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F1 ニュース

投稿日: 2023.11.08 06:55
更新日: 2023.11.08 08:03

父はフェルスタッペンを支える敏腕マネジャー。「兄のような」マックスから薫陶受け、GT3で奮闘する20歳の素顔

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F1 | 父はフェルスタッペンを支える敏腕マネジャー。「兄のような」マックスから薫陶受け、GT3で奮闘する20歳の素顔

 フェラーリ296 GT3を駆り、スイスのエミル・フレイ・レーシングからGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/スプリント・カップとDTMドイツ・ツーリングカー選手権にシリーズ参戦する若きルーキードライバー、ティエリー・フェルミューレン。

 彼の父はF1ワールドチャンピオン、マックス・フェルスタッペンの敏腕マネージャー、レイモンド・フェルミューレンだ。ティエリー自身も、フェルスタッペンが経営する『Verstappen.com Racing』に所属している。

 この世界、“父がレーシングドライバー”という2世は珍しくないが、“父がF1世界王者の右腕”というドライバーは、そうはいないだろう。いったい彼は、なぜモータースポーツの世界を志すようになったのだろうか。

 ティエリーに、彼自身のこと、そして父やマックスとの関係について聞いた。

■カートもフォーミュラも経験なし。GT4でレースの世界へ

──まずは、あなたのことについて教えてください。

ティエリー・フェルミューレン(以下、TV):僕はオランダ出身で現在はモナコ在住の20歳だ。僕のレースキャリアは2020年にポルシェ・カレラカップ・ベネルクス(ベルギー・オランダ・ルクセンブルグの三カ国共同)と一緒に開催されているポルシェ・スプリントチャレンジ・ベネルクスに、ケイマンGT4で参戦することから始まった。

 初めてレースに参戦した年だったが、予想に反してGT4のシリーズチャンピオンを獲得できたこともあり、そのシーズンの終わりに僕の父、マックスとヨス(・フェルスタッペン)と4人で集まり、今後の僕についての話し合いが持たれたんだ。

マックス・フェルスタッペンのマネジャーを務めるレイモンド・フェルミューレン(左)
マックス・フェルスタッペンのマネジャーを務めるレイモンド・フェルミューレン(左)

──あなたのその後の進路はどういった方向へ?

TV:僕はプロのレーシングドライバーへ進むことを望み、この4名でのミーティングでは次のステップとしてポルシェ・カレラカップへ参戦することを決めた。2021年のシーズンはカレラカップ・ベネルクスへシリーズ参戦し、カレラカップのドイツへのゲスト参戦にもチャレンジした。厳しくも難しいシーズンになり、自分なりにもプロへの道の厳しさを痛感した一方で、カレラカップを通して数多くのことを学び、さらなるチャレンジをしてみたいと強く思ったんだ。

──カレラカップの後、次に選んだのはGT3なのですね。

TV:マックス、ヨス、僕の父らと話し合う中で、GT3のフィールドは世界中で非常に強く、トップドライバーらも多く活躍するカテゴリーで将来性もあると判断し、次はGT3へチャレンジすると決心した。

 そこで、カー・コレクションのアウディR8 GT3 LMSで、2022年のADAC GTマスターズへシリーズ参戦をしたんだ。カレラカップと同様にとても難しいシーズンとなり、ルーキーにとって甘いものではなかった。レースを通して多くを学ぶことに集中したよ。

2022年、ADAC GTマスターズにアウディで参戦した際には、マックス・フェルスタッペンのドライバーNo.『33』で戦っていたティエリー・フェルミューレン
2022年、ADAC GTマスターズにアウディで参戦した際には、マックス・フェルスタッペンのドライバーNo.『33』で戦っていたティエリー・フェルミューレン

──そして、今季はかなりビッグなチャレンジとなったわけですね。

TV:そのとおり。今季はGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのスプリントと、DTMの両シリーズにエミル・フレイ・レーシングからフェラーリでフル参戦した。

 数多くのドキドキとワクワクがあったが、世界トップクラスの先輩ドライバーらとともに戦うフィールドは、僕のようなルーキーには簡単ではなかったし、難しいシーズンだったけど、とても刺激的で良いシーズンだった。

 DTMではジャック・エイトケン、GTワールドチャレンジではアルベルト・コスタという大ベテランの先輩とチームメイトになれたことで、彼らからさざままなことを学ばせてもらった。

──『Verstappen Racing.com』プロジェクトのメンバーですが、実際にマックスとはどのような関係なのでしょうか?

TV:父がマックスのマネジャーである関係で、僕も幼少期からフェルスタッペン家とは深い交流があり、まるで弟のように接してくれている。もちろん、マックスはF1やさまざまなイベントでとても多忙な日々を送ってるけど、それでも必ず僕のために時間を割き、レーシングドライバーに必要なことをさまざまな点からサポートし、アドバイスをしてもらっている。

 レースウイークの合間にはどんなトレーニングをすべきで、次のレースのためにはどんな準備をしなければいけなか、マックスのアドバイスには大変助けられている。互いにモナコに居る際には一緒にシミュレーターをドライブしながら、アドバイスを受けることもある。レースウイーク中にも相談したいことがあれば直接電話をする。マックスはまるで兄のようでもあり、僕のために一生懸命サポートしてくれるので、とても感謝している。

2023年はDTMとGTWCヨーロッパに参戦したティエリー・フェルミューレン
2023年はDTMとGTWCヨーロッパに参戦したティエリー・フェルミューレン

──ところで、突如ヨーロッパのレース界であなたの名前を見掛けることになったわけですが、GT4に参戦する前には、カートやフォーミュラの経験はあるのでしょうか?

TV:カートもフォーミュラもまったく経験はない。2020年のGT4からレースを始めて、いまはレース歴が3年だ。父の職業柄、僕も幼少期からF1やDTM等、モータースポーツには大きな興味は持っていたけど、実際に僕自身がステアリングを握ることになったのは2020年、17歳の時だった。

──キャリア4年目でDTMやGTWCに参戦するとは、ドライバーとしての経験値が圧倒的に少ない分、かなり大変だったのではないでしょうか。

TV:そうだね。他のドライバーは幼少の頃からカート、そこからジュニアフォーミュラ等でしっかりとレースの基礎を学んでからGTレースへ参戦しているけど、僕にはそれらのキャリアは一切ない。レースを始めてちょうど3年、そしてGT3でのレースはまだ2年目だ。

 レースウイークやテストではサーキットで、その準備や復習は自宅で学ぶ日々の繰り返しだが、僕にとってはとても貴重で充実した毎日だ。一般的なドライバーとは違うルートでプロを目指すからには、その分努力をしなければいけない。来年には今季の経験を下に、よりよいスタートが切れるよう、そしてひとつでも前のポジションを狙えるよう、いまからしっかりと準備を重ねたい。

2023年はフェラーリ296 GT3でGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/スプリント・カップを戦った
2023年はフェラーリ296 GT3でGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/スプリント・カップを戦った

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