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海外レース他 ニュース

投稿日: 2021.03.25 21:00
更新日: 2021.03.26 11:58

佐藤万璃音が語るFIA-F2トライデント残留に至った経緯「納得できる体制を作り上げた」【独占インタビュー】

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海外レース他 | 佐藤万璃音が語るFIA-F2トライデント残留に至った経緯「納得できる体制を作り上げた」【独占インタビュー】

 2020年シーズンに続き、2021年シーズンもトライデントからFIA-F2選手権に参戦する佐藤万璃音。F1世界選手権のサポートレースとして3月26日から始まる開幕大会の直前に、バーレーン・マナマ滞在中の彼にトライデント残留に至った経緯やプレシーズンテストの手応えを聞いた。

* * * * * * * * *

──バーレーンにずっと居るのですか?
「3月8日から始まったプレシーズンテスト前からなので、けっこう居ますね。ホテルの砂浜で毎日のようにビーチバレーをやっています。でも、もうお腹いっぱいになってきました(汗)。バーレーン入国の際にはPCR検査を受けましたけれど、陰性だったらホテルで自主隔離する必要もなく、あちこちへ出歩けます。レストランは探検しまくっていますし、日本料理屋さんだけでなく韓国料理屋さんも発見しました。ただ、ホテルでの朝食はレストランではなく、毎日前日に“何を食べたいか?”と訊かれて、それを部屋へ持ってきてもらいます」

「ロックダウンされまくってお店がまったく開いていないヨーロッパに居るより、バーレーンに居るほうが良いですね。レストランはもちろんショッピングモールもここは開いています。もちろん、出歩いている人はみんなマスクしています。もともと、プレシーズンテストと開幕大会の間はいったんイタリアへ戻る予定でしたが、それを取り止めたくらいに快適です」

──さて、トライデント残留に至った経緯は?
「まず、自動車メーカーやF1チームの育成ドライバーを抱えているF2チームとは、交渉そのものが難しい。であれば、まだ伸び代のあるトライデントで今年も戦おうという結論に至りました。ただ、僕らも馬鹿では無いので、昨年と同じ状況での継続とはしませんでした。それなりに見込みがある、納得できる体制を作り上げました」

「具体的にはエンジニアリング面での変更です。トラック(レース)エンジニアやデータエンジニアは昨年と変わりませんが、エンジニアリング面でプラスアルファとなりそうな体制作りができました。現場に足を運ぶわけではありませんが、僕が信頼している新たな人材の登用をトライデント側も受け入れてくれたので、チーム残留を決めたと言っても良いでしょう」

「可能性としては、トライデント以外にもチャロウズやMPモータースポーツなども選択肢としてはありました。ただ、昨年何回か勝ったMPが本当に素晴らしいチームで今季も好調かと考えると、確信は持てませんよね? だったら、いまあるものを慣れたチームで伸ばしていくほうが良いのではないか? と考えたわけです」

「今季のモノコックは、昨季途中で投入した新品を継続して使います。それにより劇的に状況が改善したとは感じないけれど、もちろん悪くはなっていません。モノコックの入れ替えは、不安材料をひとつずつ消していく目的からでした。エンジンに関しては、プレシーズンテストで新たに搭載したものを今季の開幕大会でも使います。もちろんほかのチーム/ドライバーも同じ条件です。僕に割り当てられたエンジンは、とくに昨季と変わりませんね」

──プレシーズンテストを振り返ってください。
「初日は路面がダスティだったので、午前のセッション後半はトラベルではない中古のプライムタイヤでシステムチェックしました。その後は使えるタイヤも無いので、新品のプライムタイヤでそれなりのアタックをしました。午後のセッションは中古のプライムタイヤでロングラン。とにかく初日はクルマに問題が無いかどうかを確認する作業に終始しました」

「2日目午前のセッションは、ふたつのセットアップを比較しました。ひとつはチームがもともとバーレーン向けとしていたセットアップ、もうひとつはバーレーン向けではないセットアップ。ドライバーふたりが分担し、僕は後者を任されました。それぞれのドライバーが、新品のプライムタイヤと新品のオプションタイヤで1回ずつアタックして、違いを比較しました。午後のセッションは中古タイヤでのレースランだけでした」

「こうした仕事の振り分けも、チームメイトのベント・ビスカールはまだF2経験が少ないからベースセットアップで走り込み、僕が新しいセットアップでテストするという意味で理にかなっています。僕が担当したセットアップは、チームとして確信できるものではなかったし、僕もクリーンなラップを取れなかった。ただ、クルマの動きなどで確認できる部分はあったので、決して無駄ではありませんでした」

「3日目午前のセッションでも新品のオプションタイヤを投入しました。じつのところ、僕のクルマは2日目にギアボックスの問題を抱えていて、このセッションへはチェック走行から入ったので、新品のオプションタイヤを履くタイミングがほかのドライバーとはズレていました。僅かなフラットスポットを作ってしまったこともあり、また1周しかタイムアタックの機会が無いタイヤだけにクリーンなラップも取れず、満足できるタイムは記録できませんでした」

「とはいえ、トラフィックでロスした以外は悪くなかったし、パフォーマンスランとしてはまとまっていて酷いものではなかったと思います。1分41秒台突入は難しかったかもしれませんが、1分42秒台前半は余裕で見えている感じでした」

──タイヤについてもう少し詳しく教えてください。
「今季は1大会でプライムタイヤを4セット、オプションタイヤを2セット使えます。オプションタイヤは変わりませんが、プライムタイヤが大きく変わっている印象があります。コンストラクションは変わっていないと思いますが、コンパウンドが変わっています。よりハード方向になりました。僕は昨季までのタイヤも経験しているので、プレシーズンテストではピレリのタイヤエンジニアからセッションごとにコメントを求められました」

「プライムタイヤ全般の印象としては、デグラデーションが緩やかになっています。もっとも、その部分で大幅に改善されているとは言い難いですね。いっぽう昨季はフロントのグレイニングが多かった。その対策をピレリは施してきたようです。グレイニングに関しては昨季よりもかなり改善されたと感じます」

「とはいえ、一発のタイムを出すのは昨季よりも難しくなっています。また、プライムタイヤとオプションタイヤの性能差が広がったので、練習走行から公式予選の間に施すセットアップの調整が以前よりも難しくなりそうです」

──予選はともかく決勝の走り方が変わりそうですか?
「そうですね。ただ、レースフォーマットの変更で、予選が従来よりも大事になりました。そこでトップ10に入っていれば、最初のスプリントレースで沈んでも週末を通してチャンスはあります。逆に予選でトップ10に入れなかったら、週末を通して中段以降からスタートしなくてはいけません」

「個人的には予選を2回やって決勝も2回やってというほうが良いですね。普通のレースっぽいじゃないですか? そう思っているのはたぶん僕だけではないと思います。だって、せっかく予選を戦っても、1回目のスプリントレースからトップ10のリバースグリッドスタートですよ。しかも、2回目のスプリントレースのスターティンググリッドは1回目のスプリントレースの結果を受けてのリバースグリッドスタート。変な感じですよね」

今季もトライデントからFIA-F2に参戦する佐藤万璃音
今季もトライデントからFIA-F2に参戦する佐藤万璃音

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