現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回はサマーブレイク前の2戦、ドイツGP、ハンガリーGPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。
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サマーブレイク前の2戦、ドイツ、ハンガリーGPでは2戦連続入賞を記録しましたが、その反面ドライバーの課題が見えたグランプリでもありました。
まずドイツGPですが、予選は5、6番手で通過し、決勝でも中盤まで入賞圏内を走行していました。しかし、43周目あたりから雨が降り出すと、ケビン(マグヌッセン)のペースが落ち始めました。
それまで後続の(ニコ)ヒュルケンベルグに3.5秒の差をつけていましたが、路面が濡れ始めるとヘアピンやターン2などでミスを連発。ケビンはヒュルケンベルグ、ロマン(グロージャン)、(セルジオ)ペレスにかわされて8番手までポジションを下げてしまいました。逆にロマンはヒュルケンベルグと同様のペースでミス無く走行しており7番手にポジションを上げました。
51周目に(セバスチャン)ベッテルがターン13でクラッシュし、セーフティカーが導入された時には、彼のすぐ後ろでロマン、ケビンともに走行していたため、すぐにピットインさせるかどうかを判断しないといけませんでした。
その時点での路面状況を考えると、ミディアムのままコース上にとどまるのは難しいと判断し、ダブルストップでインターミディエイトに換えました。いきなりウルトラソフトへの交換は、ギャンブルすぎると考えたからです。
しかしその後、雨脚は弱まり、セーフティカーラン中に再びピットインしてウルトラソフトに交換することになりましたが、あの判断は仕方がなかったというのが僕たちの結論です。
レース後のミーティングでドライバーとも話し合いましたが、あの時点で僕がもし無線でミディアムからウルトラソフトへの交換を指示したら、ドライバーからも「無理だと返答したと思う」と告げられましたから。
もう1回あの状況になったとしても、同じ選択をするだろうというのが結論ではあるのですが、問題だったのはダブルストップの際にケビンのタイヤ交換に時間がかかってしまったことです。
もちろん、ダブルストップの2台目なので、普通のストップよりは時間がかかります。それにしてもかかりすぎました。ここら辺の作業も、もっと効率良くできるように改善しなければいけません。
リスタートの時点で10番手につけていたロマンですが、ウルトラソフトを活かして(ブレンドン)ハートレー、(マーカス)エリクソン、(エステバン)オコン、ペレスを次々とオーバーテイクして6位入賞を果たしました。
あと1、2周あれば、ヒュルケンベルグも抜けていたと思いますが、素晴らしい追い上げでした。本人もとても楽しんだと言っていましたが、久しぶりにロマンらしい走りをしてくれて僕もとても嬉しかったです。