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国内レース他 ニュース

投稿日: 2021.07.30 16:02

ロードカーをベースにTRACY SPORTSが開発。ST-1クラスのトヨタGRスープラ【スーパー耐久マシンフォーカス】

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国内レース他 | ロードカーをベースにTRACY SPORTSが開発。ST-1クラスのトヨタGRスープラ【スーパー耐久マシンフォーカス】

 2021年シーズンは年間エントリーが3台と少々寂しい状況のST-1クラスだが、TRACY SPORTSの伊藤氏はそのなかで展開される開発や技術競争がST-1クラスの面白さだと語る。

「ST-XやST-ZなどはFIAがある程度イコールコンディションになるように調整し、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)も重ねて、熱いバトルが繰り広げられるようになっていますが、ST-1はどんなクルマが来るかはSTOさんにもわからないクラスだと思います」

「僕らもレースに出るまで自分たちのクルマにどれだけの戦闘力があるのかがわからない状態でした。性能差がわからないクルマがST-1に集まってくるもので、そこで性能を均一化させるのは相当難しいと思います。そのため、イコールコンディションを求め、ガチンコのバトルが見たいというのであれば、やはりST-XやST-Z、ST-TCRの方が盛り上がると思います」

「ですが、“クルマ好き”の人の中にはスーパー耐久を戦うレーシングカーはどのようなチューニングをしているのだろう、どのような開発をしているのだろうという点を楽しみにしているコアなファンの方もいらっしゃると思います。そういった方に、こういった詳しい情報が届くと、楽しんでいただけるのではないかなと思います」

 ちなみに、TRACY SPORTSだが、普段の工場での実働メンバーは4人という。今季もST-3クラスに参戦するレクサスRCに対しチューニングエンジンを供給している“エンジン屋”も兼ねていることも考えると非常に少ないメンバーで活動している。レースウイークには普段の4人に加え、各地から仲間が集りレースをサポートしている。

 伊藤氏によると「ガッツのある方は是非TRACY SPORTSに入社していただければ。絶賛募集中です!」とのことだ。

ST-1クラスに参戦するmuta Racing GR SUPRA
ST-1クラスに参戦するmuta Racing GR SUPRA

■阪口良平「足回りは硬めで、エアロ、空力が効いている乗り味」

 続いて、『muta Racing GR SUPRA』のドライバーを務める阪口良平に、マシンについての印象を聞いた。

「僕は普段からGRスープラをお借りして乗っていたり、GRスープラGT4なども経験させていただいているのですけど、クルマ的には『よく作ったな!』と思いますね。タイムもそこそこ出ていますし、クルマ的には全然機能しているのですけど。まずはこのチームがこのクルマを、ノーマルの車両から、レーシングカーに仕上げたことが普通のチャレンジではないと思っています」

「奥深い電子回路や海外製パーツとの繋がりがあるなかで、それをしっかりと解読、解析してレースを戦うことができているということは素晴らしいと思います。やはりGT4マシンのように、届いてすぐに走らせられるというクルマではなく、すべてが一からです。そして、シェイクダウンからもあまり不具合がなかったので、乗り味がどうこうよりも、まずは感動の方が多かったですね」

「ロールゲージなどはどこでも組めると思うのですが、電子制御の点、それに伴うミッションの交換、そのあたりもST-3クラスではあると思うのですけど、電子デフとか、コンピューターの解析と制御というところが、このチームの技術力の感心する部分だと思います」と阪口は語る。

 では、ドライバーの視点から感じるmuta Racing GR SUPRAの特徴とはどのようなものなのだろうか。

「ST-1クラスのマシンは進化を続けることができます。まずブレーキに関してはアドヴィックス製のABSユニット、これはいろいろなクルマの姿勢変化、たとえばフロントが効きすぎたら、ABSの効きを強めてノーズダイブしにくくなるなど、そういう点でも進化に取り組めるので、これはメリットだと思います」

「あとは、空力です。このGRスープラはGT4マシンよりは足回りが硬めです。GT4はジャンピングスポットもあるニュルブルクリンクを走りますよね。muta Racing GR SUPRAは、日本のフラットでコンディションのいいサーキット路面に合わせているというわけではないのですが、少し足回りが硬めなので、乗り味的にはエアロ、空力が効いていると感じます」

「また、ST-1もGT4と同様にギヤ比はホールドですが、ピッタリあっていると感じます。去年のレクサスRC Fのときもそうでしたが、サデフの6速ミッションが結構カバーしてくれていると感じます。ストレートスピードも、GRスープラGT4と同じくらいですね」

 さらに、阪口はどのような状況でも、ドライビングの幅が広い車両だと語った。

「脚も動くし、リバウンドストロークも取ってるだろうし、いろんなコンディションに対応できますね。思いのほかクルマが熱く、熱問題があったりしますが、乗りやすく、疲れにくく、快適な状況でバトルしながら走れるクルマです。他のお客さんがこんなクルマ作ってよ! って言ってくれるような。これが、僕が20年以上も前から知っているスーパー耐久の姿なので、その流れを受け継いでいる1台だと感じます」

 muta Racing GR SUPRAはデビュー戦となった第1戦もてぎで2位を獲得すると、第2戦SUGOで待望の初優勝を飾った。続く第3戦富士24時間は2位に終わるも、2.5ポイント差でランキングトップを守り7月31日〜8月1日に開催される第4戦『TKU スーパー耐久レース in オートポリス』の5時間の戦いに挑む。

 今大会もシンティアム アップル KTM、Porsche 911GT3 Cupといった特性が異なるマシンとの戦いを通じて、マシンを、そしてサプライヤーとともに開発を続ける各種部品を鍛えていくだろう。参戦台数は3台と少ないが、奥深いマシン開発競争、そして部品開発が繰り広げられていることを知った上でST-1クラスの戦いを観戦すると、今までとは違った印象を受けるに違いない。

muta Racing GR SUPRAのエンジンルーム
muta Racing GR SUPRAのエンジンルーム
ボンネットは市販品を穴あけ加工し、網を貼り付けている。裏側から覗くと“手作り”であることを強く感じさせる
ボンネットは市販品を穴あけ加工し、網を貼り付けている。裏側から覗くと“手作り”であることを強く感じさせる
ドアの内側にはこの車両がロードカーであった名残が
ドアの内側にはこの車両がロードカーであった名残が
muta Racing GR SUPRAのペダル
muta Racing GR SUPRAのペダル
第2戦SUGOで初優勝を手にしたmuta Racing GR SUPRA(堤優威/阪⼝良平/堀⽥誠)
第2戦SUGOで初優勝を手にしたmuta Racing GR SUPRA(堤優威/阪⼝良平/堀⽥誠)
ST-1クラスに参戦するmuta Racing GR SUPRA
ST-1クラスに参戦するmuta Racing GR SUPRA


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