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ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2022.12.02 16:40
更新日: 2022.12.07 02:47

【ラリージャパン、12年ぶり開催の評価と課題:前編】観客は世界一。日本らしさの強調やSSのバランス改善に期待

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ラリー/WRC | 【ラリージャパン、12年ぶり開催の評価と課題:前編】観客は世界一。日本らしさの強調やSSのバランス改善に期待

 2022年11月10~13日、愛知県と岐阜県の両県にまたがる形でWRC世界ラリー選手権第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が開催された。2010年以来、12年ぶりのWRC日本ラウンドとなった今大会では、日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が3位表彰台を獲得したことで大きな注目を集めたが、同時に多くの問題も期間中に浮き彫りとなった。そんなラリージャパンをモータースポーツジャーナリストの古賀敬介氏が振り返った。

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 11月に開催された2022年WRC最終戦『ラリージャパン』。WRC取材歴20年以上のモータースポーツジャーナリスト、古賀敬介は12年ぶりに開催されたWRC日本ラウンドをどのように見たのか? まずは「前編」として、“ポジティブ”に感じられた事柄についてレポートする。

■冷静だった日本のラリーファン

 今回、ラリージャパンを取材して一番うれしかったのは“観客たちが喜んでいる姿”を見たことだ。12年前の北海道大会以来の観戦という人もいれば、トヨタのWRC復帰をきっかけにWRCに興味を持ったという人もいて、皆さんが日本でのWRC開催を心から待ち望んでいたことが伝わってきた。WRCの知識が豊富で、熱狂的で、それでいて観戦マナーもとても良かった。

 とくに強く印象に残ったのは、後編でも記すが、岡崎の河川敷のSSが主催者側の不手際により2本から1本になってしまった時のこと。ステージが1本キャンセルになっただけでなく、土煙によって対岸の観戦エリアからは走りが見えにくい、或いはまったく見えない状態となっても観客は冷静さを失わなかった。

 これが海外の大会だったら大ブーイング大会になったり、暴れる人が出てもおかしくないような残念な状況だったが、日本の観客はとても優しく冷静だった。辺りがどんどん暗くなっていく状況で、土煙の中を走る選手たちを暖かく応援する姿を見て、本当に感動した。ラリージャパンの観客は本当に素晴らしい、世界一だと思った。

■ステージは想像以上に魅力的

 SS(スペシャルステージ)の設定もなかなか良かった。ラリージャパンの開幕直前に全SSをレンタカーで走ってチェックしたが、その時の印象は、どちらかというとややネガティブなものだった。全体的に道幅が狭くてツイスティなコーナーが多く、また山中の似たような風景の道が長く続くところも多くあるため、レンタカーで走っているとかなり退屈に感じられたのだ。

 海外のダイナミックな風景の中を走るSSと比べると、正直見劣りするように思えた。また、山の中の道は路肩に“罠”のような側溝があるところが多く、下見走行をしながら「こんなに狭い道を走ったらWRCドライバーたちはさぞかしストレスが溜まるだろうなあ」などと思いながら運転していた。

 ところが、実際にWRCマシン、とくに最高峰の“ラリー1”ハイブリッド車が走る姿を見て印象が大きく変わった。世界最高峰のドライバーたちは、狭くクネクネと曲がりくねった日本の山岳路を想像以上のスピードで駆け抜けたのだ。500馬力超のモンスターマシンが走ると、道の狭さは逆に魅力的に映り、針の穴に糸を一発で通すような精度の高いドライビングを堪能することができた。他の国のターマックラリーとはまったく違う、日本の道ならではの難しさや個性が感じられたのだ。

 それでいて、かなりハイスピードなセクションやステージもあり、4、5速ギヤで駆け抜けるコーナーは迫力があり非常に見応えがあった。これも後編で記すが、SS全体の中でもう少しだけ中高速コーナーの比率が高かったら、かなりバランスのいい、より魅力的なイベントになっていたのではないかと思う。

全体的に道幅が狭く、ツイスティなコーナーが続くステージが多かった印象の2022年ラリージャパン
全体的に道幅が狭く、ツイスティなコーナーが続くステージが多かった印象の2022年ラリージャパン
岡崎スーパーSSでは2本のSSが予定されていたが、長いディレイの後に片方がキャンセルとなってしまった。
岡崎スーパーSSでは2本のSSが予定されていたが、長いディレイの後に片方がキャンセルとなってしまった。

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