2017年5月、第101回インディ500を制した佐藤琢磨。今年は勝てるという確信を与えてくれた、ひとつの要素に「エアロキット」がある。この開発には日本の本田技術研究所が深く関わっていた。
インディカーは2012年からシャシーとエンジンを一新。エンジンマニュファクチャラーがエアロキットを開発できるようになった。エアロキットは、ロードコース/ストリート/ショートオーバル用とスーパースピードウェイ用の2種類。
ホンダはレースと量産車の空力開発を同じ場所で行なっている、世界でも珍しい自動車メーカーであり、エアロキットの開発には打ってつけの環境が整っている。本田技術研究所四輪R&Dセンターで開発グループを率いる小川厚エンジニアは、ホンダ第3期F1参戦時代のメンバーを集め、開発に取りかかった。これが2010年の話である。
だが、その後インディカーがエンジンマニュファクチャラーによるエアロキットの導入を先送りにしたこともあり、本田技術研究所による開発は、いったんストップとなってしまった。
ようやく2015年に導入されたエアロキットは、ニック・ワース率いるワース・リサーチが開発したもので、ホンダ勢はシボレー勢に対して大きな差をつけられていた。この年の5月ごろ、アメリカの開発拠点であるHPDから、本田技術研究所に「助けてほしい」という依頼が入った──。
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