4月29日、2023年FIA F2第4戦バクーのスプリントレース(決勝レース1)が、アゼルバイジャンのバクー市街地サーキットで開催され、9番手スタートのオリバー・ベアマン(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)が初優勝を飾った。
レッドブル&ホンダ育成の岩佐歩夢(ダムス)はマシントラブルにより、FIA F2参戦2年目にして初のリタイアに終わった。ただ、レース終盤の多重アクシデントによりランキング上位のライバル勢のほとんどがリタイアに終わったことで、岩佐はランキングトップを守っている。
第4戦決勝レース1のグリッドは、28日に行われた予選トップ10のリバースグリッドで決定され、予選で10番手タイムを記録したリチャード・フェルシュフォー(ファン・アメルスフォールト・レーシング)がポールシッターとなった。
フロントロウ2番手にレッドブル育成のゼイン・マロニー(ロダン・カーリン)、セカンドロウ3番手にアルピーヌ育成のビクトール・マルタンス(ARTグランプリ)、4番手にレッドブル育成のジャック・クロフォード(ハイテック・パルスエイト)が続いた。
予選で3番手タイムを記録し、8番グリッドに着くはずだったランキング2位のテオ・プルシェール(ARTグランプリ)は、予選中に他車の走路を妨害したとして3グリッド降格ペナルティを受けることとなり11番グリッドに。そしてランキングトップの岩佐は17番グリッドから巻き返しにかけた。
直前の計測で気温23度、路面温度48度、タイヤ交換義務のない21周の決勝レース1は、現地時間15時(日本時間20時)からのフォーメーションラップを経てスタートを迎えた。抜群の蹴り出しを見せたのは3番手マルタンス。フェルシュフォー、マロニーの横に並びかけるもここで3台はわずかに接触。
フェルシュフォーがホールショットを守るも、ターン1でバランスを崩しマロニーの右リヤタイヤとフェルシュフォーのフロントウイングが接触。その直後マロニーの右リヤタイヤがパンク。さらにはフロントにダメージを受けたフェルシュフォーもマシンを止めることに。
混乱の多いオープニングラップでトップ2台が優勝戦線を離れるなか、トップに浮上したのは6番手スタートのデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)だった。ハウガー以下、2番手マルタンス、3番手に5番手スタートのユアン・ダルバラ(MPモータースポーツ)、4番手フレデリック・ベスティ(プレマ・レーシング)、5番手にクロフォードというオーダーに。
そんななか、ランキング4位のラルフ・ボシュング(カンポス・レーシング)がトップ10圏内を走行中の3周目、ターン11イン側のウォールにヒットし、立ち上がりのエスケープでマシンを止める。これでセーフティカー(SC)が導入された。その間にタイヤを交換しコースに復帰したマロニーはフロントサスペンションにダメージがあったため、ふたたびピットインを敢行している。
SC導入時点で岩佐は17番手。前方の車両3台がリタイアするも、アイザック・ハジャル(ハイテック・パルスエイト)、ロイ・ニッサニー(PHMレーシング・バイ・チャロウズ)、クレモン・ノバラック(トライデント)に先行され、スタートポジションから変わらず。
レースは6周目に再開。ハウガーを先頭にクリーンなリスタートを見せる。7周目には4番手ベスティがDRSも活用しダルバラを攻め立てる。ハウガー、マルタンスのトップ2が逃げる一方、3番手ダルバラを先頭に中段勢は数珠繋ぎとなる。8周目には予選最速タイムをマークしたベアマンがこの時点でのファステストを更新し、5番手ベスティの背後に接近する。
10周目、ターン3でベスティがダルバラを攻略し3番手に浮上する。11周目のターン1ではベアマンがダルバラを攻略。プレマ勢が3-4でトップ2台を追う展開となる。一方、ここで17番手の岩佐のマシンがわずかに白煙もあげながらスローダウン。そのままピットに入り、岩佐はここでレースを終えることとなった。
レースが後半戦に差し掛かった13周目、ハウガーは0.6秒後ろにマルタンス、2秒後方にベスティを従えてレースをリード。マルタンスはDRSを使用するも、ハウガーとの間合いはなかなか縮まらない。そんななか、14周目のターン15でニッサニーがクラッシュ。これで15周目に2度目のSC導入となり、各車のギャップは縮まる。
