『速いマシンは美しい』のか、あるいは『速いから美しく見える』のか。F1ファンにとっては、永遠に答えの出ない命題であろう。その伝でいけば、『遅いマシンは醜い』という言い方もできるかもしれない。
フォーミュラワン世界選手権が始まってから、もうすぐ70年。これまで数え切れないほどのF1マシンが登場し、消えていった。『F1i』のジャーナリスト、ミカエル・ドゥラネイが今回紹介する『史上最も醜いF1マシン10選』を眺めるだけでも、マシンデザイナーたちがいかに知恵を絞って、ユニークなマシンを作り上げようとし、そして失敗を繰り返したかを実感していただけると思う。
ここに登場する10台のマシンのほとんどは、期待された速さを発揮することはなかった。まさに『遅いマシンは醜い』ということなのかもしれない。
(8)ウイリアムズFW09(1983-1984年)
ウイリアムズもフェラーリ同様、その長い歴史の中において醜いマシンを少なからず投入している。2004年、セイウチノーズのFW26が発表された時もかなり驚かされたものだ(幸いシーズン途中で姿を消したが)。しかしあのデザインには少なくとも、大胆な斬新さがあった。
だがこのFW09は、どうだろう。のちに圧倒的な強さを発揮するホンダV6ターボエンジンを、初めて搭載したマシン。ウイリアムズにとっては、初のターボ搭載車でもあった。なのにパトリック・ヘッドとニール・オートレイの手になる空力デザインの、工夫のなさには嘆く他ない。
角張ったフロントノーズは、ほとんど靴箱ではないか。とはいえ84年のダラスでは優勝を遂げており、今回紹介した10台の中では唯一のウィニングマシンということになる。