ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第9回目をお届けします。
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■7位入賞は収穫も、マグヌッセンはリスタートに課題
大波乱の展開になったアゼルバイジャンGPですが、今回はレースを中心に振り返りたいと思います。
まず、12番グリッドからスタートしたケビン(マグヌッセン)は、直後のターン1で(ニコ)ヒュルケンベルグにかわされてしまいました。本人も「コンサバティブにいきすぎた……」と反省していましたが、その後もアンダーステアに苦しみ、後続からつつかれる状態でした。11周目にセーフティカーが導入されたタイミングでピットインしてソフトタイヤに交換。あとは、ゴールまで走り切るというシンプルな作戦でした。
それから、セーフティカー→リスタートという展開が何度か繰り返されましたが、ケビンは毎回リスタートがあまり良くありませんでした。最初のリスタートでは(ダニエル)リカルドに一発でかわされましたし、その後のリスタートでも、ポジションこそ失わなかったですけど、前方のマシンにプレッシャーをかけられず、逆に後方のマシンからプレッシャーをかけられていました。本人にも伝えましたが、これは早急に改善しないといけない問題です。
反対に、レースで良かったのは、25周目にケビンが2台同時にオーバーテイクしたシーンです。ダンパーのトラブルでペースが上がらない(フェリペ)マッサをターン1でヒュルケンベルグが抜きにいったところで、ケビンは綺麗にインサイドに入り、2台をまとめて抜き去りました。ガレージでも大盛り上がりでしたし(笑)、よくやってくれたくれました。
その後のラップタイムも良く、一時は3番手を走行していましたが、後続の(エステバン)オコン、(バルテリ)ボッタス、(セバスチャン)ベッテル、(ルイス)ハミルトンに対しては、マシンの速さ的に抑えることは無理だと分かっていたので、この4台に抜かれて7位になったのはしょうがありません。逆に戦闘力のなかったバクーで大混乱のなか、しっかりと走り、生き残って7位になったというのは大きな収穫です。
今回の反省点としては、バクーに持ち込んだミディアムダウンフォースの空力パッケージの効率が良くなかったことですね。トップスピードに関しては最終的にまずまずの数字まで到達しましたが、そこにいくために削らなければいけなかったダウンフォースの量が半端ではなかったので……。
それに加え、タイヤが硬く、低ミューの路面だったことも苦戦した要因のひとつです。勿論、タイヤと路面の問題はみんな同じで、だからFP2ではあれほど黄旗が出まくりました。ただ、この状況でうちのクルマの弱いところがもろに出てしまいました。しかし、ハッキリと弱いところが判ったのは、それはそれで良かったです。