7月1日、2023年FIA F2第8戦シュピールベルクのスプリントレース(決勝レース1)が、オーストリアのレッドブルリンクで開催され、ジャック・クロフォード(ハイテック・パルスエイト/レッドブル育成)がポール・トゥ・ウインでFIA F2初優勝を飾った。レッドブル&ホンダ育成の岩佐歩夢(ダムス)は11位となった。
第8戦決勝レース1のグリッドは、6月30日に行われた予選トップ10のリバースグリッドで決定され、クロフォードがポールシッターとなった。2番グリッドにユアン・ダルバラ(MPモータースポーツ)、3番グリッドにアーサー・ルクレール(ダムス/フェラーリ育成)、4番グリッドにアムーリ・コルデール(インビクタ・ビルトゥジ・レーシング)が続いた。
なお、このレースの直前、ベルギーのスパ・フランコルシャンで開催されたフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパの第4戦レース2で発生したアクシデントにより、MPモータースポーツから出走していた18歳のディラーノ・ファン・ト・ホフが亡くなったことが発表された。フォーメーションラップ直前のレッドブルリンクのダミーグリッドにFIAをはじめとする関係者が揃い、黙祷を捧げた。
直前から小雨が降り始めたこともあり、3番グリッドのルクレール、9番グリッドのフレデリック・ベスティ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)、16番グリッドの岩佐らがウエットタイヤを装着するなど、タイヤ選択は分かれた。なお、14番手スタートのロイ・ニッサニー(PHMレーシング・バイ・チャロウズ)はスタート直前にピットに入り、ウエットからソフトにタイヤを交換している。
気温17度、路面温度22度、タイヤ交換義務のない27周の決勝レース1は、現地時間13時45分(日本時間20時45分)からセーフティカー(SC)先導による2周のフォーメーションラップをへて、スタンディングでのスタートを迎えた。
クロフォードがホールショットを守る一方、ダルバラが出遅れターン1でルクレールが2番手に浮上。ウエットタイヤを履くルクレールはターン4でトップに浮上する。一方、ポールスタートのクロフォードはターン4でバランスを崩し、6番手にポジションを下げる。
その直後、ダルバラがターン7で単独スピン。これでセーフティカー(SC)が導入される。ただ、雨はこの時点で上がり、路面も乾きつつあったため、このSC中にウエットスタート勢が続々とピットイン。この時点で11番手までポジションを上げていた岩佐はここではコース上にステイし、6番手にポジションを上げる。
5周目にレースは再開された。ただ、ターン1立ち上がりでウエットタイヤを履き2番手につけていたリチャード・フェルシュフォー(ファン・アメルスフォールト・レーシング)が単独スピンから、ウォールにクラッシュ。これで2度目のSC導入となる。
これで6周目にトップのルクレール、5番手岩佐が同一周回でピットイン。ただ、ルクレールのタイヤ交換に時間がかかり、岩佐は割りを食うかたちに。これで、ダムス勢は2台ともにソフトタイヤへと変わったがルクレールは18番手、岩佐は20番手に後退する。
レースは8周目に再開。ふたたびクロフォードがラップリーダーに返り咲き、ファン・マヌエル・コレア(ファン・アメルスフォールト・レーシング)が2番手で続く。リスタート時はウエットを履き続けるゼイン・マロニー(ロダン・カーリン)が3番手につけていたが、ターン3〜4での攻防戦をへて、予選最速タイムをマークしたビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)が3番手に浮上する。
一方、岩佐は10周目にルクレールをパスし、16番手のテオ・プルシェール(ARTグランプリ/ザウバー育成)の背中を追う展開へと変わった。
トップのクロフォードは12周目にはコレアに1秒のリードを築く。そのコレアの背後にはマルタンスも接近。マルタンスは14周目のターン3でコレアをパスすると、1.8秒先を走るクロフォードを追うべく、この時点でのファステストを更新しながら追い上げを続ける。
また、コレアの背後にクレモン・ノバラック(トライデント)が接近。3番手コレアを先頭にノバラック、アイザック・ハジャル(ハイテック・パルスエイト)、ロマン・スタネ(トライデント)の4台が2秒以内を走るという接戦が続いた。
