更新日: 2018.02.17 05:40
【解説】空力概念を一新、マクラーレンMP4-30
史上最大のレギュレーション変更から1年——ノーズに関する変更以外、車体製造に関わるテクニカルレギュレーションの変更がほとんどない2015年は、どのマシンも前年からの正常進化系路線を採っている。ところが、1月29日に発表されたマクラーレン・ホンダMP4-30は、さまざまな点で2014年と異なる進化を遂げたマシンとなっている。
その象徴ともいえるのが、ノーズのデザインだ。昨年のマクラーレンは、ノーズの先端にレギュレーションをクリアするための細長い突起物を設けた、いわゆる「アリクイ」ノーズを採用していた。FIAは今年、その醜いノーズを排除するためレギュレーションを変更したものの、そこには依然として突起物が残る余地があった。そのため、すでに今季仕様のノーズを公開しているウイリアムズとフォース・インディアは昨年同様、先端に突起物を設けたミニ・アリクイノーズとなっている。
しかし、マクラーレンはフロントバルクヘッドの幅のままノーズを前方へ低く伸ばしている。その理由として考えられるのは、エリック・ブーリエが語った「ドライバーに優しい、扱いやすいマシンにする」ための策ではないかということだ。
昨年、多くのチームがアリクイ型を採用したのは、ノーズが低くなっても前方から入ってくるエアーの量を確保するための苦肉の策だった。しかし、大量のエアーが入っても、それが狙った場所へ、できるだけ速いスピードで流れていかなければ、ダウンフォースの増加にはつながらない。その証拠に2014年シーズンを制したメルセデスAMGはアリクイノーズを採用していなかった。
一見、前方から入ってくるエアーの量が増えれば、ダウンフォースが増加すると思いがちだが、実際のダウンフォースはエアーの量ではなく流速スピードで決まる。つまり、大量にエアーを取り込んでもそれがノーズやステーなどで乱れてしまうと乱流を発生させるだけで、ダウンフォースを生むきれいで速い空気流にはならないのである。
そこでマクラーレンはノーズを下げるというレギュレーションを逆手にとり、前方から入ってくるエアーをあえて制限する道具としてデザインしたように考えられる。ノーズ下を流れるエアーを犠牲にしても、それ以外をきれいに狙った場所へ流すことで、安定したダウンフォースを目指そうとしたのではないか。少なくとも、マクラーレンはノーズ下の開口部を広げる方法にメリットを見出せなかったわけで、その答えが、このスラントノーズというわけだ。