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海外レース他 ニュース

投稿日: 2023.06.23 16:23
更新日: 2023.06.23 16:25

「この契約は絶対にまとめなきゃならない」マネージャーが明かす佐藤琢磨 チップ・ガナッシ・レーシング加入までの舞台裏/後編

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海外レース他 | 「この契約は絶対にまとめなきゃならない」マネージャーが明かす佐藤琢磨 チップ・ガナッシ・レーシング加入までの舞台裏/後編

 日本では例年以上に注目を集めた今年のインディ500。その理由は、ずばり佐藤琢磨が、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)から参戦したためだろう。残念ながら琢磨は7位に終わったが、それでもプラクティスからトップタイムを連発するなど、“3度目のインディ500制覇”に向けた夢は見させてもらった。

 そのインディ500が終わって時が経ち、あらためて思うのは「そもそも、琢磨はどのような経緯でCGRのシートを射止められたのか?」ということ。その経緯を、10年以上にわたって琢磨のマネージャーを務めているスティーブ・フューセック氏に聞いた。
 

チップ・ガナッシ・レーシングの11号車を駆る佐藤琢磨
チップ・ガナッシ・レーシングの11号車を駆る佐藤琢磨

 
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──チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)との交渉について、契約成立は難しい、と琢磨選手に伝えたことはありましたか?

「はい。彼はいくつかのアイデアを提案してきて、その条件では交渉が決裂する可能性があると伝えても、琢磨は信じてやまなかったのです。自分たちに必要なものは彼らにとっても必要なものだと。そして、こう強く言いました。“この契約は絶対にまとめなきゃならない。止めるという選択肢はない。私たちでやり遂げないと”と。“私たち”という言葉が印象的でした。そのとおりですよね。彼も、私も、一丸となってこの契約を実現させなければならない。私たちが契約合意に達したのは、この2週間後でした」

──琢磨選手は、かつてないほど強く、あなたに交渉の成功を迫ったのですか?

「チームとの交渉に関して言えば、今回が一番ではなかったと思います。ただ、彼のCGR加入に対する意欲は強かった。私はより良いチャンスを見つけて、CEOである琢磨に提示するのが仕事です。その後は彼が決めること。琢磨は非常に優秀なビジネスマンですから、小さくても、このガナッシ入りというチャンスがあると知ったとき“これは獲りにいく!”と決めたわけです」

──大きな満足感が得られましたね。

「私のレースにおけるキャリアで、一番の幸福感を得られた仕事でした。達成できたとき、本当に幸せでした。契約を発表する日に彼は“スティーブ、チャンピオンシップで勝つことができるマシンに乗るのは、自分のキャリアでこれが初めてだよ”と私に言ったんです。“これまでのマシンは、トップで戦うために自分たちで工夫を凝らさなければならなかった。今回は乗る前からトップの位置にある。もちろん、このマシンに乗っても自分が全力を尽くさないといけない。でもこれがチャンピオンシップで勝てるマシンであることは間違いない”と」

──実際、インディ500で走り出すと、琢磨選手は期待どおりの速さを見せました。

「カーブ・デイで最速ラップをマークできて、本当に良かった。誰ひとり裏側のストーリーを知りませんが(いまお話ししていますけど)、私だけはどうして彼がCGRのマシンに乗っているのかを知っています。だから彼のパフォーマンスを見るたびに幸せになるんです。結果として実現に一番効果的だったのは、琢磨の“これを私たちは成功させなくてはならない”という言葉でしたから」

──胃が痛くなるような夜が続いたのでしょうね。

「ありましたね。“いったいどうすればいいんだ”と途方に暮れた日もありました。ハル氏の言葉が頭のなかでグルグル回っていたんです。頭はスピンし続け、眠っていても、突然目が覚めて交渉について考え出すことが何度もありました」

──どれだけ厳しい要求があったのでしょう。

「CGRといえば4台体制を築き上げ、それを成功させているチームです。すでにチームのやり方ができ上がっているんです。琢磨がチームに加入するからといって、何かを変えるという話にはなりません。私たちが彼らのやり方に合わせないといけない。正直なところ、契約が締結されてからも多くのことを進めていかなくてはなりません。琢磨はありとあらゆるミーティングでチームの合意を取るために、時には柔軟に、時には強引とも思えるほど、戦い続けていましたね」

 スティーブ・フューセック氏へのインタビューは、現在発売中の『オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500』より抜粋したもの。

 この本には、これ以外にもインディ500が終わった直後の[佐藤琢磨 独占インタビュー]や日本一インディカーを知る男・天野雅彦氏によるレース分析、ほかにもCGRのマネージング・ディレクター、マイク・ハル氏のインタビューやインディ500トリビア企画など、アメリカン・モータースポーツの魅力が詰まっている。

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[オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500]

発行:株式会社三栄 定価:1,300円(本体価格:1,182円)

商品情報URL
https://shop.san-ei-corp.co.jp/magazine/detail.php?pid=12811
 

オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500
オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500


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