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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.03.31 11:00
更新日: 2022.04.02 11:47

新型NSXタイプSの開発方針とシーズン展望「空力の長所を活かしつつ、幅を広げたい」【GT500開発担当に聞く/ホンダ編】

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スーパーGT | 新型NSXタイプSの開発方針とシーズン展望「空力の長所を活かしつつ、幅を広げたい」【GT500開発担当に聞く/ホンダ編】

 オフの最後のテスト、富士公式テストが終わり、いよいよ開幕戦岡山を迎えることになった2022年のスーパーGT。今年のGT500クラスはフロントフェンダー両端のフリックボックス、そしてサイドシル部のラテラルダクトの開発が認められ、3メーカーそれぞれ数パターンのバージョン、組み合わせを試して開幕前のホモロゲーションでフィックスされることになる。2022年仕様のマシン開発、そしてこのオフのテストでの手応えをそれぞれの開発責任者に聞いた。まず最初は昨年、惜しくもタイトルを逃したホンダ陣営に聞く。

 今年のホンダ陣営はこれまでのNSXから、昨年国内限定30台で販売されたNSXタイプSに車体を替えた。フロントのデザイン変更とともに車体の前後長が45mm延びたことで、車体全体のスケーリングの性能均一化のため、見た目以上に車体は変更が加えられることになった。さらに今年のホンダ陣営の変更点としては開発部隊であるHRD Sakura、通称ホンダ栃木研究所からHRC(株式会社ホンダ・レーシング)に所属が変わり、2輪と合わせてモータースポーツ専門会社としての参戦となる。

 ホンダ陣営で今季もスーパーGT500クラスの開発を務める佐伯昌浩エンジニアに、まずはNSXタイプSの今季の開発コンセプトについて聞く。

「今シーズンのコンセプトはベース車両がタイプSに変わって、それに合わせて今年は開発可能領域(フリックボックス、ラテラルダクト)も広がっています。開発のターゲットとしてはドラッグはマシン全体のスケーリングとして今まで以上減らすことはできないので、これまでの延長戦上でダウンフォースをしっかり出しつつ、幅を広げて安定してダウンフォースを出せる形を目指して進めてきました」と佐伯エンジニア。

 昨年のNSXは鈴鹿やSUGO、オートポリスを得意とし、中高速コーナーでの空力面の強さを武器にしていた。

「ダウンフォースの部分は今までの長所だったので、そのダウンフォースレベルの長所を伸ばして、その幅を広げた上でドラッグをできるだけ増やさないという形になります。ドライバーの評価としては乗りやすくなって、空力に対するピーキーさは減ってきて乗りやすくなったというコメントを頂いています」と佐伯エンジニア。

 実際、64号車Modulo NSX-GTの伊沢拓也は「総じて、去年よりも空力的にピーキーな部分は減ったのかなと思います。一昨年から去年にかけてセットアップも走り方もピンポイントで難しい部分がありましたけど、今年はそういう意味では乗りやすくなりました」と、タイプSの印象を話す。

64 Modulo NSX-GT
64 Modulo NSX-GT

 車体の変更の影響が大きかったこともあったか、エンジン面では今季後半戦の2基目にフォーカスしているようだ。佐伯エンジニアが話す。

「エンジン面でもいろいろ頑張っていますけど、ちょっと去年頑張りすぎたせいか、去年後半のエンジンは最終戦が終わったあとは保つハズのものが結構、ギリギリの厳しい状態でした。ですので、今年のエンジンは変えられる範囲のもので対応していくのかなという感じですね。今季は前半戦よりも2基目を投入する後半戦に向けて大きく手を掛けられればと思っています」

 去年のNSXは富士の直線ではライバルに比べて厳しい面があった一方、予選での一発の速さ、そしてレース戦略面ではアンチラグを抑えたエンジン開発のお陰で燃費面でライバルを圧倒。他陣営より1周早くピットインできるドライバー交代のミニマム周回数戦略によるアンダーカットで、STANLEY NSX-GTなどはサクセスウエイトが重い状態でもレースで順位を上げることに成功していた。

 ライバル陣営も当然、エンジン面での燃費向上を開発テーマに入れているが、さすがに燃費については開幕戦になってみないとわからない。それでもこのオフのトヨタGRスープラ、そしてニッサン新型Zのパフォーマンスを佐伯エンジニアはどのように見ているのか。

「このオフのテストを見ているとZは明らかに昨年のGT-Rよりストレートが速くて、かと言ってコーナーが遅いかと言うとそうでもない。今シーズンはかなりいい成績を挙げるのではないかなと思っています。スープラは去年のシーズン中のようなストレートの速さがオフのテストでは見えていないのですが、低速区間で速くなっているので、今年はダウンフォースを増やす方向に開発を振ったのかなと見えます」

「今年は3メーカーともダウンフォースが増えて同じレベルに集まってきていて、スーパーフォーミュラのようなワンメイク車両のフォーミュラカテゴリーに近いところまでダウンフォースレベルが来ているのかなという印象を受けています」と佐伯エンジニア。

 昨年は最終戦でホンダ陣営内での同士討ちとも言える展開で、タイトルを逃したホンダ陣営だが、実質的にNSXは2020年からの連覇に匹敵する強さを見せていた。今年も過去2年のような強さを見せることができるだろうか。

「相手もいることですので、取りこぼしなく、1年間のレースをうまく進めて行くという部分でもチャンピオン争いは決まると思います。ですのでシーズンを通して焦らずにポイントを重ねて、最終戦でいいポジションに来れるように頑張りたいと思います」と、慎重な佐伯エンジニア。

 最後の富士テストでは雨絡みでドライは1セッションだっただけに勢力図が読みにくいが、例年以上に今季の3メーカーの実力は伯仲しているのかもしれない。

2022年スーパーGT富士公式テスト
タイプSとなってフロントのデザインが変わったNSX


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