18周目のターン3のブレーキング勝負でノバラックが、そのターン3の立ち上がりでハジャルがコレアをパス。ノバラックが表彰台圏内に浮上する。
その直後、後方でエンツォ・フィッティパルディ(ロダン・カーリン)がクッシュ・マイニ(カンポス・レーシング)とのポジション争いの末、ターン3立ち上がりのストレートで芝生にタイヤを乗せスピン。フィッティパルディはコースサイドにマシンを止め、バーチャル・セーフティカー(VSC)が導入される。
VSC解除後、残り8周でレースは再開されたが、上位勢のポジションは変わらず、アメリカ出身の18歳、ジャック・クロフォードがFIA F2初勝利をポール・トゥ・ウインで飾った。
2位に10番手スタートのマルタンス、3位に今季初、そして通算2度目の表彰台登壇となるノバラックが続いた。岩佐はスタートでウエットタイヤを装着したことが大きく影響し、13位までポジションを上げるもポイント獲得には届かなかった。
※追記:レース1終了後、暫定3位のノバラックの21号車のリヤタイヤの内圧が、ピレリのテクニカルプレビューに規定されている制限値を下回っていたことが判明し、21号車に対し失格の裁定が下された。なお、トライデントチームはタイヤ空気圧の計算にミスがあったことを認めている。
さらに、クッシュ・マイニ(カンポス・レーシング)も20秒のタイムペナルティで後退したため、岩佐の順位は11位となった。
続く、フィーチャーレース(決勝レース2)は7月2日の現地時間9時55分(日本時間16時55分)から、タイヤ交換義務を有する周回数40周で争われる。
■2023年FIA F2第8戦シュピールベルク
レース1正式結果
Pos. | No. | Driver | Team | Time/Gap |
---|---|---|---|---|
1 | 9 | J.クロフォード | ハイテック・パルスエイト | 39:36.231 |
2 | 6 | V.マルタンス | ARTグランプリ | 2.286 |
DQ | 21 | C.ノバラック | トライデント | 3.910 |
3 | 10 | I.ハジャル | ハイテック・パルスエイト | 4.366 |
4 | 23 | J.コレア | ファン・アメルスフォールト・レーシング | 9.524 |
5 | 20 | R.スタネ | トライデント | 10.175 |
6 | 1 | D.ハウガー | MPモータースポーツ | 10.628 |
7 | 14 | J.ドゥーハン | インビクタ・ビルトゥジ・レーシング | 11.401 |
8 | 8 | O.ベアマン | プレマ・レーシング | 12.458 |
9 | 7 | F.ベスティ | プレマ・レーシング | 12.923 |
10 | 16 | R.ニッサニー | PHMレーシング・バイ・チャロウズ | 13.538 |
11 | 11 | 岩佐歩夢 | ダムス | 17.758 |
12 | 17 | B.ベナビデス | PHMレーシング・バイ・チャロウズ | 19.090 |
13 | 12 | A.ルクレール | ダムス | 20.607 |
14 | 5 | T.プルシェール | ARTグランプリ | 22.030 |
15 | 15 | A.コルデール | インビクタ・ビルトゥジ・レーシング | 22.205 |
16 | 24 | K.マイニ | カンポス・レーシング | 36.487 |
17 | 25 | R.ボシュング | カンポス・レーシング | 36.896 |
18 | 3 | Z.マロニー | ロダン・カーリン | 1:01.478 |
– | 4 | E.フィッティパルディ | ロダン・カーリン | DNF |
– | 22 | R.フェルシュフォー | ファン・アメルスフォールト・レーシング | DNF |
– | 2 | J.ダルバラ | MPモータースポーツ | DNF |
※Car.21 クレモン・ノバラック(トライデント):失格(DQ)/技術的不適合(計算ミスによりリヤタイヤの内圧が制限値以下だった)
※Car.5 テオ・プルシェール(ARTグランプリ):5秒タイムペナルティ/アンセーフリリース
※Car.24 クッシュ・マイニ(カンポス・レーシング):ドライブスルー(未消化のため20秒のタイムペナルティ)/他車をコースアウトさせた
※Car.25 ラルフ・ボシュング(カンポス・レーシング):10秒のタイムペナルティ/他車をコースアウトさせた