F2参戦中だった松下信治が9月末のロシア・ソチでのレース直前に、チームからの突然の離脱を明らかにした。松下は今季、長年サポートを受けてきたホンダからの国内レース復帰の誘いを断ってまで、F2参戦継続にこだわってきた。スーパーライセンスを獲得し、F1ドライバーになるという自らの夢を実現するためだ。
これまでほとんど優勝実績のないMPモータースポーツからの再出発だったが、有力チームからエンジニアも加入し、松下には勝算があった。しかし18インチタイヤへの適応に予想以上に手間取り、本来の速さがまったく発揮できない。それでも第6戦スペインのレース1で18番グリッドから劇的な優勝を果たす。
続くスパ・フランコルシャンでも今季最高位の3番グリッドを獲得し、確実に復調しつつあった。ところが第9戦ムジェロを終えた直後に、突然の離脱表明。いったい松下信治に何が起きたのか。そして今後、どうするつもりなのだろう。
まず、離脱の理由である。松下とは帰国直前に電話で長く話し、F2活動を途中でやめざるを得なくなった理由についても、ある程度は語ってくれた。しかし本人は「チームに迷惑がかかるから」と、それ以上の明言は避けた。なのでここからは、筆者の推測を含めた記述として、読んでいただきたい。
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あれほどF2の継続を望んでいた松下が、自分からやめるとは考えにくい。松下は第7戦スパのレース1でクラッシュを喫し、マシンを全損させた。しかもリヤからタイヤバリアに激突し、エンジンも大きなダメージを負った。
チームとの契約にもよるが、F2の場合修理代は基本的にドライバー負担だ。車体の損傷に関しては少なからず保険がきくが、それでもいまの松下に弁済能力はなく、チームとの交渉のなか、最終的には資金の問題で今回の決断にいたったであろうことは容易に想像できる。
では日本に帰ってから、どうするのか。今季途中からの国内レースへの参戦は、「いまのところ未定です」としつつも、可能性は低そうだった。ただし「フォーミュラのレースには、こだわりたい」と言う。来季はスーパーフォーミュラも視野に入れて、国内で挑戦する可能性も考えられる。
とはいえ、松下は「レース活動は国内に限定するつもりはない」とも言う。松下がそう語るとき、ル・マンで活躍する小林可夢偉や中嶋一貴、そして40歳を過ぎても第一線で戦い、インディ500を二度制覇した佐藤琢磨の存在を意識していることは間違いない。