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レーシングオン ニュース

投稿日: 2022.03.01 10:00
更新日: 2022.03.01 10:44

『ポルシェ911 GT1』グループGT1時代に見せた“耐久王”ポルシェのチカラ【忘れがたき銘車たち】

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レーシングオン | 『ポルシェ911 GT1』グループGT1時代に見せた“耐久王”ポルシェのチカラ【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、『ポルシェ911 GT1』です。

* * * * * *

 ル・マン24時間レースなどのスポーツカーレースで1994年~1999年まで続いた『GT1』と呼ばれるGTカーたちの争い(1999年はGT1というクラス名は消滅)。この『GT1』は、ル・マンでも総合優勝を争うメインの車種ではあったのだが、この『GT1』がル・マンを制したことは二度しかない。

 旧グループCカーも走っていた1994年のル・マンに勝利したダウアー962LMを“例外”とさせていただくと、一度目は1995年のマクラーレンF1 GTR。そしてGT1マシンとしては、2台目のル・マンのウイナーとなったのが、今回紹介するポルシェ911 GT1である。

 ポルシェは1994年、ダウアーとともに前述のダウアー962LMでル・マンを制した後、1995年は993型のポルシェ911をベースとした911 GT2エボを有力プライベーターに託して戦った。

 しかし、新たにレーシングカーに仕立てられて登場したマクラーレンF1 GTRには歯が立たなかった。そして、ポルシェはル・マン終了のひと月後に、ポルシェ911 GT1開発プロジェクトをスタートさせた。

 ポルシェ911 GT1は、まず公道走行も可能なロードカーを仕立てた。それをベースにレーシングスペックバージョンを作るというコンセプトの元、開発をスタート。そのためポルシェ911 GT1は、フロントからセンター部分を993型ポルシェ911のスチールボディから流用して製作された。

 車体後部は、ドライバーの背後にバルクヘッドを設けて、鋼管サブフレームで構成。そこにエンジンをミッドシップマウントするなど、レーシングカー的な作りになっていた。

 エンジンは、ポルシェ伝統の空冷を捨てて、全水冷の3.2リッター水平対向6気筒を新開発。このエンジンをターボ過給し、最高出力600psを発揮するユニットに仕立てていた。

 ポルシェ911 GT1は1996年3月のシェイクダウン、4月のテストを経て、同年のル・マン24時間レースに2台がエントリーした。ポルシェが生み出した“本気”のGT1マシンだけあって、総合優勝の本命とも目されていた。

 だが、この年の総合優勝は、ある意味身内とも言えるヨーストが走らせたLMPカー、WSC-95に奪われ、ポルシェ911 GT1は2~3位でフィニッシュ。それでもGTカーのクラスではトップ、それもマクラーレン勢を上回ってのこの順位は上々の結果だと言えた。

 翌1997年、ポルシェ911 GT1は発展型の“エボ”へと進化。このエボでは、市販車の911が996型へとモデルチェンジしたことに合わせて、ボディは996型となり、トレッドを拡大するなどのアップデートが施されていた。

 ポルシェ911 GT1エボは、この年のBPRグローバルGTシリーズがFIA選手権化してスタートしたFIA GT選手権にシリーズを通して参戦。前年のBPR GTではわずか3戦のエントリーだったが、そのすべてで勝利を果たす。

 その勢いが継続されるか……にも思われたが、新たに登場したメルセデス・ベンツCLK-GTR、そしてロングテールとなるなどアップデートされたマクラーレンF1 GTRというライバルを前に歯が立たず。しかしながら、FIA GT選手権で苦しんだリストリクター規制のないル・マンでポルシェ911 GT1は、その本領を発揮することとなる。

 ポールポジションこそ逃してしまったものの、レースの大半で1-2体制を形成。優勝に向けて優位にレースを進めていた。しかし1台がコースアウトによる影響でリタイアを喫すると、残り2時間というところでトップを走っていたポルシェ911 GT1がトラブルでストップし炎上。総合優勝は、またもヨーストのWSC-95に奪われてしまった。

 そして1998年、ポルシェは911 GT1を全面的に見直し、911 GT1-98を開発した。911 GT1-98は市販の911譲りのスチールボディを捨て、オールカーボンモノコックボディを採用。さらに空力も見直され、よりローフォルムになって、ノーズとテールを延長し、車重も先代より100kg軽く仕上がった。

 ライバルの進化に合わせて、ついにGT1と名乗りながらも、1998年モデルでポルシェ911 GT1は、純レーシングカーへと進化したのだ。この911 GT1-98、FIA GT選手権では前年同様、メルセデスに対して惨敗を喫してしまうが、絶対的速さで劣っていても戦えるル・マンではまたも強さを見せる。

 2台体制で挑んだ911 GT1-98は、メルセデスがあっさりと序盤に脱落し、トヨタやニッサンとの戦いを繰り広げると、最終的にはトヨタの脱落にも助けられて1-2フィニッシュ。アラン・マクニッシュ、ローレン・アイエロ、ステファン・オルテリの駆る26号車がトップでチェッカーを受けた。

 選手権には敗れたものの、信頼性が勝負を左右するル・マンに強い“耐久王”ポルシェの本領を見せつけたのだった。

1997年のFIA GT選手権を戦った911 GT1エボ。鈴鹿1000kmを走ったこの7号車はヤニック・ダルマス、アラン・マクニッシュ、ペドロ・ラミーがステアリングを握った。
1997年のFIA GT選手権を戦った911 GT1エボ。鈴鹿1000kmを走ったこの7号車はヤニック・ダルマス、アラン・マクニッシュ、ペドロ・ラミーがステアリングを握った。
1998年のル・マンを制したアラン・マクニッシュ、ローレン・アイエロ、ステファン・オルテリ組が駆った26号車の911 GT1-98。
1998年のル・マンを制したアラン・マクニッシュ、ローレン・アイエロ、ステファン・オルテリ組が駆った26号車の911 GT1-98。


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