2021年シーズン前半戦の最後のレースとなった第11戦ハンガリーGPでは、スタート直後に多重クラッシュが発生し、波乱の出だしとなった。レースは赤旗中断となったが、その後スタンディングスタートのグリッドにルイス・ハミルトンただひとりが並ぶという異様な光景とともにレースが再開。ハンガリーGP序盤の様子を無線とともに振り返る。
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大波乱の展開となったハンガリーGP。その伏線となったのが、スタート直前に降り始めた雨だった。雨脚はさらに強くなるのか、それともすぐに止むのか。各チームは難しい判断を迫られた。
フォーメーションラップ直前の段階で、ルイス・ハミルトン(メルセデス)はインターミディエイトタイヤを履くことに疑問を呈していた。
ハミルトン:これはインターじゃないね。ほとんど乾いてる。スリックじゃないかな
ハミルトン:すぐに雨が降ってくれることを願ってる。でもこれはスリックだよ
一方アストンマーティン陣営では、ランス・ストロールの担当エンジニア、ブラッドリー・ジョイスが的確な情報を伝えていた。
ジョイス:20分ほど今のレベルの雨が続いて、ちょっと強くなって、そこからは乾いていくだろう
そしてフォーメーションラップを走り始めたハミルトンも、路面が予想以上に濡れていることを認識した。
ハミルトン:これはインターだね
全車インターミディエイトを履いてのレーススタート。直後の1コーナーでバルテリ・ボッタス(メルセデス)がブレーキをロックさせ、ランド・ノリス(マクラーレン)に追突。レッドブル・ホンダの2台にも致命傷を負わせる玉突き多重事故が発生した。
ボッタス:申し訳ない。オシマイだ
ノリス:何だかわからないが、ステアリングが……。このまま行けそうだけど、でも……
ウィル・ジョゼフ:左フロントタイヤがパンクだ
ジャンピエロ・ランビアーゼ:全部見たぞ
マックス・フェルスタッペン:クルマをチェックしてくれ
ランビアーゼ:チェックしてる
フェルスタッペン:何が起きたんだ?
ランビアーゼ:マクラーレンの1台がぶつかってきたみたいだ
一方、1コーナーイン側にいたストロールは前輪をロックさせ、左前方のシャルル・ルクレール(フェラーリ)に突っ込んでいった。
ストロール:完全にロックしてしまった
ジョイス:右側に寄るんだ
ストロール:本当に申し訳ない
ルクレール:XXXXX。全然止まってない。突っ込んできやがった!
マルコス・パドロス:ストップだ
リカルドはそのルクレールに、玉突き状態でぶつけられスピンを喫した。あの温厚なリカルドでさえ、放送禁止用語を連発した。
リカルド:ぶつけられた
スタラード:了解。走れそうか?
リカルド:XXXXX。わからない。ひどくぶつかってきたからね
そしてペレスも、ボッタスに撃墜されてしまう。
ペレス:なんというバカタレなんだ
ヒュー・バード:セーフティカーだ
それでもなんとか自走していたペレスだったが、ダメージは予想以上に酷かった。
ペレス:クルマはどうだい?
バード:チェコ、リタイアしないといけない
ペレス:どうして?
バード:止めるんだ。すぐに止めろ! 今すぐだ!
すでにこの時点で、パワーユニットが甚大なダメージを受けていることが、データに出ていたのだろう。前日の予選終了後にクラック(ひび)が入っていることが判明したフェルスタッペンに続き、ホンダは2基のパワーユニットを立て続けに失うことになりそうだ。