ニッサニーのマシン回収とバリヤ修復・交換によりSC導入は長時間に及んだ。なお、19番手走行中のマロニーはここでピットに入り、レースを終えることを選択した。
レースは19周目、残り3周という状況で再開を迎えた。ただ、このリスタートでまさかの大波乱が巻き起こる。まず、トップのハウガーと2番手のマルタンスがターン1でオーバーシュートしクラッシュ。
その後方で行き場を失ったダルバラ、プルシェール、アーサー・ルクレール(ダムス)、また後方でスピンを喫したジャック・ドゥーハン(インビクタ・ビルトゥジ・レーシング)と、リスタートのターン1で6台が一気にレースを離れることに。なお、ダルバラのマシンはマルタンスのマシンの下に潜り込む形で突っ込んだものの、ダルバラは自力でマシンを降りることが叶った。
これでトップはベスティ、2番手ベアマンとプレマ勢がワンツーに。ただ、チームメイトといえど2台は激しい戦いを続けた。セクター2でベアマンがベスティを先行しトップに浮上、するとここで3度目のSC導入が宣言される。レース終盤での多重アクシデントによるSC導入ということで、SC導入のままチェッカーが振られることとなり、10番手スタートのベアマンが初優勝。2位にベスティ、3位にクロフォードが続いた。
ドライバーズランキング上位8人のうち、決勝レース1でポイントを獲得できたのは前戦終了時点でランキング3位だったベスティのみ。そのベスティはプルシェールに並ぶ50ポイントとなったが、岩佐までは8ポイント届かず。第4戦決勝レース1を終えた時点では岩佐がランキングトップを死守している状況だ。
続く、フィーチャーレース(決勝レース2)は4月30日現地時間11時25分(日本時間16時25分)から、タイヤ交換義務を有する周回数29周で争われる。
■2023年FIA F2第4戦バクー レース1正式結果
Pos. | No. | Driver | Team | Time/Gap |
---|---|---|---|---|
1 | 8 | O.ベアマン | プレマ・レーシング | 51:27.274 |
2 | 7 | F.ベスティ | プレマ・レーシング | 0.870 |
3 | 9 | J.クロフォード | ハイテック・パルスエイト | 3.090 |
4 | 24 | K.マイニ | カンポス・レーシング | 6.485 |
5 | 4 | E.フィッティパルディ | ロダン・カーリン | 7.879 |
6 | 23 | J.コレア | ファン・アメルスフォールト・レーシング | 10.405 |
7 | 21 | C.ノバラック | トライデント | 11.090 |
8 | 20 | R.スタネ | トライデント | 15.065 |
9 | 15 | A.コルデール | インビクタ・ビルトゥジ・レーシング | 16.232 |
10 | 17 | B.ベナビデス | PHMレーシング・バイ・チャロウズ | 18.140 |
11 | 10 | I.ハジャル | ハイテック・パルスエイト | 18.602 |
12 | 1 | D.ハウガー | MPモータースポーツ | DNF |
13 | 6 | V.マルタンス | ARTグランプリ | DNF |
14 | 2 | J.ダルバラ | MPモータースポーツ | DNF |
15 | 5 | T.プルシェール | ARTグランプリ | DNF |
16 | 12 | A.ルクレール | ダムス | DNF |
17 | 14 | J.ドゥーハン | インビクタ・ビルトゥジ・レーシング | DNF |
– | 16 | R.ニッサニー | PHMレーシング・バイ・チャロウズ | DNF |
– | 3 | Z.マロニー | ロダン・カーリン | DNF |
– | 11 | 岩佐歩夢 | ダムス | DNF |
– | 25 | R.ボシュング | カンポス・レーシング | DNF |
– | 22 | R.フェルシュフォー | ファン・アメルスフォールト・レーシング | DNF |
ファステストラップ:オリバー・ベアマン(プレマ・レーシング) 1分55秒796(14/21Laps)
ペナルティ:#10 アイザック・ハジャル(ハイテック・パルスエイト) 決勝結果に5秒タイムペナルティ(再スタート時にSCライン手前での追い越し)