2020年の現場取材は、3月のオーストラリアGPが最初で最後となった。結局、そのオーストラリアGPは開幕前に中止となったから、2020年にサーキットの現場へ赴いて取材した数は、0戦になる。それでも、このautosport webでいくつかの連載や時事ネタを再開されたオーストリアGPから最終戦アブダビGPまで書くことができたのは、ひとえにFIAと各チームがメディアに対する協力があったからにほかならない。本当に感謝したい。
FIAと各チームがここまでメディアに協力的だったのは、新型コロナの感染を拡大させないために、現場で取材できるメディアの数を制限したこと。さらにサーキットに入場できたメディアの活動エリアもメディアセンターだけに限定し、パドックやピットレーンへの入場を原則禁止したからだ(テレビ局のスタッフは除く)。つまり、現場にいるメディアも、自宅でインターネットで取材するメディアも全員がリモート取材していたわけだ。
さらに、FIAは年間パスを保持しているメディアに、『F1.com』を無料で閲覧できるバウチャーコードを発給。再開されたオーストリアGPから最終戦まで、無料でさまざまなデータをリアルタイムに見ることができた。また通常、メディアセンターに掲げられているモニター画面も無料で見られるwebサイトを開設し、無料で見られるようにしてくれた。
つまり、メディアセンターにいるのとまったく同じ画面を、年間パスを保持しているメディアはいつでも見ることができたのだ。このサイトには記者会見用のページもあり、そこにアクセスすれば、木曜日からレース後の会見までインターネットを通して参加することができた。
各チームがそれぞれのモーターホームで行っている囲み会見は、web会議システムが行われた。アメリカのZoom Video Communications社が提供している『Zoom』を利用していたのが、レッドブル。Microsoft社の『Teams』を使用していたのは、使い勝手がいいのか、あるいはセキュリティの問題からなのか、ホンダのほか、メルセデス、ルノー、ハースら、多くのチームが使用していた。ちょっと変わっていたのがフェラーリで、Ciscoの『Webex』を使用していた。
現場に行って直接、自分の足で自由に取材できないというのは大きな制限だったことは事実である。しかし、現場に行っても体はひとつしかなく、チームの囲み会見の開始時刻がバッティングすれば、どちらかの取材は参加できないこともある。その点、web会議システムはコンピュータを2台か3台用意すれば、同時刻に開催されている会見に複数参加することが可能になった。
これまではトト・ウォルフ代表(メルセデス)とレース後の上位3人のドライバーによるFIA会見の時刻が重なることが多く、リリースが出ないウォルフの会見を優先することが多かったが、20年はどちらも全戦参加できた。そう、リモート取材も決して悪い面ばかりではないのである。
ただし、ひとつだけ気がかりがある。それは2021年用の年間パスの申請だ。通常、申請するのは前年に12〜14戦の現場での取材実績が問われる。しかし、2020年にそのような実績を積めたメディアは一握り。このままだとほとんどのメディアが年間パスを失効してしまうことになる。
ここはFIAに『2020年の年間パス保持者は、2021年も自動的に発給する』というお達しを出してもらいたい。