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海外レース他 ニュース [PR]

投稿日: 2022.02.23 12:00
更新日: 2022.02.28 10:54

インディカー開幕。GAORA SPORTSの特番潜入で見えた制作陣の放送ノウハウと今季の注目点

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海外レース他 | インディカー開幕。GAORA SPORTSの特番潜入で見えた制作陣の放送ノウハウと今季の注目点

 2022年シーズンもインディカー・シリーズの全17戦を生中継を中心に放送するスポーツ専門チャンネル『GAORA SPORTS』では、インディカーの魅力を深掘りするべく、オフシーズンもさまざまな番組を放送している。

 そのなかのひとつとして、2月20日に特別番組『開幕直前!インディカー・シリーズ2022』が放送された。2月27日のシーズン開幕を直前に控えるなか、autosport webでは同番組の収録に密着。めったに垣間見ることのできないモータースポーツ番組の製作の裏側をお届けする。

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 アメリカのトップフォーミュラであり、“世界三大レース”のひとつで100年以上の歴史を持つインディアナポリス500マイル(インディ500)をシリーズに組み込むインディカー・シリーズ。アメリカ国内とカナダのトロントを転戦しながらオーバル、ロード、ストリートというコースキャラクターの異なる各ラウンドを戦っていく同シリーズには、今年も日本人ドライバーの佐藤琢磨が参戦する。

 2月27日に開催される開幕戦セント・ピーターズバーグを前にした直前情報を中心とした特番『開幕直前!インディカー・シリーズ2022』にはインディカー中継で長年実況を担当する村田晴郎氏、モータースポーツジャーナリストの天野雅彦氏、そして、元インディカードライバーで、現在はアレックス・パロウのマネージャーを務めるロジャー安川氏が出演。2月15日のセブリングテストの際に収録された佐藤琢磨、デイル・コイン、そして佐藤琢磨の担当エンジニアを務めるドン・ブリッカー氏の独占コメントも放映された。

 特番の初回放送は2月20日23時からだが、番組の収録は20日の昼。つまり、放送当日の収録だった。それでは早速、スタッフの打ち合わせから、本番収録終了までの流れを見ていこう。

稲嶺ディレクターを中心にスタッフ打ち合わせがスタート
稲嶺ディレクターを中心にスタッフ打ち合わせがスタート

 まず、番組ディレクター稲嶺慶一氏を中心としたスタッフ打ち合わせが開始。7ページにおよぶ台本を手に、全体の流れや注意事項を確認する。なお、テレビ番組の製作では『放送作家』という専門職のスタッフが番組構成を担い、全スタッフ、出演者に配られる台本を執筆することが一般的だが、この特番は稲嶺ディレクターが自ら構成し、台本の執筆まで担当している。

 収録ということもあり、スタッフは生中継よりは少なめの10名。収録といえど、台本に沿って少しづつ撮影を重ねるのではなく、オープニングからVTR、そしてCM中も中断や休憩を挟まない『一発撮り』と呼ばれる収録スタイルとなる。この『一発撮り』という収録スタイルについて、「オーソドックスなスタイルかどうかはわかりませんが、私はこのやり方です。なぜかと言うと、この番組は自分が編集し、自分が台本を書き、自分がディレクションしているからです」と1人で何役もの仕事を兼務する稲嶺ディレクターは説明する。

「台本を書く際も、村田さんとは2004年からの付き合いなので、『これくらいのネタを書いておけば、村田さんだったらこれくらいの尺と内容を喋る』というのを想像し、頭の中で編集しながらそれぞれの時間を決めています」

「基本的に生中継は時間に追われることはありませんが、今回のような1時間枠(58分間)は、レース中継よりも少し特殊ですね。レース中継は放送時間に決まった終了時刻はなく、レースが終わったら中継も終わりです。でも今回は特番で、きっちり58分と番組尺が決まっています」

「さらに、収録した当日夜に放送なので、収録後も時間的にもタイトです。ざっくりと多めに収録して、後から編集するというやり方もありますが、時間も限られているので生放送と同じく、収録と編集を同時進行する『一発撮り』にしてますね」と1991年よりインディカー中継に携わってきた稲嶺ディレクターは話した。

