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国内レース他 ニュース

投稿日: 2022.06.10 23:10

iCraft 2022スーパー耐久第2戦富士24時間 レースレポート

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国内レース他 | iCraft 2022スーパー耐久第2戦富士24時間 レースレポート

MEDIA INFORMATION
2022年6月吉日

ENEOSスーパー耐久シリーズ 2022 Powered by Hankook 第2戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』
6 月 3〜25 日 富士スピードウェイ(静岡県)
予選:晴れ/ドライ 入場者数:4500人
決勝:曇りのち晴れ/ドライ 入場者数:16900人
OHLINS Roadster NATS(マツダロードスターND5RC)
山野哲也/金井亮忠/野島俊哉/石井達也/南澤拓実

スタートからわずか7周で発生したトラブル。その後も試練が続くも、12位で完走は果たす

 スーパー耐久シリーズで3シーズン目を迎えたiCraft(猪爪俊之:監督)は、引き続きST-5クラスにマツダロードスター『OHLINS Roadster NATS』で、日本自動車大学校(NATS)の支援を受けて参戦し、学生たちがマシンを製作し、メカニックを務めるのは従来どおりである。

 ドライバーには新たに山野哲也をレギュラーとして起用し、NATS講師も務める金井亮忠とのWエース体制を構築。さらにロードスターパーティレースIIIで実績を残してきた、若手を多用し、今回は2021年北日本シリーズチャンピオンの野島俊哉、石井達也、そして2021年東日本シリーズチャンピオンの南澤拓実との5人体制での参戦となる。

 山野を新たに迎え、前戦鈴鹿では悲願の初優勝。シリーズ第2戦として迎えるのは、いきなりシリーズの大一番、『NAPAC 富士 SUPER TEC 24 時間レース』だ。昨年は一時トップを走るも、夜間にエンジン補機のトラブルが発生し、優勝戦戦からは脱落してしまったが、ノーミス、ノーペナルティで走り抜き、7位で感動のフィニッシュを果たしている。

 今回は富士24時間としてはリベンジを、そしてシリーズとしては2連勝を目標とする。

 なおメカニックを務めるNATSの学生たちは、新年度となって最初のレースとあって、これがS耐デビューとなる。先輩たちに負けない、正確かつ素早い作業が期待される。

公式予選

 2018年から始まったS耐の富士24時間は、今年で5回目の開催となる。チームとしては3回目の挑戦で、この間にデータやノウハウは確実に積み上げてきた。今年は開幕戦のウィナーとしても臨む一戦でもあるだけに、ライバルから大いにマークされる戦いとなった。

 前述のとおり、今回から新たなNATSの学生メカニックとともにレースを戦っていく。彼らによって準備されたマシンではあり、すでに公式テストは経験しているとはいえ、実戦は初。そこで走行開始とともに、まずは入念にチェックが行われた。最初のうちはぎこちなかったものの、徐々に手慣れていって動きも少しずつスムーズになっていくのが、実に頼もしくもあった。

 その一方で、周回を重ねるごと明らかになっていったのは、前回の優勝によってウエイトハンデを20kg積んだ影響は小排気量車とあって極めて大きく、一発の速さはもう求めないようにしようと。そこでセットアップは決勝重視、ドライバー全員が同じタイムを刻めるようにと、方向性は改められた。ベストに至らずとも、ベターを求めるトライ&エラーは練習走行のみならず、予選も使われたほどだった。

 その予選だが、まるで夏のような雲を浮かべ、完全なドライコンディションで競われた。Aドライバー予選に挑んだ山野は、計測2周目からのアタックを完璧に決めて2分5秒791をマーク。

 続くBドライバー予選では、金井が徐々にタイムを縮めていった。2分5秒336にまで達すると、セッション終了を待たずにピットに戻っていた。山野、金井ともに4番手で、合算タイムでも『OHLINS Roadser NATS』は4番手を獲得した。

山野哲也
「すでにウエイトを積んでいるので予選順位は気にしていません。それよりも24時間すべてにおいて平均ラップを安定させ、コース上やピット作業でロスタイムを減少させることが大事。予選の時間もセットアップ中心で行うこととなりました。ある意味、予選中もトライしたことのないセッティングにもチャレンジしています。その判断は正しく、いいところが見つかってきたので、決勝に向けての不安要素はなくなってきました」

金井亮忠
「車の動きはすごく良かったです。フリー走行ではセットが決まらない状況でしたが、予選では満足いく感じに仕上がってきています。新しい学生たちは先月の合同テストが初サーキットで、今回がデビュー戦となりますが、日に日に動きも良くなってきています。だんだんチームになってきている印象です。まずはペナルティなく、しっかりと完走できるように、チーム一丸となって頑張ります」

決勝

 決勝レースのスタートは土曜日の15時。これに先駆けて9時30分からウォームアップ走行が行われ、スタート担当の山野から走行を開始。トップタイム2分6秒665を記した後、交代した金井は1周だけ走って、チェッカーを待たずに走行を終了。仕上がり良好を存分に感じさせた。注目のスタートもそつなく決めて、山野はポジションキープからレースを開始した。

 だが、7周目を終えようという頃、『OHLINS Roadser NATS』がスローダウンとのアナウンスが!

