狂わせが起きる可能性を秘めている点にあります。

 この点でもサッカーは有利。なにしろ、手に比べれば正確に動かすのがはるかに難しい足を使ってボールを蹴るのですから、不確定要素が入りやすく、したがって試合の結果は予想しにくい。やや強引な理屈かもしれませんが、ラグビーはこの点でも不利です。

 なにしろボールを手に持って前に向かって走れるのですから、選手の行動にさまざまな制限のあるサッカーやバスケットボールに比べれば、偶然性の入り込む余地は本質的に少ないといえます。

 それでも、私を含めた多くの日本人がラグビー・ワールドカップを戦う日本代表の姿を見て熱くなり、そして涙を流したはずです。なぜでしょうか?


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