FIA(国際自動車連盟)が総力を結集して研究・実験を続けた2022年の技術レギュレーションは、F1マシンの様相を一変させた。彼らの第一の目的は、オーバーテイクの促進だった。F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、変更点がより理解しやすいよう、豊富な写真と図解で解説する。
■単純化されたフロントウイング
フロントウイングは長年にわたり、フロントタイヤが巻き起こす乱流を遠ざけるための渦を発生させる道具であった。
今回の技術レギュレーションによってフロントウイングは大幅に簡略化されたものになり、この役割にはほぼ終止符が打たれたと言っていい。具体的にはパーツは4つのエレメントしか持てなくなった(昨シーズンは5つ、2019年以前は9つまで)。
上の緑色矢印で示したようにアッパーフラップは大幅に長くなり、後続車の挙動を乱す悪名高いY250渦の発生を防ぐために、ノーズに直付けされることになった。ただしこの部分に関しては、各チームがそれぞれ異なる解釈をすることは間違いなさそうだ。
さらに新フロントウイングは、これまでのF1マシンよりも高い位置に設置される。ダウンフォース量を減らす代わりに、フラットボトムに十分にきれいな空気を供給できるようにするためだ。
最後にウイング両端は大きく湾曲した形状だが、以前の翼端板のように分割パーツではなく、1枚の三角形のパーツで作らなければならない。
■タイヤフィンが登場、バージボードは消滅
左右フロントタイヤの上には、大きなフィンが見える。タイヤ後方で発生する気流の剥離が、抵抗や乱流の原因となるリスクを低減するためだ。タイヤの内側まで伸びた形状は、車輪の回転による乱流を軽減するためと考えられている。
ブレーキダクトの形状は、これまでより細かくコントロールされている。フィンやディフレクターで飾られた完全に空力的なデバイスに変化していたものを、今回の規約改定でブレーキディスクの冷却という本来の役割に戻す努力が注がれた。またバージボードについては、その奇抜な形状は全面禁止されている。
(第3回に続く)