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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2020.08.17 23:52
更新日: 2020.08.17 23:56

全力で挑んだその先へ。2年目の挑戦を決めたCARGUY RACINGと木村武史の決断の理由

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ル・マン/WEC | 全力で挑んだその先へ。2年目の挑戦を決めたCARGUY RACINGと木村武史の決断の理由

 8月12日、CARGUY RACINGはプレスリリースを発行し、9月17〜19日にフランスで開催されるWEC世界耐久選手権ル・マン24時間耐久レースにAFコルセとのコラボレーションで参戦すると発表した。自動車エンターテインメント集団『CARGUY』を立ち上げ、モータースポーツに挑戦を続けてきた木村武史が、ふたたび本気でル・マンに挑む。

■「これ以上ない」思いの2019年で終わっていたはずの挑戦

「僕はいつも思うんですけど、『次』はないと思っているんです」

 2019年、初めて挑んだル・マン24時間のチェッカー後、「感動したというより、『解放された』」思いから涙をみせた木村は、こんな言葉を残した。初めてのル・マン。難攻不落のサルト・サーキットに挑むため、会社経営のかたわら自らの肉体を追い込むほど国内で“合宿”をこなし、出発前には派手なパーティーを開き、J SPORTSのル・マン中継に協賛するなど、内側からも外側からも、自らを追い込む環境を作ってきた。

「『次』はない」。こんな言葉は、一代で会社を成長してきた経験をもつビジネスマンだからこその考えかもしれない。子どもの頃からの夢だったル・マンという舞台に真摯に向き合い、全力を出し切った結果、初参戦では望外とも言える6位でチェッカーを受けることができた(その後上位のペナルティで5位に)。木村はレース後、多くのドライバーが“ハマって”しまうル・マンへの挑戦はこれで終え、本業の会社経営での次なる目標に挑むと語った。

「『次は頑張る』というのは、僕のなかにはない。これ以上頑張れないくらい頑張ってきたんです。今の実力が全部なんです。これ以上頑張りようがない」

 あれから一年。木村は宣言どおり、前年王者として出場しなければならなかった2019-2020年のアジアン・ル・マン参戦、もともと出場予定だった鈴鹿10時間のほかは、大きなレースには出場せず、“本業”に集中してきた。

 そこへ、既報のとおり2020年のル・マン24時間へ向けて、AFコルセからCARGUY RACINGヘ参戦の打診が舞い込んだ。本来MR RACINGが参戦する予定だったル・マンの枠が空いてしまったことから、AFコルセとしてはLM-GTE Amクラスで勝てるパッケージを探していたが、昨年5位のCARGUYはうってつけの存在と言えた。

 木村と、その語学力を活かしマネージメントも務めるケイ・コッツォリーノは、このオファーをうけ、あえて『次』に挑むことを決めた。

パレードに参加したカーガイ・レーシングの木村武史、ケイ・コッツォリーノ、コム・レドガー
2019年ル・マン24時間 パレードに参加したカーガイ・レーシングの木村武史、ケイ・コッツォリーノ、コム・レドガー
見事初挑戦ながらチェッカーを受け、ケイ・コッツォリーノと涙の抱擁をかわす木村武史
2019年ル・マン24時間 見事初挑戦ながらチェッカーを受け、ケイ・コッツォリーノと涙の抱擁をかわす木村武史

■2019年の挑戦の後に気づいた“次”の“先”

 2019年、木村は国内で合宿を積みル・マンに挑んでいた。『CARGUY』としてスーパーカーを使ったエンターテインメントを展開し、そのなかで“自動車冒険隊隊長”として自ら所有するマシンたちのステアリングを握ってきた木村のドライビングの幅は広い。ドリフトもこなすこともできるし、トッププロほどの速さはなくとも、ほとんどのレースでクラッシュやアクシデントに巻き込まれたこともほとんどない。常にいくらかのマージンをもつのが木村の“らしい”ところだ。

 そんな木村が衝撃を受けたのが、2019年に体験したサルト・サーキットの、それも公道部分だった。この区間は、排水のために道路の左右が下がっている、いわゆるカマボコ形状となっている。コーナリング脱出時にはアウト側が下がっており、すぐ外側にはガードレールが迫る。

 木村は、初挑戦の2019年のときには、フリー走行でスピンを喫したが、これ以降はマシンをコースに留めた。しかし合宿でプロに迫るべく磨きをかけたコーナリングをいくら頑張っても、プロドライバーとはタイム差がむしろ通常のコースより大きかったのだ。特に公道部分の差が大きい。これが木村の心のなかに引っかかっていた。

 ル・マンからしばらく経ち、木村はこの公道ならではの“トリック”に気づいた。しかも公道区間は、コーナーから立ち上がってからのアクセル全開区間が長い。コーナー出口で頑張りすぎアクセルオンが遅れ、全開区間でプロとのタイム差がついてしまっていたのだ。全力で挑んだ2019年の『その先』が見えた。シミュレーターでのトライが、それを裏付けていた。AFコルセのオファーは、絶好のチャンスと言えた。

 CARGUY RACINGが挑むLM-GTE Amは、ジェントルマンドライバーのタイムが成績を左右すると言っても過言ではない。木村がタイムアップし、そして現在参戦に向けてい調整を続けている3人目のドライバーが期待どおりの走りをみせれば、2019年の5位以上が見えてくるかもしれない。

「今度は自分自身の速さを追求したい」という木村は、9月のル・マンへ向けお盆返上でまたも合宿をスタートさせた。さらにスーパーGT第3戦参戦も決定。他の多くのスポーツと同様「練習は嘘をつかない」のはモータースポーツでも同じだ。ふたたび木村の“全力”が動き出した。

 2年目のル・マンに挑むCARGUY RACINGと木村には、新型コロナウイルスという厄介な障害もあるが、その挑戦が実り多きものになることを、そして日本チームとしてその活躍を願わずにはいられない。

カーガイ・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE
2019年ル・マン24時間 カーガイ・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE
カーガイ・レーシングの57号車フェラーリ
2019年ル・マン24時間 カーガイ・レーシングの57号車フェラーリ
2020年のル・マン24時間に参戦するCARGUY RACINGのフェラーリ488 GTEのカラーリング
2020年のル・マン24時間に参戦するCARGUY RACINGのフェラーリ488 GTEのカラーリング


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