レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

海外レース他 ニュース

投稿日: 2021.06.18 18:07
更新日: 2021.06.18 18:08

佐藤琢磨が振り返るインディ500。終盤の勝負どころに向けて「準備を進めることができていた」

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


海外レース他 | 佐藤琢磨が振り返るインディ500。終盤の勝負どころに向けて「準備を進めることができていた」

 5月30日にアメリカのインディアナポリス・モータースピードウェイで開催された第105回インディアナポリス500マイルレース。2017年と2020年に次ぐ自身3度目のインディ500制覇を目指した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選15番手からスタートし、徐々に順位を上げトップを走行するなど2連覇も見えている状況だった。

 しかし、レース最終盤となる194周目で燃料が足りずにまさかのピットイン。インディ500連覇は叶わず、最終的に14位でフィニッシュとなった。現在発売中のauto sport No.1555では、そんな第105回インディ500を戦った琢磨にインタビューを実施し、このページでは前半部分をお届けする。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

──今年のインディ500では新エアロパッケージが導入され、燃費が重要なファクターになっていました。そこはどんな感じでしたか。

佐藤琢磨(以下、琢磨):パワーベストで先頭を走ると28~29周しか持たなくて、燃費も考えつつトップを走れるのが30周という計算でした。新エアロではダウンフォースもドラッグも大きい。去年は逃げ切りが可能だったけど、今年はそれを許さなくなっていた。それでも、常に燃費を意識して、後半から終盤でフレキシブルに戦略の幅を持たせて戦う重要性は昨年と変わりません。

──最初のイエローが34周目。15番手スタートの琢磨選手は燃費セーブに努め、そのイエロー中にピットインして8番手に上がった。走行ポジションでも燃費は変わってきますよね?

琢磨:先頭ではすごく悪い。3番手ぐらいまでも空気抵抗が大きくて燃費が悪く、4番手ぐらいから効率が良くなっていく感じでした。5番手以降の差は少ないと思いますが、6~10番手あたりが同じ車間で走っているとしたら、空気抵抗が少ないぶん、10番手のほうが燃費はいい。ただ、ドラッグが減るぶん、ダウンフォースも少ないからマシンは滑り、タイヤの摩耗が激しくなる。僕は1回目のピット後から8番手を走り続けることができ、100周目あたりまでにトップ5でレースを進めるという構想に近づいていました。

第105回インディアナポリス500マイルレースのスタート
第105回インディアナポリス500マイルレースのスタート

──中盤、順位を上げようと積極的に動きはしなかったのですか?

琢磨:燃料とタイヤを使う気になれば、ひとつかふたつ上げることができたと思います。でも、リスクを負いたくなかった。燃料を使ってしまうし、ハンドリングもまだそういうレベルまで達していなかったので、無理はしませんでした。これはダメだなと思ったときには、自分のポジションをホールドして機会を待とうと考えていました。

──レース中のマシン調整も順調に見えていました。

琢磨:はい。自分の前を走っていたクルマが次々とピットに入り、僕は151周目にラップリーダーとなった。その後の6周をその時期の誰よりも速いスピードで走り、自己ベストを含む224mph台を連続で記録していました。このスティントではイエローも入れて41周も走った。

 223~224mphが出ていたラップでは当然アクセルをかなり踏んでいましたが、このときはパワー重視ではあるものの、じつはまだリーンミクスチャーのままで、パワーベストではありませんでした。パワーベストなら226mphあたりも出ていたかもしれません。224mphに留めたのは、スティントをさらに伸ばそうと考えたからです。

 実際には158周まで伸ばせるセーブができていたけど、集団に追いつき、219mphに落ちた。フレッシュタイヤ組より速いペースだったので、オーバーカットを決めるためにピットインを早めました。これでトップはスコット・ディクソンになったけど、実質的にはアレックス・パロウが先頭。僕は彼の2.5秒後ろ、6番手で復帰していました。

佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)

──戦いながら、残り2スティントはどうなると想定していましたか?

琢磨:自分の157周目からのスティントは、ニュータイヤでアンダーステアが予想以上に強かった。レース終盤のコンディション変化なども考慮してセッティング調整をやってきていたのですが、もう少しアグレシッブに行ってもいいかなと思いました。僕は最初のピットから毎回、フロントウイングをハーフターンずつ調整してきていました。そうして、集団のなかではこれくらいアンダーが消えていくというのを感じていた。

 ただ、ずっと集団のなかにいたので、単独走行時にどうなるのか、あるいは30周走った後の挙動がどうなるのかは、150周目まで分からなかった。そこで、153、154周目にプッシュし、224mphが出た。その時点でマシンはうまく仕上げてくることができていたんです。それに、今回は一度も危うい場面はありませんでした。

 唯一、外からはミスっぽく見えたかもしれないのは、125周目のリスタート後。ライアン・ハンター-レイの後ろにつけて入ったターン1で膨らみ、コルトン・ハータに抜かれたところです。ただ、あれはあれで良かった。7番手でのリスタートで、順当にレーシングラインを走って前を行くライアンについていくことは簡単にできましたが、その後またあるかもしれないリスタートに備え、ターン1で大外から抜いていく練習をしておこうとアウトに行きました。

 外側にはみ出したら、グリップが全然ない。もともと、後ろのハータとの距離が結構ある状況だったから、どれぐらいのクロージングスピード(スリップストリームで前車に吸い寄せられるときのスピード)が得られるのかも見たくて、試してみたんです。それが全然ダメで、アクセルを抜き、ポジションはひとつ落とすけど、安全に列に戻ることにしました。ここでリスタート時に外側はダメだということが分かった。その意味でも、終盤の勝負どころに向けた準備を進めることができていました。

194周目にピットインする佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)
194周目にピットインする佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)
レース後、優勝したエリオ・カストロネベスを祝福する佐藤琢磨
レース後、優勝したエリオ・カストロネベスを祝福する佐藤琢磨
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ここまでインタビューの前半部分をお届けしたが、現在発売中のauto sport No.1555では“勝負どころ”となった終盤2スティントの状況についても琢磨自身が詳しく状況を説明している。チームに対する琢磨の想いなども語っているインタビューの後半部分は、ぜひ本誌を読んで頂きたい。

auto sport No.1555
auto sport No.1555


関連のニュース