2020年F1第15戦バーレーンGPでは、熱田護カメラマンが再び現地に入りました。今回はロマン・グロージャン(ハース)のクラッシュが大きな話題になりましたが、その一方で思わぬ出会いがありました。そしてもちろん、F1を目指す日本人の姿も。そんなバーレーンの様子を熱田カメラマンが歩き、見て、感じて撮った写真と一緒に紹介します。
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F1のスタートは、グランドスタンドを背景に撮りたかったんです。
スタンドにはたくさんのお客さんがいます。
上のスタートを撮影した場所は、マーシャルポストのすぐ脇でした。
スタート前の時間に、マーシャルさんにお客さんについて聞いてみたんです。
腕にしているサポーターには、感謝のメッセージが書かれています。
グランドスタンドに無料で招待されているのは、世界中で猛威を振るっているコロナウイルスへの対策で仕事をした人々でした。
医療、警察、空港などに勤めている人達だそうです。
「私たち、バーレーンのヒーローたちなんだよ!」とマーシャルさん。
日本でも、例えばGTレースなどに招待とかいいのではないでしょうか?
スタート直後、場所を移動していたら、遠くに火の手が上がっていて黒煙が上がっていました。
僕は、テロが起こったのかと思いました。
数年前に、F1を標的にした騒ぎがあったので、咄嗟にそう思ってしまいました。
とにかく、その方向に向け走りました。
移動する間に火は消し止められていて、最初に見えたのが赤いリヤウイング。
クラッシュだったんだと……理解しました。
あんなに大きな火の手が上がっているのをみたことがなかったので、この瞬間、去年のユベール選手の事故と重なって一瞬にして重い気持ちになり、近くにいた知り合いのカメラマンに、ドライバーはどうなったのか聞くと、グロージャン選手は歩いて救急車に乗ったよとの事。
ものすごく、ホッとしました。
若干の涙目になったりして。
近くに行ってみると、焼け残ったモノコック。
ガードレールを突き抜けて、満タンのガソリンタンクが壊れ、引火したんでしょう。
あとで、動画を見るとグロージャン選手が炎の中から立ち上がるシーンがありますが、ヘイローとガードレールの隙間がこのようにあったから出られたんですね。
車体がガードレールに当たった角度とグロージャン選手の意識があって自ら脱出できたことが、不幸中の幸いであったと思います。
ガードレールを突き抜けて横たわるモノコックの姿に、助かったグロージャン選手の無事が奇跡に思えます。
本当に良かった。
モータースポーツに、このような事故があるのは、どうしても避けられない事です。
でも、選手の命はもちろん、怪我をしないように過去の経験から、様々な安全対策を講じてきたことが今回の軽い火傷のみの結果を生んだことは間違いありません。
少し移動してレッカーに移動する途中の姿。
ヘイローそのものにヒビがありますが、衝撃によるものなのか火災によるものなのかはわかりません。モノコックの強度も安全に大きく寄与したのは間違いありません。
メディカルカーに乗っていた人の的確な動き、消火活動に従事したマーシャルさん達に感謝。
そして、幸運をもたらしてくれた神様に感謝です。