レッドブル・ホンダが劇的な最終周ウインを飾ったF1第22戦アブダビGPは、アルファタウリ・ホンダにとっても2021年シーズン最高のレースとなった。角田裕毅4位、ピエール・ガスリー5位という結果だけでなく、初日から予選、レースへの流れも、完璧に進んだ週末だった。
2台が立て続けにバルテリ・ボッタス(メルセデス)を抜いて行った最終周では、「1ラップだけとわかっていたので、エンジンもフルパワーを出させた」と、全開プッシュを貫いた本橋正充チーフエンジニア。ホンダF1最後のレースは、第3期時代からいっしょにやって来た田辺豊治テクニカルディレクターとの最後のレースでもあった。ホンダF1の現場ナンバー1、2として苦楽をともにして来たふたりは、レース後がっしりと抱き合った。
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──最終戦に2021年最高のレースができました。
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):レッドブルもそうでしたが、我々も全員が全力でプッシュした。あそこで速さを見せることができました。レースは本当に、最後まで何が起きるかわからないですね。ここまで長くやっていますけど、本当に実感しました。
──最終戦も初日からいい感じで進められました。
本橋CE:はい。ここ数戦、走り出しからしっかりやれてきている。今まで何度も失敗してきて、そこをしっかり見直して、本来のパフォーマンスを早い段階から発揮できるようになっています。
──最終周は、アルファタウリの2台も頑張りました。どんな展開だったのですか。
本橋CE:1ラップしかないのがわかっていたので、エンジン側もフルパワーでした。タイヤも交換した直後だったし、本当に予選アタック並みに使い切って、燃え尽きようみたいな。ほんとうに燃え尽きたら、困るんですけどね。2台ともパフォーマンスを目いっぱい出し切る感じでした。行けるところまで行くぞと。そして得たあの結果は、車体も含めてここまで来たという証左でもありましたね。
──第3期も田辺(豊治/ホンダF1テクニカルディレクター)さんといっしょにやって来て、なかなか結果が出ない、そして撤退という形で終わった。あの冷静な田辺さんが涙を見せていましたが、今までのホンダのF1活動のなかでも今日は特別な1日ですか。
本橋CE:そう思います。田辺さんにたくさんのことを教わってきて、またチームを組んでいっしょにやって来たわけですけど、苦しい時期を過ごす間にチームとの付き合い方とか、HRD Sakuraとのやり取りだったり、マクラーレンの時にもたくさん教えてもらって感謝していましたけど、それだけでは足りない部分もありました。トロロッソ、レッドブルと組んでからも、さらにたくさん勉強させてもらった。目に見えない部分で、ああ、田辺さんこんなところで苦労していたんだというのが、そこでよくわかりました。なので今日、目標を達成できたのは本当によかったし、田辺さんが現場サイドにいてくれたからこそ成し遂げたことだと思います。まだまだ学ぶことはありますけどね。
──ジェンソン・バトンが勝った2006年のハンガリーGPとも、また違ううれしさ?
本橋CE:それは違いますね。1勝とチャンピオンは、やっぱり違う。田辺さんは第2期の時にチャンピオンを経験していますけど、それから立場も変わった。田辺さん自身言っていましたけど、今回は途中から参加して、それまでの苦労をわかろうと一生懸命だったり、背負っているものをわかったうえで、ここにいるという感じです。なので田辺さんとしても、感慨深いものがあると思います。