 13コーナーで突然、舵が効かなくなったのだ。低速コーナーでの発生は不幸中の幸い、思うように曲がらぬマシンが、なんとかピットに戻ったのは、スタートからわずか18分後。原因はステアリングラックの損傷だった。修復には約1時間を要し、早くも絶望的な遅れを抱えてしまう。復帰後も山野がドライブし、ほぼ3時間経過した55周目に金井と、最初のドライバーチェンジを行った。日が沈むと若手ドライバーたちが活躍した。88周目から石井が、132周目からは野島が、そして176周目からは南澤が走行を担当。その先も同様のシフトが採られ、218周目からは再び石井が、260周目から野島が淡々と周回を重ねていた。

 しかし、この頃からオーバーヒート症状が現れ、徐々にエンジンがパンチを欠いていく。そこで298周目にピットに戻し、ボンネットを開けてみると、冷却水漏れが発覚。南澤がピットを離れるまでにほぼ25分を要す……。2スティント担当した後、353周目からは石井の番。ようやくナイトセッションは終了すると、サーキット上空には青空が広がっていた。若手の走行はそのまま続いていく。

 466周目から、金井の番に。ここからなんとかポイント圏内に戻すことが期待されたものの、わずか12周でピットに戻ってきた。今度はミッショントラブル。リタイアも検討されたが、チームはレース続行を決め、約1時間半かけてミッションを交換。残りおよそ3時間は、すべて山野が走行することとなった。本来ならば猛チャージが披露されたはずだが、周回数が大きく離されていたことから順位を上げることはできない。それでも激走を重ねる姿に、若手ドライバー、そして学生たちにも響くところがあったはずだ。高まった意識は間違いなく今後の糧となる。

 519周目に最後のピットストップを終え、最終的に『OHLINS Roadser NATS』は555周を走破。トップとは72周遅れの12位で、得られたのは完走ポイントの1ポイントだけ。これが『されど1ポイント』となることを望みたい。

 続くシリーズ第3戦は7月9〜10日に、スポーツランドSUGOで開催される。2グループに分けられた3時間レースは、スピードアップが進む現在のS耐においては、まるでスプリントを思わせるような戦いになるだろう。『OHLINS Roadser NATS』の大逆襲をご期待いただきたい。

山野哲也
「いろいろなことが一気に起きてしまった24時間でした。でも今後毎戦1つずつトラブルが起きるよりも今回のレースで全部発生するほうがいい。そういう意味では膿を出し切ったというところでしょうか。次の大会にはより強靭な車を作り上げる必要性があります。初めてのレースをこなした新しい学生たちの気持ちはグッと引き締まったと思いますし、すでにSUGOに向けて動き始めています。今回はリセット。次からチャンピオンシップを意識して戦っていきます」

金井亮忠
「今回は不運が続いてしまいました。万全に準備してきたつもりでもこういうことが起きてしまう。それがレースの難しいところでもあり、やりがいでもあるのかなと思います。もう一度気を取り直し、しっかりと車を仕上げて、次また勝てるように頑張っていきたいと思います」

野島俊哉
「今日のレースは若手3人で夜は回そうって、最初のトラブルが起きて、3人が知った時にもう、『夜は僕ら3人で行って、ちょっとでも前との差を縮めよう』という意識がありました。それなりに、それぞれいい走りができたんじゃないかなっていうのはあるんですけども……。その後も車両トラブルが何度も起きて、頑張って稼いだマージンも、むしろマイナスになっちゃったみたいなこともあったので、正直悔いは残る感じにはなっちゃったんですが。これも次戦に向けて糧にして、頑張っていきたいと思います」

石井達也
「僕は去年のSUGO以来ですが、今回は24時間なので、全然違いますね。いろいろ大小トラブルはあったんですけど、結果こうやって完走できたのは良かったと思います。ドライバーもそうですけど、メカニック、監督、関係者の皆さんのご協力あっての結果だと思っています。夜は若手3人で回して、ひとりだいたい100周ぐらい乗って、いろいろ24時間ならのでは難しいところもありましたけど完走できて、まずは良かったと思っています。本当にこの富士24時間でしかできない経験だと思うので、個人的にも楽しめましたし、すごく良かったです」

南澤拓実
「初めて今回、S耐に参加させていただきました。ドライバー的に言えば、車をうまく運べて良かったと思います。ただ、チームとしてはトラブルがいくつか起きてしまって、しょうがないとは思うんですが、もったいない結果になってしまったので、そのへんを改善して皆さんといい結果が出せるように、努力していきたいと思います。走りに関しては自信があったので、若手の3人でいろいろ話しながら走れたので、今後につながればいいな、と思います」

猪爪俊之監督
「3年目の今年は、正直優勝を狙っていたけど、まさかの序盤からトラブルで1時間ストップ。今までトラブルは予選前に出尽くして、いい流れだよねって言っていたのに、今回はスタートして18分でストップだから残念以外言葉にならない。その次は水漏れ、最後とどめはミッションブロー。NATSの学生達も初めてのレースでトラブルてんこ盛りだったから大変だったと思うけど、この経験を生かして次戦のSUGOで必ずリベンジします」


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