第17戦オーストラリヤGPのMotoGPクラスでは初日から好調だったマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)。ウエットのフリー走行1回目(FP1)、ドライのフリー走行2回目(FP2)でトップタイムを記録。2日目も雨と風の影響を受けたFP3でトップタイム、強風のためセッションが中断されたフリー走行4回目(FP4)ではマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)にトップを譲ったものの2番手につけ、日曜日の午前にスケジュールが変更された予選Q2では2018年のポールタイムを更新して、2019年3回目のポールポジションを獲得した。
2018年のオーストラリヤGPではマルケスが序盤にリタイアに終わったとは言え、中盤には後続とのリードを広げて独走優勝を飾っていたビニャーレス。2019年も優勝候補の筆頭で、初日から「フィーリングがとてもいい。このコースではいつも、素晴らしいラップタイムを記録することができる。マシン、セッティングもとてもうまくいっている」とポジティブなコメントを残していた。
決勝日朝、イレギュラーのウォームアップ走行、予選とあわただしい条件のなかでも、落ち着いてポールを獲得したビニャーレスは、決勝に向けてただひとり前後にソフトコンパウンドのタイヤを選んでいた。序盤からダッシュをかけ、2018年と同じように後続にリードを取って、独走に持ち込む戦略だ。ビニャーレスは赤旗で終了となったFP4でも、FP3で使ったユーズドの前後ソフトタイヤを試していた。
これに対してマルケスも、「マーベリックがソフトタイヤを選択することを直感し、彼に対して最後までトライするために、僕も同じタイヤを装着することを決断した」と、フロントはハードながら、リヤにソフトを選択していた。
スタートでは1コーナー付近の混乱もあり、1周目をマルケスが4番手、ビニャーレスが6番手とやや出遅れたものの、ふたりともトップ集団につけ、ビニャーレスは10周目にはマルケスとカル・クロッチロウを一気に交わしてトップに浮上。マルケスが2番手で続き、レース中盤にはふたりが3番手以下に約1秒のリードを取り、その後はビニャーレスの背後をマルケスがぴたりとマークする形で周回を重ねて行く。
「ラスト4、5周まで何とかついていくことができれば、勝てる可能性があると思っていた」と語るマルケス。そして、最終ラップに入るホームストレートでビニャーレスのスリップから抜け出したマルケスがトップに浮上。「ストレートで抜かれることは覚悟していた」と語るビニャーレスは、コース終盤のセクター3、10コーナーヘアピンの進入での勝負に備えていた。
ところが9コーナーを立ち上がり、10コーナーに向けて切り返そうとしたビニャーレスのリヤタイヤが大きくスライドし転倒。10コーナーに向けた下り坂をビニャーレスはマシンとともにグラベルへと滑っていき、優勝はマルケスのものとなった。
「10コーナーでマーベリックが転倒しなければ、セクター3で彼に少し逃げられたかもしれない。でも、すぐに追いつければゴールラインの手前で前に出ることができたと思う」とマルケス。