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スーパーフォーミュラニュース

投稿日: 2015.07.19 00:00
更新日: 2018.02.17 09:19

可夢偉の意地、石浦の怒り。定説に抗ったふたり


 現在のトップフォーミュラは“予選とスタートで8割決まる”という定説が流れて久しいが、その言葉は、現在のスーパーフォーミュラのオーバーテイクの少なさ、そしてレース展開の変化の少なさを揶揄した表現にも聞こえる。今回の第3戦富士では、予選で2番手を獲得したジョアオ-パオロ・デ・オリベイラ(LENOVO TEAM IMPUL)がスタートを決め、独走でトップチェッカーを受けたが、その勝ち方は、まさに定説のとおりだった。もちろんオリベイラの圧勝は賞賛に値するものだが、レース内容は濃厚だった。そして、オリベイラ以上に今回のレースを面白くしたのは、その定説に抗ったドライバーたちだった。

 前回優勝の石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)は今回、雨の予選でタイヤ選択に失敗して10番グリッドと低迷。ドライとなった日曜朝のフリー走行でも8番手と、回復の兆しを見せることはできなかった。レースでもスタート〜序盤と大きなチャンスがあったわけでもなかったが、10周目にターニングポイントが訪れた。8番手の石浦の前を走るアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)が早めのピット戦略を採ったのだ。

 ロッテラーはタイヤ無交換戦略でピットアウトし、順位を優先して終盤のタイヤのタレに耐える戦略を選んだ。この時点でロッテラーより後にピットに入り、タイヤを四輪交換してピット時間が長くなったドライバーのほとんどは、ピットアウト後もロッテラーに詰まる展開になる。

 石浦にとって好運だったのは、その後19周目の小林可夢偉(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)をはじめとして、石浦の前を走るドライバーが次々とタイヤ四輪交換を選択し、そのほとんどがロッテラーの後ろでコースに復帰していったことだ。ただ、石浦にとって不運もあった。「無線にトラブルがあって、チームからの無線は聞こえるんですけど、僕の声は聞こえないみたいだった」ことだ。

 この無線トラブルによって、タイヤの摩耗状況も燃料の残量も確認できないまま、ピットタイミングを引っ張らざるを得なかった。その状況を村田卓児エンジニアが振り返る。

「『タイヤがきついのなら、ストレートでイン側に寄って』と言ったら、石浦はものすごい勢いでイン側に寄ってきた(苦笑)。よっぽどキツかったんだなと。でも、その文句も無線が壊れて聞かなくて済んだのはよかった(笑)」