 スタッフ打ち合わせが終盤に差し掛かったころに、番組進行役の村田さんが現場に到着。その直後から稲嶺ディレクターと打ち合わせに入った。一方で、番組スタッフが天野氏、ロジャー氏に電話。ふたりはアメリカ在住で、収録へはスカイプを通して参加となるため、接続前の確認連絡だ。なお、GAORA SPORTSではリモート出演の際に長年スカイプを使用。近年は通信環境も改善され、安定して使いやすくなっているとのこと。

本番中、スタジオには村田晴郎氏のみ。3台のカメラは固定され、カメラマンが触ることはなかった
本番中、スタジオには村田晴郎氏のみ。3台のカメラは固定され、カメラマンが触ることはなかった

 打ち合わせや、天野氏、ロジャー氏のスカイプ接続が済むと、村田氏はスタジオ入りし、本番前のリハーサルが行われる。リハーサルでは、番組内で放送されるVTRが一通り流され、出演者一同がVTRの内容や映像の終了タイミングなどを確認する。その他、文言の確認、音声などのチェックなども並行して行われた。

 本番の前に、長年インディカーの中継、関連番組の収録の場として活躍しているGAORAのスタジオ1を紹介しよう。副調整室(サブ)は手前から音声、VTR、スイッチャー、VE(ビデオエンジニア)がそれぞれの担当機材を操作。インディカーの生中継の際には現地放送局との連絡専門のスタッフも加わる。一方、スタジオセットには村田氏だけが着席する形となり、3台のカメラが村田氏を捉える。しかし、それぞれのカメラは固定され、収録中のスタジオにカメラマンの姿はない。これには驚かされた。

GAORA本社にあるスタジオ1。GAORAのインディカー中継や特番はここで製作されてきた
GAORA本社にあるスタジオ1。GAORAのインディカー中継や特番はここで製作されてきた
副調整室(サブ)では手前から音声、ディレクター、VTR、スイッチャー、VE(ビデオエンジニア)がそれぞれの担当機材を操作。カメラ担当もここで画面のチェックする
副調整室(サブ)では手前から音声、ディレクター、VTR、スイッチャー、VE(ビデオエンジニア)がそれぞれの担当機材を操作。カメラ担当もここで画面のチェックする

 そして、本番収録が開始されると、副調整室では稲嶺ディレクターのキビキビとしたディレクションが冴えわたる。VTR終わりのカウントや、次に表示するテロップの確認だけではない。収録序盤、予定よりも少し時間に余裕ができると、CM明けに話せる話題を振る。一方、後半には少し時間が押していたため、『短めで!』とコメントの長さを出演者に伝える。

 さらに、2022年シーズンの全チームを紹介する際には、「モントーヤはインディ500のみ参戦」といった各チームの情報の補足も随時差し込む。テレビ番組という生き物の動きと台本との差異を随時把握しつつ、滞りなく進行する様子に、ベテランの技を感じた。もはや、素人目には生放送との違いがわからないスピードと完成度で収録は終了、夜のオンエアで放送されたのだった。

本番収録中。VTRが流れる間も台本とタイムシートに目を配る稲嶺慶一ディレクター
本番収録中。VTRが流れる間も台本とタイムシートに目を配る稲嶺慶一ディレクター
上段左は既に流れたVTR。中段左は収録映像。下段左から3つがスタジオカメラの映像だ
上段左は既に流れたVTR。中段左は収録映像。下段左から3つがスタジオカメラの映像だ

■レース中継で実況を届ける難しさとインディカーの魅力

 本番では巧みな進行に加え、時間合わせなど、素人目で見ても途轍もない先読みの正確さと、稲嶺ディレクターの意図の汲み取りを見せた村田氏。ゲストを迎え、番組を進行するという役割を担うにあたり、日々鍛錬を積んでいるのだろうか、という素朴な疑問を尋ねてみると「練習はしていません。なんとなくの“感”ですね(笑)。時間に限りのある収録は巻きでやるとちょうどいいんです」と話した。

「今回は特に、カメラで抜かれている(映像に映し出されている)ので、視線をカメラからずらせばこまめに時間チェックもできますが、あまりカメラから視線をずらすのも視聴者に対して気まずいなというのがありますね。それでも一応ちょくちょくチェックはしていますが、基本的には私のやり方として最初にガガっと(番組として押さえる話題や要素を)入れて、時間的な余裕を作った上でその都度調整していく感じです」

