12月10日、FIA-F2に参戦するトライデントとBuzz & Co Groupは、12月16〜18日にアブダビのヤス・マリーナで開催されるFIA-F2のポストシーズンテストで、2021年に全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権でチャンピオンを獲得した名取鉄平を起用すると発表した。新たな舞台でのテストに臨む名取に、テストへの意気込みを聞いた。
2018年にFIA-F4でランキング4位を獲得した名取は、2019年にF1を目指し渡欧。FIA-F3、ユーロフォーミュラ・オープンにカーリンから参戦した。ただ、2020年には日本に戻り1年間全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦し、「1年でヨーロッパに戻る」目標で挑んだものの、その年限りでホンダの育成枠からは外れ、自らチャンスを切り拓くべく、2年目のライツに向け、B-MAX RACING TEAMのシートを獲得した。
「今年スーパーフォーミュラ・ライツに乗るときには、チャンピオンを獲ってニッサンさんやトヨタさんから声がかかれば良いな……としか思っていなかった」という名取の2021年シーズン、開幕当初の目標はライツでの“全勝”だった。
当然ながら、チャンピオンを争うことになったジュリアーノ・アレジや佐藤蓮などライバルたちも強力で、そこまでうまくいくものではなかったが、チャンピオン争いはリード。しかしシーズン終盤、速さを追求し最終大会前にチャンピオンを決めようとした名取は、第5大会で惨憺たる結果に終わる。
それでも、第6大会のもてぎで接触という苦い結末ながらチャンピオンを手中に収めた名取は、自宅への帰路サービスエリアに立ち寄った。そこで偶然出くわしたのが、Buzz & Co Groupの長谷川大祐代表だった。以前から良く知る間柄だが、名取と長谷川代表の自宅が近いことから、長谷川代表は社用車から名取のクルマに乗り換え、その中で「もし再度ヨーロッパに行くならどうしたいか？」と名取に聞いた。
その中で、名取から以前渡欧したときとは比べものにならないほどのしっかりとした考え方を聞いたことで、長谷川代表は名取にチャンスを与えたいという考えをもつ。他にも候補がいたなかで、最終的に今回のアブダビテストのチャンスが名取に与えられることになった。
「僕はもう即決でしたね」とテストの誘いに、名取はふたつ返事で応えたという。
■ライツのチャンピオンとして「代表するつもりで」
こうしてテストのチャンスを得た名取だが、「正直、これほど早く戻れるとは思わなかったです。海外に行くのもお金がかかりますし、自分の力だけでは行けないので、驚きはありながらも、戻るチャンスが来るとは思っていなかったです」とテストの機会を喜びながらも、驚きを隠せなかった様子だ。
すでにチームとも会い、「イタリア人はすごく明るいですね（笑）。トレーナーも、僕を速くしたいという思いがあふれてきていて、このチームで活躍したいという思いがどんどん強くなっています」と好感触を抱いているという。ヤス・マリーナは初体験だが、すでにシミュレーターも済ませ「行く準備は整えています」と名取。
そしてFIA-F2の先には、もちろんF1というターゲットがある。一度は日本に戻ったことで遠くなった目標だが、もしテストで好パフォーマンスをみせレースシートをつかめば、ふたたび目標を眼前におくことになる。やはりF1はふたたび意識するのか？ との問いに「もちろんです」と名取。
「例を挙げると、角田（裕毅）がいますよね。彼はもちろん速いですし、順調にステップアップしてF1まで上がりました。でも、僕は一度失敗している身じゃないですか。でも、一度は失敗してもF2からF1まで上がるストーリーが書ける。僕が見本になれるかどうかは分かりませんが（笑）、若いドライバーたちにとっても良い例になりたいという思いもあります」
当然、レースシートをつかめるかどうかは、アブダビテストでの名取のパフォーマンス次第だ。しかし「今年はスーパーフォーミュラ・ライツのチャンピオンを獲りましたが、アレジ選手が良いターゲットになると思うんです。トライデントで乗っていましたし、彼に勝ってチャンピオンを獲ることができた。テストではたくさんの猛者がいるなかで、自分がどれだけできるのかは未知数ですが、どれほどの力があるのか確かめるのに良い機会ですし、もし足りなければもっと努力をすれば良いだけなので、今はワクワクしかしていないです」とテストに向けて期待を高めた。
「スーパーフォーミュラ・ライツのチャンピオンがどこまでできるのか、皆さんに観て欲しいと思いますし、これで活躍できれば、ライツのレベルを証明できると思います。日本代表……ではありませんが、代表して頑張るつもりでいきたいです」
名取は「今年ライツでチャンピオンを獲った僕がFIA-F2のテストに臨むということで、皆さんも期待していただいていると思うんです。その期待に応えられるようにテストで頑張っていきたいと思います」と笑顔をみせ、アブダビへ旅立った。
