【肯定派】
「eスポーツの世界は成長していき、単なるビデオゲームの域を脱していることを多くの人々に納得させつつ、現実により近づいていくだろう」
「いまはバーチャルの世界を通じて、現実世界に新たなファンを取り込むことができる」
「成績次第で誰にでも現実の世界でプロのF1チームの一員になるチャンスがあり、人生が一変するかもしれない」
「トップレベルのシムレーシングは本物のレースと同じくらいコンペティティブである」
【否定派】
「eスポーツはモーターレーシングの将来の姿か? そんな質問を耳にしただけで、私は気分が悪くなる」
「本当のスポーツとは、やはり世界の各地で開かれているリアルなイベントなのだ」
「バーチャルレースでは得られないいくつかのファクターがあるから、リアルなレースでアドレナリンの大量放出が生じる」
「バーチャルレースは、自分でプレイしたり、あるいは友人たちと競い合って楽しむものだ」
「クオリティは高いが、観ていて楽しめるものになっているかというとそうではない」
【中立派】
「サーキットで感じる音、匂い、風、観客席から沸き立つ感動や興奮はコンピューターディスプレイからは伝わってこない。しかし、現代のシミュレーターに息づくテクノロジーと精度の高さには文句の付けどころがない」
「バーチャルレースではプレイヤーが安易に限界を超えてしまいがちだが、それは意識と運用次第で変えることができる」
マシンの挙動、描写されるマシンやサーキット、背景などグラフィックのリアルさなどは、バーチャルも現実世界にどんどんと近づいている。とはいえ、まだバーチャルと現実世界には埋めがたい差があるのも事実で、だからこそバーチャルはリアルには及ばないという意見も出てくる。
一方でレースデビューするのに必要な費用が少ない、自宅にいながらプレイできる、年齢・性別・国籍を問わずに参加できるなど、バーチャルがリアルにはない魅力を備えていることも事実だ。
またリアルのレースでは、天候やマシン性能、チーム力などさまざまな要因がレースの結果に影響をおよぼす。それがレースをさらにおもしろくする要素だが、トップカテゴリーになればなるほど、純粋なドライバー自身の腕だけを見ることは難しくなっていく。
一方、バーチャルレースではマシンの性能は全車共通。車両による個体差のようなものも生まれない。そのため純粋なドライバー/プレイヤーの腕が見えやすいという側面がある。そういう視点で見てみれば、バーチャルレースも楽しめるかもしれない。
今回は不測の事態で現実世界でのレースが開催できなくなったこともあり、バーチャルレースが脚光を浴びる形となった。このままバーチャルレースの盛り上がりが一過性のものとなるのか、それともこの期間にさらなる成熟を重ね、“もうひとつのモータースポーツ”としてのポジションを強固にするのか、それには、これまで以上にファンの関心を集められる要素を用意できるかがカギを握る。