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F1ニュース

投稿日: 2015.10.09 00:00
更新日: 2018.02.17 10:50

ロータス小松礼雄コラム:前代未聞の状況で戦うロータス


 ロータスF1チームで昨年、ロマン・グロージャンを担当していたレースエンジニアの小松礼雄氏。今シーズンはチーフエンジニアに昇格してグロージャン、そしてパストール・マルドナドの2台のマシンでF1を戦います。

 厳しい資金難でレース以外の気苦労、そして物理的な問題に直面しているロータスチームと小松エンジニア。その厳しい状況でも、鈴鹿ではダブル入賞という好結果を残すことができました。実際に現場でエンジニアリングをまとめる小松氏は、どのように鈴鹿の週末を振り返るのでしょうか。今回はシンガポールと日本GPの2戦分をお届けします。

 F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム、第15回目の一部をお楽しみ下さい。

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小松礼雄コラム 第15回


資金難で苦しい中でのグランプリ
想定外の中で獲得した鈴鹿のダブル入賞

 今回はシンガポールGP、日本GPと連戦だったこともありまして、2戦まとめて振り返りたいと思いますが、シンガポールは良いことがなかったですね……(決勝12&13位)。イタリアGPでメルセデスの空気圧の問題がありましたが、このシンガポールGPからどのチームも空気圧を高めにせざるを得ませんでした。その影響は、ウチのセットアップにも若干の影響はありました。一番はロングランが辛くなるので、ロングランでとにかくリヤタイヤを傷めない方向に持っていかざるを得ないのですけど、それはセットアップでカバーしきれない部分があります。

 特にウチのクルマはダウンフォースが足りないし、リヤのブレーキ関係のオプションもいくつも持っているわけではない。そうするとタイヤにどれくらい熱を入れるかをコントロールするオプションがあまり使えないので、内圧を下げきれないことにもなります。他のチームは、もう少し引き出しがあると思いますね。ずっと開発を続けているチームや、メルセデスみたいなトップチームはいろいろ対策や想定ができるはずですけど、そのメルセデスにとってもシンガポールは想定外の出来事だったようです。

 ウチはロマン(グロージャン)が予選10位になりましたが、事前の予想でも10位に行けるか行けないかだったので、ドライバーが頑張ってくれました。それでもやはり、シンガポールのような低速市街地、モナコも同じですがリヤタイヤが滑ってオーバーヒートしてしまうサーキットは辛いですね。シンガポールのセクター3は全部リヤタイヤがオーバーヒートしてしまうコーナーが続きます。たとえばセクター3最初のアンダーソンブリッヂ後の14コーナー、この右のコーナーのブレーキングでリヤが出たり、トラクションでホイールスピンをさせたりすると、その後、1周が終わるまでリヤを冷やす合間がないので、リヤの性能が出せないままずっとタイムロスになります。

 また、シンガポールはサーキットの特性的に長いコーナーがほとんどなくフロントに荷重を掛けられないため、フロントタイヤに熱を入れにくい。ですので、フロントタイヤを1周目に上手く機能させるように持っていくためのアウトラップの準備、そしてセクター3でリヤをオーバーヒートさせないようにという2つの相反する課題があります。ですので、リヤの内圧は出来るだけ下げたい。だけど、ピレリのお達しによって下げられません。内圧の規制はダウンフォースが足りないクルマには特にキツイということになります。もちろん、内圧の規制が妥当な数値なら問題ないんですけどね。


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