更新日: 2019.10.15 13:41
電動TCR『ETCR』と電動ラリークロス『Projekt E』のEVキット・サプライヤー決まる
世界中のあらゆるモータースポーツ・カテゴリーが急速に電動化へのシフトを進めるなか、TCR規定ツーリングカーをベースとした『ETRC』と、WorldRX世界ラリークロス選手権の併催クラスとして予定されている『Projekt E』車両に対して、それぞれ電動化キットを供給する公式サプライヤーが発表された。また、クプラ・レーシングのETCRプログラムで開発ドライバーに就任したマティアス・エクストロームがETCR向け『セアト・クプラe-Racer』の初テストに臨んでいる。
10月初旬に開催されたFIAのWMSC世界モータースポーツ評議会(ワールド・モータースポーツ・カウンシル)会合後に発行された声明では、2021年からWorldRXイベントで併催される電動車両クラスに向け、オーストリアの技術企業Kreisel(クライゼル)が、2019年初頭から続いた入札により、EV共通キットの供給権を獲得したことがアナウンスされた。
この共通電動パワートレインには、前後アクスルに搭載される各250kWのモーター、ふたつのインバーター、そして「革新的なクーリングシステムを持つ52.65kWhの最先端バッテリー」が含まれ、システム総合出力は500kW(約680HP)に達するという。
この共通キットは既存のWorldRXスーパーカーにも搭載することが可能で、もちろん規定に則した新規シャシーへの搭載も認められている。その最初のプロトタイプは2020年3月には潜在的ユーザーである希望チームに供給され、正式な発売はその直後、2020年4月17日が予定されている。
クライゼル製EV共通キットは少なくとも2021年から2024年までの4シーズンにわたって供給・使用され、発売価格は30万ユーロ(約3600万円)、4年間のメンテナンスコストは約10万ユーロ(約1200万円)程度が見込まれている。
これは「既存のICE(内燃機関)を使用するRXスーパーカーのエンジン購入費用やランニングコストより低価格になる」という。
また今回の決定により、クライゼルと同じくオーストリアを拠点とするラリークロス界の名門コンストラクター、STARDが開発してきた3モーターの『Projekt E』車両用パワートレインは”共通キット”としての採用に至らなかった。
WMSCの声明では同じく2021年開始予定の下位カテゴリー、FIAジュニアeRXチャンピオンシップで使用するワンメイク車両向けのキット供給企業も発表されており、こちらはスペインのQEVが権利を獲得。
チューブラーフレームのシャシーに、32kWhのバッテリーと250kWのモーターを搭載する電動4WDマシンを製作し、EVラリークロスの国際的ステップアップ・カテゴリーとして、初年度は欧州中心にWorldRX全6戦で併催、20台にエントリーを制限しての開催が計画されている。