「あと今回は天野さんとロジャーさんがある意味主役の立ち位置になります。ジャーナリストさんや元ドライバーの言葉は説得力が違いますので、できるだけ天野さんやロジャーさんの言葉として視聴者に伝えたいな、という思いがあります。私は間を埋めるくらいですね。今日は特に時間もタイトだったので、なるべくなにも喋らないようにと思っていました(笑)」

インディカー中継で2004年より、実況を担当する村田晴郎氏
インディカー中継で2004年より実況を担当する村田晴郎氏

 一方、30年以上にわたりインディカー中継に携わってきた稲嶺ディレクターにレース中継の難しさを尋ねると「中継で一番気になるのは雨とか赤旗、大きな事故が起きたときですね。なるべく正確な情報を収集し、なるべく早く正確に現場の状況をお伝えしなければなりませんので」と話してくれた。

「また、インディカーでは通常2〜3回、インディ500では各車6〜7回ピットに入ってきます。30台以上が一斉にスタートして、それぞれの作戦を展開するなか、どのようにフィニッシュまで辿り着いたのか、というのを先読みしつつ実況することが非常に大事です。そうできなければ、中継を見ている人に流れが伝わりません」

「なぜこのドライバーが勝ったのか、なぜこのタイミングでピットに入ったのか、それぞれにこういった目的や意図があってやっているんだということを、作戦を見抜いた上で視聴者に伝えられるかが重要です。『なぜここでピットに入ったのだろう』とか、『このドライバーは急激にポジションを上げてきました』などのコメントは、実況を届ける我々の仕事としては失格です。そこをいかに精密に各チームの作戦を追って、視聴者にそれを伝えることができるかというのが、一番重要であり、苦労しているところですね」

 互いに長年インディカー中継に携わる村田氏と稲嶺ディレクター。長年、インディーカーの魅力や面白さを伝えてきたふたりにとって、2022年シーズンのインディカー・シリーズの見どころとはどこなのだろうか。

 村田氏は「佐藤琢磨選手が走っていることが大きなフックだと思っています。やはり、琢磨選手は46歳になってもバリバリ戦っている。インディ500で3度目の勝利をあげるポテンシャルを持っているよ! というところですね。言い換えればオリンピックの金メダルの有力候補として、トップクラスのアスリートとして戦ってるんです、そういう視点で琢磨選手の走りに注目していただきたいです」と語った。

 一方、稲嶺ディレクターは「インディカーの『たられば』を楽しんでほしい」と話す。

「インディカーはピットに入ったタイミングでどういうスティントの組み合わせになるかが決まります。なので、レースが終わってから各車の動きを見返すと『あの周にピットに入っておけば!』とか、本当に『たられば』が多いんです。それをレースが終わってからもたっぷりと楽しめるのがインディカーの面白さのひとつだと思いますね」

1991年からインディカー中継に携わる“稲D”こと稲嶺慶一ディレクター
1991年からインディカー中継に携わる“稲D”こと稲嶺慶一ディレクター

 2022年シーズンのインディカー・シリーズも、いよいよ、2月27日に待望のシーズン開幕を迎える。GAORA SPORTSでは、全17戦を生中継中心に放送。開幕戦セント・ピーターズバーグは生中継となる。

 また開幕当日の2月27日の18時より、特別番組『インディカー2022開幕直前スペシャル座談会』がGAORA SPORTSの公式YouTubeチャンネルにて生放送される。この特番には、ラジオパーソナリティであり、レース経験も豊富なレーサー鹿島氏。元インディカードライバーの松田秀士氏。モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳氏。そしてautosport web編集部よりインディカー担当の磯田隼人が出演。開幕直前スペシャルとして1時間にわたりたっぷりとインディカーの魅力を語り合う予定だ。

 2022年シーズンも17戦の熱く、そして手に汗握る戦いが随所で繰り広げられることになりそうなインディカー・シリーズ。ベテラン勢の活躍や、新人ドライバーの走りも気になるが、やはり日本人にとっては佐藤琢磨の3度目のインディ500制覇なるかというところが注目だろう。GAORA SPORTSを通じ、記憶に残しておきたい佐藤琢磨の活躍、そして記録に残しておきたい感動の瞬間を、余すことなく見届けたいところだ。

■インディカー2022開幕直前スペシャル座談会(GAORA SPORTS/YouTube)

・GAORA SPORTSホームページ:https://www.gaora.co.jp/
・GAORA SPORTSの視聴方法、加入はこちらから:https://www.gaora.co.jp/guide/


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