更新日: 2021.12.03 09:05
プロフィギュアスケーター無良崇人が織戸学のマシンでTGR86/BRZレースに再挑戦
プロフィギュアスケーター無良崇人が、11月21日に富士スピードウェイで開催されたTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race2021クラブマンシリーズOPEN第11戦にK-oneレーシングから参戦。これまでプロフェッショナルクラスで織戸学がステアリングを握っていた「サミー☆K-ONE☆MAX86」17号車で出場機会を得た無良は、2019年7月以来となる86/BRZレースで予選2組の9番手タイムをマーク。決勝は18番グリッドからスタートし、18位で完走を果たした。
10月に宮城県・スポーツランドSUGOで開催されたTGRヤリスカップでおよそ2年半ぶりとなるレースに出場した無良。今年のレース参戦はこの1戦のみで終了かと思われたが、思わぬチャンスが巡ってきた。
無良がヤリスカップに出場した翌週、岡山国際サーキットで行われた86/BRZレースで3位表彰台を獲得した岡田整選手とお互いのレースについて電話で話していたところ、何気なく無良が「86にも乗りたかったなぁ」とつぶやいたことが今回の参戦のはじまりだった。
岡田は86/BRZレースOPENクラスの昨年度のチャンピオンで、今季もシリーズランキング2位の実力者。そして、織戸学が運営するレーシングシミュレーター施設『130R YOKOHAMA』の店長を務めている。織戸学選手に憧れ、ずっと自動車レースが好きだった無良は、フィギュアスケートの現役選手時代から『130R YOKOHAMA』に足繁く通い、ドライビングの腕を磨いていた。無良にとって岡田店長はレースデビュー以前からの師匠であり、プライベートでも仲のよい友人でもある。
「そう言えば、最終戦の富士、サミー号(織戸選手の17号車)が空いてるじゃん。(レース出場)いけると思うよ」と無良に伝えると、早速、岡田店長は織戸とK-one小菅英久社長に連絡し了承と協力を得た。すべてが決まるまでわずか30分、コース上だけではない岡田店長の早業が今回の無良の86/BRZレース再挑戦を実現させたのだ。
2017年5月の無良のインスタグラムより。この時期から『130R YOKOHAMA』に足繁く通い腕を磨いていた
迎えたレースウィークの木曜日。3週間前にわずか30分で参戦が決まった無良は、憧れの織戸学から借りたレーシングスーツに袖を通し、17号車に乗り込んだ。3つのクラスに分けられている86/BRZレースでは、カーナンバー上の「TOYOTA GAZOO Racing」の部分がプロフェッショナルシリーズは赤、クラブマンシリーズEXPERTクラスは黒、そして、無良が出場するクラブマンシリーズOPENクラスが白となってる。織戸仕様の赤のまま早朝の走行枠を走った無良は、周囲から「織戸さんが走ってるのかと思ったよ」と言われていた。
11月19日(金)の専有走行は、A、Bの2組に分かれてクラブマンシリーズのEXPARTクラスとOPENクラスが混走となった。各組30分の走行枠、15時15分からスタートしたA組で出走した無良は11周走行し、9周目にマークした2分07秒521がベストタイム。全49台中31番手、OPENクラスに限っては31台中15番手。そして無良がホームストレートで出した187.826Km/hが出走全車中の最高速をマークした。
続けて行われたB組は全45台が出走。OPENクラスは30台で、最終結果に無良のタイムを当てはめてみたところB組で出走していた場合はOPENクラスの10番手相当になった。単純にタイムだけで見た結果、A、B両組合わせてOPENクラスの61台中25番手となり、この時点で45台の決勝Aレース進出ラインは間違いなくクリアできる手応えを得ていた。
晴天に恵まれた20日(土)、参加者の能力が偏らないように、ランダムではなくこれまでの実績から1組、2組に振り分けられたクラブマンOPENの予選では、無良は11時45分から15分間で争われる2組に出走。トップ争いを演じる同じK-one レーシングの頼もしいチームメイトたちに触発されるかように、無良も好タイムを連発した。早い段階でトップ10に飛び込むと5周目にはついに2分07秒の壁を破り、2分06秒928をマーク。富士の長いストレートで最高速が伸びる無良の17号車は前車のトウ(スリップストリーム)を使い、さらに加速。ラストアタックとなった7周目にはトップと0.621秒差の2分06秒834までタイムを刻み、予選2組9番手で見事予選通過を果たした。
予選後の無良は満足げな表情を浮かべる一方で、非常に僅差であと3、4ポジションアップできていたことを悔やんだ。スタートは予選1組のトップがポールポジションとなり、予選2組9番手の無良は18番グリッドからのスタートが決定。
決勝レースに向け、「前も後ろも大混戦の中団18番手。厳しいスタート直後の1コーナーはくれぐれも気を付けて」と伝えると、「織戸さんのカラーリングのマシンに無茶して突っ込んでくる選手は、なかなかいないでしょう」とほほ笑んだ。そして、「予選はうまくいったけど決勝はまた別物。後方スタートからも上位ランカーや速い人たちがたくさんいるので、レースはそう甘くないはず」と気を引き締めた。
「シーズン中にプロフェッショナルクラスで使っていたクルマをOPENクラスで乗れるっていう機会は、なかなかないことだと思うんですよ」と岡田店長。
「2年前に86/BRZレースに参戦しはじめたころから、無良選手のレベルは熟知しているので、今の状態だったら僕らと一緒にやっても十分イケるなって思ってました。(130R YOKOHAMAで)シミュレーターを夜までやって、『じゃ、ウチでメシ食ってくか?』ってそのまま僕の自宅でご飯を食べて行ったり、日頃からプライベートでも仲良くやっているので、こうして無良さんと同じチームで乗れるっていうのは本当に嬉しいです」
「これまでチームメイトがいない体制で単独でやってきた無良選手にとっては、チームメイトの方たちに親切に迎え入れられて、楽しそうで、とても充実しているように見えますが?」と岡田店長に尋ねると、「お遊び仲間の延長線上で、でもみんな真剣にレースをやるっていうのが、このチームのいいところです」「(無良は)いちばん最後に来て、クルマに乗って、はい終わりっていうタイプではないんですよ。搬入日から僕らと一緒の時間にサーキットに入って、当たり前のように自分から仕事を見つけて働いているし、知らない人から見ても人柄の良さはすぐにわかります」と、このチームにしっかり溶け込んでいる無良ついて説明。そして、「タイム的にちょっと伸び悩んでる部分もあったみたいですけど、最後は(2分)7秒の壁を破って、いい感じになってきましたね」と予選2組9番手となった無良のタイムを喜んだ。