2020年シーズンのWRC世界ラリー選手権に向けてドライバーラインアップを一新したトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)。2020年仕様のトヨタ・ヤリスWRCについても、念願のダブルタイトル獲得を強力に推し進めるべく、モンテカルロに合わせてアップデートを施してきた。
なかでも注目したいポイントはエンジン。エンジン・プロジェクトマネージャーの青木徳生氏は、「性能アップを行いながら、信頼性も高めました。エンジンだけで言えば、歴代最強のスペックになっていると思います」と自信をみせる。
ドライバーも、「中間トルクがいいのでコントロールしやすい」(セバスチャン・オジエ)、「エンジンは強力」(エルフィン・エバンス)と異口同音だ。
また、サスペンションも新たにホモロゲーションを取得。足まわりだけで5kg以上の軽量化を実現した。
足まわりやディファレンシャルなどセッティング面も最適化が図られているようで、TOYOTA GAZOO Racing WRTでテクニカルディレクターを務めるトム・ファウラーは、「エアロデバイスを含め、見ためについては大きな変更点こそないが、確実にマシンは進化しているし、パフォーマンスもアップしている」と抜かりはなさそうだ。
2019年シーズンのレギュラードライバー全員がチームを離れたことから、2019年仕様との直接的なパフォーマンス比較は難しいが、車両全体で見れば、ドライバーからの評価はおおむね高い。
フォルクスワーゲン・ポロR WRC、フォード・フィエスタWRC、シトロエンC3 WRCとこれまで多くの車種を乗り継いできたオジエは、「テストの段階からとてもいい感触だった。とくにターマック(舗装路)でのリアクションに優れている」と話し、エバンスも「空力性能が優れていて、ダウンフォースが高い。ハイスピードコーナーでのリアクションが非常に良く、とにかく戦闘力が高い。このマシンで戦えることが楽しみ」と高まるテンションを隠さなかった。
ちなみに、2019年までトヨタで走っていたオット・タナクとヤリ‐マティ・ラトバラはドライビングスタイルが異なり、セッティングも大きく異なっていたようだが、2020年仕様のヤリスWRCを駆るオジエ、エバンス、カッレ・ロバンペラの3人はドライビングスタイルが近く、セッティングも似ているという。
あとは、ドライバーの好みに応じてスイッチ類のレイアウトを変更するなどでそれぞれに対応しているようだ。
TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムにより、2020年はヤリスWRCで8戦に出場する勝田貴元は、2019年仕様の車両でモンテカルロにエントリー。「ヤリス以外のWRカーに乗っていないので比較はできませんが、ヤリスWRCはリアクションのよさを感じています」と、オジエやエバンスと同様のフィーリングを得ている。
2020年仕様のヤリスWRCは“正常進化”という言葉以上の大幅なパフォーマンスアップが図られていると見ていいだろう。