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ル・マン/WECニュース

投稿日: 2012.07.03 00:00
更新日: 2018.02.16 09:56

本山哲ル・マン参戦レポート「忘れられない思い出」


2012 FIA WORLD ENDURANCE CHAMPIONSHIP RD3 「Le Mans 24Hours Race」 レポート

【予選】
6月13日(水)、14日(木)
天候:晴れ時々曇り
路面:ドライ
気温:16℃
路面温度:20℃(公式予選1回目開始時)

 日曜日にセパンでのスーパーGT第3戦を終え、そのままマレーシアからフランスに向かい、旅装を解くこともそこそこに月曜日夕方に行われた車検&ドライバー登録に顔を出す……。

 本山哲にとって13年ぶりの「ル・マン24時間」チャレンジは、こうして始まった。

 時代のテクノロジーを磨く……そんな観点から、第80回目を迎えたル・マン24時間レースに今年から新たに設けられた「ガレージ#56」の特別枠で参戦する「デルタウィング・ニッサン」をミハエル・クルムとともにドライブすることになった本山は、不本意な内容に終わったセパンのレースを引きずることなくル・マンに乗り込んだ。

 そして水曜日から、いよいよ新時代に向けたチャレンジが始まった。

 最初の走行枠は、水曜の午後4時から4時間にわたって行われたフリープラクティス(公式練習)。ここで本山はあっさりと、マシンのセッションベストとなる3分43秒576をマーク。総合28位、LMP2クラスの中段につける、なかなかの好タイムをたたき出す。だが午後10時から始まった1回目のクォリファイ・プラクティス・セッション(公式予選)では、クルムが乗っているときに消火器のトラブルが出てしまい、それを修復するのに時間を費やしてしまったため、本山は結局このセッションでは走行することができなかった。

 翌木曜日は午後7時から9時と、午後10時から12時。それぞれ2時間ずつのクォリファイ・プラクティス・セッションが2回行われる。ところが、午後7時からのセッションでクルムが最初に3'42.612のマシンのベストタイムを更新したものの、その後マリノ・フランキッティがドライブした際にトラブルが発生。結局このセッションも、本山がデルタウィングをドライブする機会はなかった。

 こうして迎えた3回目、午後10時からのセッションでようやく本山の予選は始まった。ただし、予選アタックをする以前にナイトセッションを5周走行することが義務づけられているために、まずはその義務を果たすことが最優先。そしてクルムに変わったところで再びブレーキにトラブルが出てしまい、ここでも本山の渾身のアタックを見ることはできなかった。

 それでも、耐久レースはチェッカーを受けることが最優先であり、何よりも予選を通過することが先決。クルムが午後7時からのセッションでマークしたタイムはそれ以後更新されることはなかったが、「デルタウィング・ニッサン」は総合29番手に留まり、決勝進出を決めた。本山にとっては不完全燃焼の公式予選となったが、土曜日の午後3時(日本時間で土曜日の午後10時)にスタートが切られる決勝では、その分の奮起に期待したい。

●本山哲のコメント
「クルマを最初に見たときは、正直言ってビックリ。でも、ドライブしてみると意外に普通で、例えて言うならF3に似たフィーリングでした。レーシングウィークに入ってからはトラブル続きで、走り込めなかったのは正直不本意ですが、それでも日産やミシュランタイヤのエンジニアたち、そしてチームのスタッフたちと一丸となって、全く新しいことにチャレンジできるのは素晴らしいこと。モチベーションが下がることはありません。チームは決勝レースに向けてクルマを完璧に仕上げてくれると思うので、決勝レースが楽しみです。みなさん、決勝も応援してください!」

【決勝】
6月16日(土)~17日(日)
天候:晴れ
路面:ドライ
気温:25℃
路面温度:29℃(決勝開始時)

 本山哲にとって13年ぶりとなる「ル・マン24時間レース」は、いよいよ決勝の日を迎えた。決勝に先駆け行われた午前9時から45分間のウォームアップは、ウェットコンディションとなったが、セッション終了後から天候は回復傾向を見せ、コース上も徐々に乾いていった。
本山たちがドライブする「デルタウィング・ニッサン」は、このウォームアップではノータイムに終わっている。と言ってもシリアスなトラブルがあったわけではなく、セッション前半はドライバー交代のシミュレーションをメインに行い、ピットアウト、インを繰り返したために計測はなし。

 そして後半には、エンジンの電気系に些細なトラブルが発生したため、充分なレースシミュレーションを行うことができなかった。

 こうして迎えた決勝、「デルタウィング・ニッサン」のステアリングを最初に握るのはミハエル・クルム。クルムはスタートから安定したペースで周回を重ねるが、約1時間のスティントを2回終えたところでマシンにトラブルが発生し、ポジションを50位前後まで落としてしまう。
そしてマシンのトラブルが解消すると、ここで本山がクルムからステアリングを引き継ぐ。本山は快調なペースで周回を重ね、少しずつ、そして確実にポジションをアップしていった。

 スタートから5時間余りを経過したところで、上位グループのマシンのアクシデントによりセーフティカーが入る。45番手辺りまでポジションを上げていた本山の猛プッシュも、ここで小休止となった。そして1時間近くを経過してセーフティカーがコースを離れ、いよいよレースは再開。
本山も仕切りなおしで猛チャージを再開しようとするが、その矢先、不運なアクシデントに巻き込まれてしまう。トップ争いの集団にパスされる際に、その中の1台に跳ね飛ばされてしまったのだ。さらにコースアウト後、ダメージを負いコントロール不能になったマシンは、グラベルベッドで右往左往した挙句にコンクリートウォールに直行。

 レース序盤にしてこのル・マン・チャレンジは終了してしまうのか・・・・

 コクピットの中でピットからの無線の指示を受ける本山は、マシンを降り立ちカウルを開けてマシンをチェック。無線で指示を受けながら何とかピットまで戻ろうと自ら修復を試みた。ダメージは思っていた以上に酷く、エンジニア、チーフメカニックがコースサイドに止まったデルタウィングのそばに集まり1時間近くに及ぶ懸命の作業を行う。
この場面は国際映像で放映されこの小さな黒いマシンに世界中のレースファンが注目した。しかし駆動系の修復には何とか成功したもののステアリング系統は完全に壊れた状態で修復不可能と判断。

 周りに集まった多くの観客が最後まで諦めない姿に賞賛を送りつつもここでレースを終えることになった。

 決勝は24時間レースの3分の1を走り終えただけでリタイア……13年ぶりの夢の舞台は、結果から見れば散々なものとなってしまった。それでも本山は、ニッサンやミシュラン、そしてチームのスタッフと一丸になって、新しいテーマにチャレンジすることの魅力を満喫した。それは見ているファンにも伝わったに違いない。


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