世界的スターが多数集結し、豪華ラインアップとなった2023年NASCARカップシリーズ第24戦『ベライゾン200・アット・ザ・ブリックヤード』は、初日から「勝てる予感がしていた」と語る“伏兵”マイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が、フィニッシュまでの77周でアンダーグリーンの勝負を支配する完璧なレースを披露し、キャリア通算2勝目を飾る結果に。
コーションわずか1回のみのクリーンな展開のなか、決勝82周中54周をリードしたマクドウェルは、自身2021年のデイトナ以来となるビクトリーレーンに進み、このカテゴリーでもっとも象徴的なふたつのイベントを制する“大舞台での勝負強さ”を発揮してみせた。
将来的なオーバルへの回帰や“ローバル”開催も再検討されるインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)は、引き続き今回もロードコースでの開催に。そんな環境要因も受け、8月11~13日の週末には世界各国から多くのゲストドライバーが姿を見せた。
その筆頭注目株となったのが、今季カップ戦で衝撃のデビューウインを飾ったRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ3冠王者の“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)で、自身にとって2戦目のチャレンジへ。同じく南半球オーストラリア大陸からは、今季RSCでタイトル戦線に加わるブロディ・コステッキ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)も、かつて下部シリーズで戦ってきたキャリアを踏まえ「自身のルーツに再挑戦する」との意気込みで挑む。
また、昨季よりロードを中心に散発的な参戦を続ける元F1王者ジェンソン・バトン(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)も今季2戦目を迎え、その僚友として今季ル・マン24時間に参戦したマイク・ロッケンフェラーは、ル・マンでの『シボレー・カマロZL1』によるガレージ56プログラムで共闘したヘンドリック・モータースポーツ(HMS)ではなく、ジミー・ジョンソン率いるレガシー・モータークラブからのエントリーとなった。
そして同じくWEC世界耐久選手権参戦組からは、世界王者でありル・マン覇者でもある小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)がカップ初挑戦の日を迎え、チームが用意した67号車『Toyota Genuine Parts Camry TRD』のステアリングを握った。
そんななか迎えた土曜最初の走り出しは、のちに「僕の家族は勝てると思うレースに来ている。だから今週は勝てると思った」と、現地に妻や子供たちが応援に駆け付けていたマクドウェルがFP最速発進を決めていく。
続く予選こそダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がキャリア通算3回目のポールウイナーに輝き、その隣には昨年覇者タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が昨季とは異なるクルマで最前列に並んだものの、ここでもマクドウェルは4番手タイムをマーク。シーズン途中離脱の穴を埋め、プレーオフ進出へ逆襲を期すチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と2列目をシェアし、スタートの日を迎えた。
そのオープニングでは無難な発進となったマクドウェルだが、直後にのターン6でジャスティン・ハーレイ(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)が絡むアクシデントが発生し、このレース“最初で最後”のイエローコーションとなる。
そのリスタートで狙い澄ました34号車のマスタングは、6周目の攻防でスアレスを仕留めて首位に立ち、17周目にアンダーグリーンのルーティン作業へ向かうまで、他を寄せ付けない盤石のドライブを続けていく。ステージ2終盤の35周目には、オールドタイヤを履くデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)の首位争いを冷静に見極め、前方にいたスアレスともども華麗にオーバーテイクする一幕も演じてみせる。
同じく49周目に2度目のストップを迎えると、このタイミングでスアレスは左フロントタイヤがエアガンのホースに当たり貴重な時間をロス。53周目にはライバルのピットで首位を奪還したマクドウェルは、終盤まで追い縋る2020年チャンピオンを0.937秒差で抑え切り、自身の今季プレーオフ進出を確定させる快勝劇を演じ切った。
「レース終盤にコーションが出ると思ったし、消耗したくなかった。僕はただギャップを維持しようとしていただけさ。トラフィックに捕まり始めた際は、チェイス(・エリオット)が距離を詰め始めたからプッシュさせられた。今でも(勝利を挙げたことが)信じられないよ!」と、元王者より一足先に残る4枠のうちひと枠を手にしたマクドウェル。
「(2021年の)デイトナ500での優勝は、これまででもっとも素晴らしい瞬間だったけど、家族のいないビクトリーレーンに行くのは寂しかった。だから今、家族は厳選して勝てると思うレースに来ている。昨日のプラクティスでクルマに乗った後、僕はこう思った。『ああ、今週は僕の番だ。トラックポジションを獲得してそれを維持できれば、勝つチャンスは充分にある』ってね!」