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投稿日: 2023.05.31 14:19
更新日: 2023.05.31 18:06

【木下隆之/帰ってきたタワー3F】交差点でドリフト大会も。ニュルに集まったドイツのクルマ好きたち

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スーパーフォーミュラ | 【木下隆之/帰ってきたタワー3F】交差点でドリフト大会も。ニュルに集まったドイツのクルマ好きたち

 auto sport本誌で絶賛連載中の木下隆之さんのコラム『帰ってきたタワー3F』。もっと多くの人に読んでもらいたい!とのご本人の強い要望により、オートスポーツwebにも今月より掲載することになりました。乾いた筆致にお茶目なレーシングマインドを織り交ぜた当コラム。今回は、ニュル24時間レース開催を1カ月後に控えたニュルブルクリンクでの、イースターサタデーの盛り上がりをレポートしていただきました。『フォーミュラ特集』となるauto sport本誌の内容も合わせてご覧ください。

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■ニュルイースター by木下隆之

 普段でさえ多くのクルマフリークがニュルブルクリンクには集結するというのに、ドイツがイースターサタデーを迎えた4月8日は、とんでもない混雑ぶりとなっていた。

 この日のコース上はスポーツ走行に興じるスポーツカーで大盛況、さらに無料観戦エリアは黒山の人だかりだった。

 こうなれば、サーキット周辺は大渋滞になる。いつもは物静かなニュルブルク村だが、まるでF1が開催されたかのような熱気に包まれていた。

 驚かされたのは、周辺道路にも観客があふれたことだ。フェラーリやランボルギーニといった高価なスーパーカーはもちろん、カスタムされたゴルフやオペルなどが、さながら品評会であるかのごとく並んでいる。

 観客達はこのカスタムカーを観るために、沿道に椅子やテーブルを並べているのだ。たとえば、富士スピードウエイ近郊の国道246号線の沿道に人だかりが…といった様相だ。あるいは湾岸道・大黒パーキングが、スマホを構えるクルマ好きであふれるあの光景にも似ている。

 そんな観客らは、太いマフラーのマシンを発見するやいなや、手首をグルグル回して囃し立てる。エグザイルのチューチュートレインを踊る仕草で、エンジンを吹かせと催促するのだ。

 レースとレースの合間の休日をのんびり過ごそうとしていた私は、たまたまGRスープラを足にしていたことから自慢の愛車を品評会に披露するためにやってきた走り屋と勘違いされ、手首をグルグル回される始末。

 そもそもオートマなので爆音を響かせることもできず、『いやいやそんなんじゃなくて…』と照れ笑いするものの、渋滞の車列はなかなか動かない。軽いブーイングを浴びることも少なくなかった。

 ドイツには交差点が少なく、道と道が交わる地点はラウンドアバウトと呼ばれる環状交差点が設けられている。周回可能となれば、彼らがドリフト大会を始めるのは必定。まして手首グルグルであおられれば、その気になった彼らはドリフトを披露して、スターになった気分でアクセルペダルをベタ踏みする。

 しかし、ドイツ人だからといってもみな運転がうまいとも限らず、ドリフトをするカスタムカーは姿勢を乱して標識にクラッシュ。『右→アデナウ』『←左ケルベルグ』の標識が、どっちがどっちか分からなくなってしまう始末だ。バンパーがはずれかけても右足を緩めないのは、もはや興奮して自己制御不能となっているのか、照れ隠しなのか。

 昭和時代の富士グランチャンピオンに『竹ヤリデッ歯』のカスタムカーが集結したころも、似たような光景だったのかもしれない。日本は警察が厳しく取り締まったが、ドイツのポリツァイはニタニタ顔で見学している。これもクルマ文化の違いだろうか。

 いくらドイツでさえ、標識を倒しておいて無罪放免とはいかないだろうが、お縄になるほどの罪ではない……ってところがいいねぇ。(ちなみにイン巻きしたのは私ではありません )

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